それはほんとうの、はじまり (第21話)ゲーム・イズ・オーバー
KJ法が一言だけ出てくるので先に触れておきます。
KJ法(文化人類学者の川喜田二郎(東京工業大学名誉教授)がデータをまとめるために考案した手法):
フィールドワークで多くのデータを集めた後、あるいはブレインストーミングにより様々なアイディア出しを行った後、それをグループ化して、グループ同士や個別要素間の因果関係や相互作用も図解化する。そうしてできたグループについて特に重要なものを明確化するため参加者で各々重み付き評価を行い、最終的に重要なもの、取り上げるべきものを明確化する。
※川喜田研究所から使用許諾を受けずに「KJ法」を商標として使用すると商標権侵害になりますので、注意しましょう。
※本作では名前を挙げて宣伝しているだけですので、商標権侵害に関わる事項は無いという考えです。異論反論ご助言あれば取り入れますのでよろしくお願いします。
その後、ブレインストーミングで出てきたフレーズをとっかかりに、
要素別の整理とグループ化、発散から収束のプロセスを経て対策を検討しつつ、KJ法の説明等を行った。
「ごめんなさい。僕のグループワークの練習に付き合っていただいたみたいになってしまって。」
「いいえ。こちらこそ本来の目的が達成できなくなってしまってなし崩し的に貴方の練習を目的化してしまったのだから、
謝る文化で言えば、こちらが謝るべき、ね」
「鷹士君、ここは敢えて礼を言ってしまうんだ!謝り文化は碌な事にならないッッッ」
そんな微妙なやり取りを終え、デカフェ紅茶で一息ついて、鷹士は工房で作業、リーゼとオカモトはリビングで一服。
「今期のチーム運営も、試練また試練ね」
後ろ向きな発言だが、リーゼの表情からはニュアンスが読み取れない。
「サガミは良いでしょう。地元ベテランのフォローもあるから。」
「はい。問題は村上君でしょうね」
ムラカミ・・・という単語をリーゼが口の中で転がす。
「気が重くなって一旦休止、多忙またはプライベートの充実を理由に離脱、というのが若手会社員頻出事象だけれど、それを振り切って猟隊のの活動に引き込むのは正しいことなのかしらね」
それはっ、と声を上げてその音が出るより前に、リーゼは静かに手を挙げ、遮った。
「話が、空挺降下猟犬からすっかり離れてしまったね。防獣の担い手問題に関する本質的な議論は場を改めましょう。
チーム運営にしても、地元、都市部ハンター、地元協力者との関りから組み直すことについて
一回の出猟をベースにした技術的話題と混同するのは危うい・・・。そして、私と貴方はこの件の主役にはなれないのだから。ムラカミには、私からコンタクトをとるから、貴方は私から声をかけてからアクションを起こして欲しい。よいかしら?」
リーゼは立ち上がり、意味深に窓を開け、夜空を仰ぐ。
「かしこまりました」
オカモトは静かに隣に立ち、共に冬の、身の引き締まるような夜風に晒された。
一回の出撃が終わり、その振り返りも締められた。
戦いは始まったばかりだ。
しかし、その戦いの前線に立つ者の大半は、何の戦いを、どう戦うのか、無明の中で彷徨っている。
現状の認識を更新すること。それはほんとうの、はじまり。
だけど、そのはじまりには番外の駒といって良い二人だけが佇んでいた。
第一章本編、完。




