移動遊園地失踪事件簿-8 勇者vs勇者
「おいおい、嘘だろう....全滅なんて」
シンはそう言って、
倒れているアルス達を見るなり、小走りでアルスに近づいて行った。
唯一声を出していたアルスは股間を押さえながら地面にのたうちまわっていた。
「あークソォ....痛え」
「大丈夫?今治すから待ってて」
シンはそういうと、アルスに治癒魔法をかけ始めた。
タカノは気絶しているエミリとシュリムをアデルに任せて、
タカノは一番ダメージを受けていそうなシュンテイの方へ向かって行った。
シュンテイは口から血を流しながら、小さく息を吸っていた。意識は辛うじてあるようだが...
「こりゃ、だいぶやられたな....」
タカノはそう呟くようにいうと、シュンテイはそれが聞こえていたのかゆっくりと身体を起こしてこう言った。
「すまねー旦那。至る所の骨が折れたみたいでぇー....痛くて動けねー」
「シンを呼んでくる。これを飲んでおけ少しは楽になる」
タカノはそう言って、ポーションをシュンテイに飲ませた。
「ありがとうございやす、旦那。奴かなりやり手ですよ。お気をつけて下せ...」
「いいから、楽にしておけ。
シン!こっちの方が重症だ来てくれ!!」
タカノがそう大声でいうと、シンは治癒術を中断して駆け寄ってきた。
アルスが不満そうな顔をして地面に座っていたが....
タカノはそれを見て彼が動けないほどダメージはないのがわかり微笑しながらこう言った。
「アルス悪いな。シュンテイの方がやばいやられ方してるんだ。
とりあえず、玉は無事だろ!?」
それを聞いたアルスは生まれたての小鹿のように足をカタカタと震わせて剣を杖のようにして体重を預けながら立ち上がった。
「ぶ、無事ですよ!!!」
アルスがそう叫ぶのを見てタカノは、にっこりと笑みを浮かべてこう言った。
「立てるなら問題なさそうだな。まだ、使ってないままで死ぬのも勘弁だろ?」
「ちゃんと使ってますって!!」
アルスがそう答えると、シンがニタリと微笑するような顔をしながらシュンテイに治癒魔法をかけながらこう言った。
「チェリーボーイは黙ってろよ」
「う、うっせ!」
タカノはその二人のやりとりを見て、ウンウンと頷いてアルスとシュンテイは問題ないことを確認できたので次のシュリムとエミリの確認を行うことにした。
アデルはエミリをゆっくりと起こして治癒魔法をかけていた。どうやら大事には至っていないようだった。
シュリムもタカノが近づくことにゆっくりと起き上がってこう言った。
「タカノ様。やられてしまったです....」
「大丈夫だ。今行くから大人しくしてろ」
「怪我はないですが...首を締められて気絶していたようです。
敵はかなりのやり手ですよ...ソードマスターのアルスさんと盗賊のシュンテイさんの二人がかり簡単に倒す格闘術に弓矢を交わす身体能力と反射神経...」
シュリムはそう言って、大きく深呼吸をしてタカノを見つめた。
「気を付けて....並大抵の敵ではないようです」
タカノはそれを聞いて、無言で頷いて
シュリムに手を差し伸べたーーー
たしかにアルスとエミリに関しては焔帝国でトップクラスの実力を持つ冒険者でもある。
シュンテイもなの通った盗賊でシュリムも焔帝国の主力騎兵を輩出するような一族の出身
戦闘においてはかなり強い分類になると感じていたが...
それを一人で倒していたようだった。
まだ少しぼっとするシュリムにタカノは声をかけた。
「立てるか?」
「はい。少し頭がぼうっとしてますが...」
シュリムはそう言ってタカノの手を借りて立ち上がった。
タカノは全員を見て、
とりあえずこのパーティーは探索継続ができないことを判断した。
「アルス!このパーティーは探索をやめてこの場に止まっておいてくれ。
ショウタと神器は俺とシン、アデルで探す。
ポーションの予備を渡すからシュンテイとエミリの救護を頼む」
「わかりましたよタカノさん」
アルスはそう言って、大きく深呼吸をしてゆっくりと身体が動くか確かめ始めた。
「シュリムは周囲の警戒をしておいてくれ。
また攻撃を受けたら撤退して遊園地の外に逃げろ。
確かかなりうるさい鏑矢を持ってたな?
攻撃を受けたらすぐにそれを空に向けて飛ばしてほしい」
「持ってます。承知しました旦那様」
ーーーーーー
タカノはアルスのパーティーを防衛陣形になるように配置させて探索を続ける事にした。
ちょうど、探索をしていて速箱乗り場の付近にある広間に差し掛かった所でシンが何かに気が付いたのか、
先行するタカノに向かって、
「やばい!タカ兄トラップだ!!」
そう叫んで、タカノを突き飛ばした瞬間、
投げ縄のようなものが飛んできてシンを縛り付けた。
身動きが取れなくなったシンは地面に倒れ込み、アデルも同じトラップにかかったようで縄で縛られて身動きを取れなくなって地面に倒れ込んだ。
「魔法のロープだわ。解くのに時間がかかるかも...」
アデルはそう言って、
身体を動かして色々確認をしながら魔法の詠唱を始めた。
するとその時だった....
アデルに向かって矢が飛んできたことに咄嗟に気がついたタカノは太刀を抜いて矢を叩き落とした。
矢が飛んできた方向を向くとそこには、ベレー帽を被り森林用の迷彩服をきて弓を構える並行世界のタカノ自身がいた。
横には、
仲間なのかアデルやエミリに似た魔女のような格好をする少女が魔法陣を展開させて魔術の詠唱を行なっていた。
「ミラ。支援は任せた。俺は勇者を始末する」
並行世界のタカノはそう言って、弓を投げ捨てて腰にあった黒塗りのマチェットを抜いてタカノに向かって走り出した。
ミラと呼ばれた少女は、無言で頷いて詠唱を続けた。
タカノは走ってくる敵に向かって斬撃を連続で振り回すように出したが、剣筋を読まれているのかそれをかわしながら、懐に入ってこられてしまった。
並行世界の勇者はタカノの太刀の根本をマチェットで叩いて太刀を手放させた。
すると太刀は刃が根元から割れて、地面に落ちていった。
太刀が手から離れた瞬間にマチェットの刃先がタカノの首筋に飛んでくるのがわかりタカノはとっさに後ろん飛んで距離を取った。
タカノは腰に刺していた銃剣を抜いて長年使い慣れてる戦闘スタイルに変えた。
銃剣を構えると、並行世界のタカノは顔色を変えた....
「どうやら、さっきの戦いド素人連中とは違うみたいだな...」
先に仕掛けたのはタカノの方からだった。
剣先を並行世界の勇者に向けて連続で突き刺すように攻撃を出したが、それも太刀と同じように交わされてしまった。
掻い潜られて、腹部に体当たりする様に肘をぶつけてきた。タカノはかわす余裕もなく、その攻撃を元に受けてしまった。
鳩尾に綺麗に入っていて痛みで一瞬動きが止まって自ずと後退しまったが、
今度は腹部に向けて銃剣を斬りつけた。
並行世界のタカノはそれをギリギリのところで、かわして受け流した。
そして、顔面に掌底を撃ち込んできた。
タカノは避けきれずそれをもろに受けてしまったが、並行世界のタカノのマチェットを持った手を蹴り上げた。
マチェットは宙を舞い回転しながら、ミラの近くの地面に突き刺さった。
「やるな...」
並行世界のタカノは腰のホルスターに挿してある戦闘用のナイフを抜いて構えをとった。
タカノ自身はナイフファイトでの自信はあったが....
目の前にいる並行世界からやってきた自分自身の目を見て一瞬で経験値の差とうちに秘める信念のようなものを感じ取れた。
「お前には妻も娘もいるんだってな....
だが、俺にはイズミしかいない。
悪いがあいつを取り戻すためにここで死んでもらう」
並行世界のタカノはそう言って、
タカノに対してナイフで手元をを斬りつけてきた。
タカノはそれをかわして、逆に斬り返そうとしたが交わされた。
そして、一気に距離を詰められて手に持っていた銃剣を叩き落とされた。
地面に銃剣が刺さるのをタカノは見てしまっていたが、すかさず近づいてきた並行世界のタカノのを顔面に頭突きをかまして、肘でナイフを叩き落とした。
そして、この世界で学んだ武術の技である肩での体当たりをして並行世界のタカノを突き飛ばし距離を取ろうとした瞬間...
並行世界のタカノは地面に転がり込むように前転しながら、タカノの足に絡みつき関節技を極めながら回転する勢いを利用して地面に叩きつけた。
タカノはその技から抜け出そうとしたが反応が間に間に合わなかった。
「しまっ!」
並行世界のタカノはニヤリと不気味な笑みを浮かべながら、タカノの脚を一瞬で破壊した。
骨が折れる音が辺りに響き渡り、タカノの叫び声がそれを追いかけるように聞こえた。
アルス「しかし、こうも焔帝国きってのB級冒険者と腕利きと言われるタカノさんの手下がよってたかっても....
並行世界のタカノさんには勝てなかったか
あーいた痛い...」
エミリ「まータカノさんのポテンシャルが高いってことだもんね....」
シュリム「面目ねぇ...ゲルガ族随一の弓の使い手って言われて獣でも外したことない矢を避けられたし....」
シュンテイ「旦那様大丈夫だろうか...確かにあの勇者は手強えぇ...」
アルス「え、今タカノさんの悲鳴みたいなのが聞こえたけど....」
エミリ「本当だ。え、なんでミミさんとリンたちがいるの!?」
ミミ「夫の一大事に駆けつけない嫁がいますか?
うーんタカノ様!!今参ります!!」
リン・メイ・マオ「お父様が大変。助けにい行く」
ミミ「並行世界のタカノ様とはいえ、仲間と大切な人達を傷つけたこと許せませんわ。リン・メイ・マオ!行きますよ」
リン・メイ・マオ「はい!お母様!」
アルス「ミミさん。敵は手強いで...」
ミミ「ヒロイン補正があるから大丈夫ですわ。
次回、敗走と傷。ってえ?補正はないの?」
エミリ「作者はあるって言ってますよ。あくまでタカノ様視点かなと...」




