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移動遊園地失踪事件簿-9 敗北と傷

タカノは悲鳴を上げたーー


それもそのはずだった...

並行世界のタカノはヒールホールドでタカノの膝と足首をへし折ったからだ。


動けなくなった脚はおいて置いて、逃げるためにタカノは折れていない足で並行世界のタカノの顔面を蹴って気をそらせ、力が緩んだところを逃さずタカノは後方に転がりながら距離を取った。


壊れた脚から感じる激痛で立ち上がることができなかったが、

地面に倒れ込んだまま次の攻撃に備えるため構えを取った。


「さすがに近接格闘術が身に染みてるか...」


並行世界のタカノはそう言って、地面に落ちていた戦闘用のナイフを手に取ってタカノに向けた。


「安心しろ、キリシマ・タカノ....いやこっちの世界だとタカノ・ウル・ラシュトって名前だったな。

仲間は殺さないこと、楽に殺してやるのを約束してやる」


並行世界のタカノはそう言ってナイフを逆手に持って、タカノを襲おうとしたときだった。


ナイフに一筋の先行が光り、

弾き返したのをタカノは目にした。


「私の大切な人を傷つけるのは許しません!」


金髪に猫耳のようなものが見えてひらりと柔らかい動きをしながら剣を振るう女性姿がタカノの目に入ってきた。



「「「許しません!」」」」


そう小さな女の子達のハモった声が聞こえて襟を背中から引っ張られるのを感じた。


「ミミ!」


剣を振るう女性はタカノの最愛の妻であるミミだった、彼女は目の前にいる敵を睨みつけながら

細身の片手剣の剣先を向けていた。


敵意剥き出しで、怒りに満ちた顔をしていた。

最愛の人を傷つけた敵に対して情け容赦もない武人の顔を見せていた。


そんなミミを見て並行世界のタカノはナイフを構えてこう言った。


「素人は首を突っ込むな」


並行世界のタカノはミミの実戦経験不足を一瞬にして感じ取ったようだ。

確かにミミは剣術の達人ではあるが、実際に魔物は斬った経験はあったとしても人を斬ることはなかったことをタカノは知っていた。


ミミの構えた剣先が小刻みに震え始めていた。

見えない圧力と殺意を並行世界のタカノはミミに見せつけていた。


ミミは歯を食いしばりながらこう叫んだ。


「よくもタカノ様を!!!」


恐怖は怒りに身を任せるしか方法がなかったのだろう、ミミは剣を構えながら並行世界のタカノに剣を振るった。


剣は空を斬って、敵に当たらなかった。

並行世界のタカノは最初の一撃を交わしたが、しなやかな動きから放たれた二撃を交わすことができず胴を斬り裂いた。


傷は浅いようだったが各自に敵を傷つけて血を流させることができていた。


「まさか...」


並行世界のタカノは攻撃が当たったことを驚いていたようで、大きく目を見開いてそう呟くように言った。


するとその時だった、もう一人並行世界のタカノに斬りかかる影がミミの目の前を通り過ぎて行った。


すると敵のナイフを持った右腕が宙を舞ってボロンと音を鳴らして地面に落ちた。


「勇者登場!」


剣を振り下ろしたアルスとは違う西洋ファンタジー世界からやってきたような剣士がそう感高く叫んだ。


すると、アデルは魔法を解除し終わったようで笑みを浮かべて嬉しそうな声を出してその剣士の名前を呼んだ。


「ショウタン!!」


そう彼は、アマミヤ・ショウタ。タカノと同じく異世界から転生してきた勇者だ。


並行世界のタカノは、腕が斬り落とされたのを知りながらも慌てることなく腰にあった装備から止血すためにターニケットを取り出して自分の腕を縛った。


「まさかこっちの世界でも右腕をやられるなんてな...

ミラ。撤退だ...転移魔法を」


並行世界のタカノはそう言って、腰にあった手榴弾のようなものを手に取って歯でピンを抜いて地面に投げつけた。


それを見たタカノはミミとショウタに向かって叫んだ。


「耳と目をつぶれ!!!」


タカノがそう叫ぶと同時に娘たちを庇うように抱きしめた。ミミは目を瞑り、耳を塞いで地面に飛び込むように伏せた。


ショウタだけはそれの意味が分からなかったらしく呆気にとられていた。


眩い閃光と甲高い音が辺りを埋め尽くしたーーー


タカノはキーンと響く音の中で、シンとリン・メイ・マオが身体を揺すって何かを叫んでいるのをぼーっと眺めていた。


久々のフラッシュグレネードを喰らったから、懐かしい気持ちのなる反面あたりでなにが起こっていたのか判断がつくことができないでいた。


「タカ兄。脚の骨が折れてるよ...」


シンはそう言って、いるのが聞こえてタカノは手で顔を押さえて痛みがある事を思い出して悶え始めた。


「知ってる。早く治癒魔法をかけてくれ。なんならモルヒネでもあるなら助かるけど...」


「モルヒネ?そんなもんこの世界にあるわけないじゃん。少し我慢してて、痛みは抑えられるけど...この怪我は今すぐは治せない」


タカノはそれを聞いて、ゆっくりと起き上がり涙目になって今にも泣きそうになっている娘たちを抱きしめてこう言った。


「ほら、泣いちゃダメ....

さぁ、お家に帰ろう。クエストは失敗だ」


タカノはそう言って、大の字になって気絶しているショウタのズボンのポケットからポロリと落ちてきた神器と書かれた小さな箱を見を見てホット息を着いた。


アデルはショウタを目覚めさせようと、体を揺らしながら彼の名前を呼びかけていた。


「タカ兄。とりあえず、クエスト自体は成功みたいだから安心してよ」


シンはそう言って、タカノの足に治癒魔法をかけ始めた。


「タカノ様がご無事なのは……私うれしいですわ!!」


タカノは周りを見渡してミミを探すと、

彼女は少し離れた場所に立って空を見上げてぼおっとしている様子だったが、


「初めて人を斬った……」


呟いたのをタカノの耳に自然と入っていた。

少しばかり、彼女は心に引っかかることがあるのだろう。

剣術に優れてるとは言っても対人戦は初めてだったからだろうと思えた。


「ミミ」


タカノはそう彼女の名前を呼んだ。

自分自身も初めての実戦は何とも知れない心の感情に呑み込まれた経験があったからだ。

彼女にはそれを家族や大切な人を守るためといってもあまり経験はさせたくはなかった。


タカノに今できることは、彼女を元の世界に戻してあげることだろうと感じていた。


ミミは名前を呼ばれたことに気が付きタカノの方を振り向いて、

タカノと目が合うなり、


「タカノ様!」


そう言ってタカノに抱き付いてきた。

抱き付いた衝撃で足に激痛が走りタカノは笑みを浮かべなら、痛いと叫んだ。


ーーーーーー


イリシュットが言っていた、神器に関しては無事にショウタが回収を済ませたようなので、

並行世界の勇者によって破壊されることもなく無事に閻魔大王が用意したクエストをイズミが拵えた勇者一行が成功という形で収めることができた。


イリシュット自身はそのクエストをこなしたことを閻魔大王に報告するということで、

移動遊園地を残してひとりでに冥界の方へ戻っていった。


彼の考えでは現在のイズミ側の陣営で魔王軍には対処できると判断できたらしい。


クエストに言っている最中にイズミからこの焔帝国にいる武将クラスの強さが異世界から転生や召還した特殊技能持ちの勇者たちよりも遥かに強いという事実を確かめたらしく、

イズミにこの世界を任せて大丈夫だという考えに至ったふしもあるらしい。


ショウタとアデルは、

活動拠点である街に戻ったらしく、そこで引き続き彼らの冒険者家業にいそしむ形となった。



タカノ一行は

シュンテイは全治二ヵ月を要する怪我。当面の間は子分が代わり密偵の仕事を取り持つことになった。


シュリムは軽傷で済んだが、矢が当たらなかったことが腑に落ちなかったらしく。仕事の合間を縫って弓の稽古をするようになった。


アルスとエミリは軽傷で済んだので、生活の事もあってすぐに冒険者家業にまい進し始めた。

タカノの指示のもとで魔王軍と逃げた並行世界の勇者一行に関する情報を探ることも始めた。


シンは特に怪我もなかったらしく、変わらずタカノの従者として何事もなかったかのようにしていた。


ミミは少しばかり、人を斬ったことに抵抗はあったらしいが暗いことなんか一つも言うことなくいつもの母と妻に戻っていた。


タカノは全治半年かかるといわれていたが、

イズミからもらった驚異の新陳代謝能力により二ヵ月の療養を経てすぐに元の義禁大尉としての仕事に復帰した。


「せっかく、二ヵ月も休みをもらって娘たちと遊べたのに……さっそく仕事とはな」


タカノはそう言って、鎧を身に着けながらそうため息を着いた。

鎧を着るのを手伝うシンはそれを聞いてこういった。


「仕方がないよ。タカ兄。あの事件のあとから皇帝が魔王軍に関する捜査の強化を始めたんでしょ?

今回の山だって、いろいろと内偵とか調査をしてた案件でしょ」


「そりゃ。そうだけどさ……あーもう、これが終わったらバケーション休暇を取ってやる」


タカノはそう言ってため息を着いた後、シンから手渡された。

兜を被って、部屋を出て整列して待つ部下の前に立った。シンは横で小さな声でこうタカノに聞いた。


「でも、バケーション休暇って義禁庁にあったけ?」


タカノはそれを聞いて、にこっと笑みを見せて小声で義禁の部下たちに聞こえないようにこういった、


「ない。無理くりにでも作る。父親業が大切だ」


シンはそれを聞いて笑みを見せた。

それを見たタカノは腰にある太刀を抜いてこういった。


「さて、今日も戦仕事だ。敵は手強いと聞いている。城衛と冒険者ギルドには応援の手配をしているが……

俺たちが見つけた山だ。先を越させるな!!」


タカノがそう叫ぶと、部下たちは大声を張り上げておうと叫んだ。

その声は都中に響き渡り、今日もタカノは目の前の仕事をこなしていったーーー

ショウタ「あれ、俺全然セリフなかったんだけど...」


アデル「大丈夫よ。ショウタン〜どこかの章でまた活躍できるはずだから」


ショウタ「そうなのかな....本当にファンタジーなのにナイフファイトにスタングレネードにって...

剣と魔法のファンタジーじゃないのかよ...

せっかく、天女様にいろいろ仕立ててもらったにあのタカノって人...」


アデル「私たちと違って、アジアンテイストの格好だったわね」


ショウタ「王道ファンタジーじゃないのかな?それにしてもあのフラッシュグレネードは...効いちゃったな。もう食らいたくない」


アデル「あらそうなの?私魔道具でタカノさんから構造とか聞いて作ってみたの。これピンを抜いたら...」


ショウタ「ちょ、ちょちょっとやめてぇぇぇ!!」


アデル「あ、やっちゃった....」

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