ほんの短い夏
ゲリラ豪雨の中に
雹が混じる雨音と
雷鳴の地響きの前日の早朝に
鳥のさえずりよりも
蝉の鳴き声がよく響いていた
この数日 晴れ間が観えたり
空一面に雲が拡がるか
どちらかの一日が続く
すっきりしない天気の中
一瞬ではあるが青空が続いたそんな日
うっすらと雲間の中に陽が眩しく
その陽の中に いつか観た
日食のような輪の眩しさを目視して
運転する車のデジタル表示が
ボヤけて観えていた
渋滞の中を高速を降り
どうせ一般道も混んでいるだろうがと
増え続ける交通量と ウインカー出せば
割り込めると勘違いしている輩を黙らせる様に
蝉の声が一掃激しく聴こえた まだ七月の頃
道路際の木々に留まる 蝉の声
住宅街の歩道寄りに植えられた公園の木々に
留まる 蝉の暑い声を信号待ちに聴いた
その蝉の声を毎年の様に聞くと
いつかの子供の頃の風景が蘇る
麦わら帽子を被り
手には網を持って 野原を駆け回って居た
木々に留まる蝉を捕まえたり
飛んでいるトンボを捕まえたり
何時の頃からか トンボや蝉を捕まえるのに
網が必要では無くなった
飛んでいるトンボが何処かに留まるの眼で追い
羽を休める為に留まるトンボにそっと近づき
子供の眼には大きく観えた
トンボの瞳の前に指を差し出し
指はクルクルと丸を描いた
トンボの羽が下がり始め
そろそろ眼を廻している頃だろう
瞬間にサッと指はトンボを捕まえ
得意げになっていた いつかの夏の日
蝉の真似をしようと
木登りが出来るようになったいつかの
地区の遠足の日
小豆色の電車に乗り
何処か 今でも思い出せない場所へ行った夏の日
持っていた網を親に渡し
出来るようになった木登りのついでに
夏の頃に現れる 蝉の鳴き真似をした
戦時中の頃の十代だった祖父も
満州では 罰として木に登らされ
蝉の鳴き真似をさせられていたのを
祖父が亡くなって だいぶたった頃に
祖母から聴いた
遺伝というものは 不思議なもので
父親の遺伝を受け継ぐよりも
祖父の代の遺伝を遺伝子より多く
受け継いでいるようにも感じる
夏の頃に鳴く 蝉の声に
当時の記憶が蘇り
脳裏には 映像も残っているが
寒い冬が終わり またいつもの様に
暑い夏が来て
蝉の声を聞きながら 信号待ちをしていた
そんなある日の出来事と
ここからが話のスタートで有る




