66. 話の揉め事は大体主人公で決まる。
大変お待たせ致しました。久しぶりの投稿となります。
さて、前回は酒場で揉めている男二人組を見事回し蹴りで追っ払ったサツキちゃんのその後の話です。それでは、どうぞ!
酒場で起こった揉め事の処理が面倒臭かった私は、彼等に早々に消えて願いたかったため、蹴り飛ばしてお帰りいただいた。一文で簡単にまとめたにも関わらず、その場に居た人たちは皆、目をこれでもかと見開き、口を阿呆みたいに開け、外へと開けた先を見ていた。私は、それらには一切目を向けず、服に付着した砂や埃を簡単に手で叩いた。そして、何も見ていないかのようにまた、カウンターへと戻ろうとしていた。
「おいおい、ちょっと待てよ、お嬢さん。」
私の左肩を思いっきり掴み、カウンターへの道を阻んだのは、いち早く意識を取り戻した男だった。筋肉隆々なその男は、しかし怯えた表情で私の両肩に自身の手を置いた。盛り上がった剣ダコが、彼の歴戦具合を想像させる。私は肩に置かれたそれらを一瞥すると、彼の方へと向き直り、「何でしょう?ご依頼ですか?」と聞いた。
「依頼とか、そういう問題じゃねーよ!?何なんだよ今の!!あんた受付嬢なんだろ!?何だってそんな物騒なんだ!?それに今の技、あれ並大抵の奴でも出来ねーよ!あんた一体何者なんだ!?」
「...落ち着いて下さい。私はただのバイトです。それに、あまり近くで大声を出されると鼓膜が破れますし唾が飛んできて大変不快です。今すぐその酒臭い口を閉じてください。それからもう一つ、そんなに強く肩を掴まれますと、肩が崩壊いたします。今メシメシと悲鳴を上げている音が聞こえませんか?もう少し優しくされるか離していただけると大変助かります。」
受付のお姉さんが言っていた『ここにいる人には極力営業スマイルを忘れないこと!クレーマーなら話は別だけど!』の鉄則を思い出し、今まで見せたこともないようなbestスマイルを披露しつつ、男の質問に丁寧に答えていった。余計なことも言ったが、それは私の心の叫びだと思ってほしい。
私の言葉を聞いて、更に顔を青白くさせた男は、手に込めた力を弱め、私から一歩遠ざかった。まるで化け物か幽霊でも見ているかのようなその動作に、私は自然と笑みを深める。
「お願いを聞いて下さり、ありがとうございます。
...当酒場での争いや揉め事等は、他のお客様に大変ご迷惑になります。そのような場を見つけ次第、然るべき処置を行いますので、皆様、くれぐれもお騒ぎになりませんようお願い申し上げます。それでは、引き続き、お楽しみ下さいませ?」
私は男に礼を欠かさず言った。そして、後半は忠告という名の脅しを行った、口頭で。当たり前のことを当たり前に、ただし、表情は明るく楽し気に。そうすることで、なるべくソフトに伝えられるようにという、今までにない配慮をしたつもりだった。しかし、その場にいた者の顔は皆真っ青だった。その光景を不思議に思いつつ、私は一度首を横に傾げた。
暫くの間、いつもならあり得ないほどの沈黙が訪れた。その内、一人の男が楽し気にケラケラと笑い、私の方へとやって来てこう言った。
「メイ、魔王退治にでも行かないかい?」
爽やかな笑みを浮かべ、美しい紺碧の髪をサラサラと靡かせた此処の頂点は、「今から、ちょっとそこまで買い物にでも行かないか?」みたいな軽いノリで、私を魔王討伐へと誘ってきたのだった。
...軽いノリで誘われちゃったサツキちゃん。これからどんな答えを出していくのか、それは次回のお楽しみです!




