人と獣の境界守護者
※本作品はフィクションです。
※実在の人物、団体、事件、地名、技術、科学的根拠を保証するものではありません。
※また、取材の過程で入手した情報が一部反映されていますが、
※別の地名・時代・人物の話を複合的に盛り込んでおり、実際の出来事や法律と一致するものではありません。
※法律・植生・科学的事実について裏取りが出来ていないものを含む「創作」「ファンタジー」であることをご理解ください。
※偶然書いてあることが何かに一致しても真実だったり嘘であっても著者は一切責任を負いません。
深夜からの運転を昼寝で癒すこと半時間ほど・・・。
エドへ定期的によびかけつつ、AIの勉強。
うーん、反応が帰って来ない。
シーンとした晩冬の道、動くのは虫の一匹くらいのもの。
<川島、こっちはいなかった、大回りしてくれ>
<ほいさー>
ああ・・・楽しんでらっしゃる・・・。
犬が戻ってこないってこういうこと(留守番)だよなぁ、などと考えつつ、
ふと視線を無線機から上げると、カラフルな中高年登山客が話しながらゆっくりゆっくり正面から向かってきて、車の脇を通ってあいさつを交わし、背後へと抜けていく。。
常々思うけれど、秩父山系とかで登山する人は勇気の塊。
鐘の音で無抵抗なエサがいることを熊や野犬の群れに教えながら歩いて、
しかもなんと丸腰。銃どころか熊撃退スプレーすらない。
これは平成の姥捨て山かっ、などと頭をよぎるのだけれど。
現在地はスマホが電波を拾わない山の中。
普通の人は完全凍結の上の雪解け道路で車を乗り回すこともないので、
割と軽装で歩いてる。うーん、コワイコワイ。
そんなことを思いながら、大声でエドに呼びかけるのを控えているうちに連絡が入る。
<戻ったか?>
<いえ、残念ながら>
<そっち行くから昼飯にしようや>
稜線沿いの比較的整備されたアスファルトな参山道沿いにある展望デッキでそれぞれ持ち込んだものを食べる。
もちろん猟師飯などという洒落たものでなく、自分で握ってきた握り飯やATMのないコンビニで買ってきたパンや菓子類等々。
個人的には、イノシシ叉焼+握り飯とか好きで僕は時々やるのだけど。
「この山の向かい側な、人が多かったころは峰の方、あすこの林の淵、崖の下の沢、それにもう何か所かタツ張ってな。一日かけて一山狩りつくしたもんよ」
「いっぱいいましたか」
「そりゃもう、猟師も鹿もいっぱいよ。にぎやかなもんだったさ。ダムが出来た頃かねぇ。だんだん減って来て、今じゃほれ、オレらももう行かんだろ?」
「そうですね。タツの人数的にも厳しいですか?」
「おうよ。川島が頑張ってくれてるがね、やっぱ足りはせんよ。だけんど鹿が減った方がきついな。」
「減ってますか」
「有害(*1)で年中取るとな、あの辺の、林道があるところは暇なもんが狩りつくしちまうさな。数年もすれば、有害も出なくなるだろうよ」
*1:有害鳥獣捕獲。農林水産業又は生態系等に係る被害の防止の目的で鳥
獣の捕獲等又は鳥類の卵採取等を行うこと。(狩猟や個体数調整と別。)
ほとんど年中捕獲を行う地域もあり、そうするとさすがにその地域の個体数は減る事が多い。
会長は意味深なの余韻を残して会話をそう区切ると、
「まあ、そろそろまた呼びなや。」
僕に呼び戻しを再開するように促した。
あの余韻はきっと、”お前を有害駆除隊に入れるのは、そういう理由で保留だ”という意味だろう。
実は、このとき県北東の山間部ではまだ鹿が増加傾向であることはそれなりに知られていた。
けど、車が出入りできない、山道もない山奥に、わざわざ出掛ける地元ハンターはあまり居ない。
人の領域と獣の領域の境界に活動するのがハンターだという言葉を聞いたことがある。
地元ハンターは、まさにそういう存在なんだなと感じる話題だ。
そんなことを思ううちに、獲物を見つけられず済まないと思ったのか、若干しょんぼりしながら、
吼えながら離れて行った時とは逆に、静かにエドが帰って来る。
「もう1ラウンドは行けるかね」
「そうさな。岡本がまだ行ってない遊歩道の方へ行くかね」
年度内最後の巻狩りだけあって、会長の声に賛同するのも一人ではない様子。
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「戻らない子って、大変ね。車の事故や猪との遭遇、見当違いの山へどんどん行く可能性もあるもの。」
「いえ、当時のエドも、そこまで酷くはないんですよ。狩モード開始からしばらく話聞かないだけで、数時間で必ずこっちを探しながら戻りますし。」
「でも、ツール開発の理由に十分な困り振りね。」
そういいながら前髪を払った彼女に、ため息交じりに応える。
「おっしゃる通りです。お嬢様。」
そう、結局のところエドを鍛え切って指示一つで戻る猟犬にすることを僕にはできなかったというのは、
猟師生活の中で何度かあった大きな敗北の中でも、特別重要な一つだった。
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毎週1~2話は投稿したいのですが、割と現実は厳しいですね。
ネタは大分溜まっていても、全然文章にするのが追い付きません。




