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宇宙の月陽に照らされて  作者: 伊集院 大和
72/111

ほんの短い夏







ゲリラ豪雨の中に

雹が混じる雨音と

雷鳴の地響きの前日の早朝に



鳥のさえずりよりも

蝉の鳴き声がよく響いていた


この数日 晴れ間が観えたり

空一面に雲が拡がるか

どちらかの一日が続く

すっきりしない天気の中


一瞬ではあるが青空が続いたそんな日


うっすらと雲間の中に陽が眩しく

その陽の中に いつか観た

日食のような輪の眩しさを目視して


運転する車のデジタル表示が

ボヤけて観えていた


渋滞の中を高速を降り

どうせ一般道も混んでいるだろうがと


増え続ける交通量と ウインカー出せば

割り込めると勘違いしている輩を黙らせる様に

蝉の声が一掃激しく聴こえた まだ七月の頃


道路際の木々に留まる 蝉の声

住宅街の歩道寄りに植えられた公園の木々に

留まる 蝉の暑い声を信号待ちに聴いた


その蝉の声を毎年の様に聞くと

いつかの子供の頃の風景が蘇る


麦わら帽子を被り

手には網を持って 野原を駆け回って居た

木々に留まる蝉を捕まえたり

飛んでいるトンボを捕まえたり

何時の頃からか トンボや蝉を捕まえるのに

網が必要では無くなった


飛んでいるトンボが何処かに留まるの眼で追い

羽を休める為に留まるトンボにそっと近づき

子供の眼には大きく観えた

トンボの瞳の前に指を差し出し

指はクルクルと丸を描いた


トンボの羽が下がり始め

そろそろ眼を廻している頃だろう


瞬間にサッと指はトンボを捕まえ

得意げになっていた いつかの夏の日


蝉の真似をしようと

木登りが出来るようになったいつかの

地区の遠足の日

小豆色の電車に乗り

何処か 今でも思い出せない場所へ行った夏の日


持っていた網を親に渡し

出来るようになった木登りのついでに

夏の頃に現れる 蝉の鳴き真似をした


戦時中の頃の十代だった祖父も

満州では 罰として木に登らされ

蝉の鳴き真似をさせられていたのを


祖父が亡くなって だいぶたった頃に

祖母から聴いた


遺伝というものは 不思議なもので

父親の遺伝を受け継ぐよりも

祖父の代の遺伝を遺伝子より多く

受け継いでいるようにも感じる


夏の頃に鳴く 蝉の声に

当時の記憶が蘇り

脳裏には 映像も残っているが


寒い冬が終わり またいつもの様に

暑い夏が来て

蝉の声を聞きながら 信号待ちをしていた

そんなある日の出来事と


ここからが話のスタートで有る







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