品評会と買い物➁
「あら、レインったら。そんなにバシバシ追い詰めたら、可愛らしいお嬢様が凍りついちゃうかしら? 照れ隠しにしては少々強引すぎるんじゃない?」
「……何?」
眉をひそめる俺の前に、カーマインがすっと歩み寄り、ろう人形のように固まった俺の口元を指先でクイッと持ち上げた。
「ほら、笑顔! そうじゃないと、可愛い娘ちゃんが悲しむでしょう? ……ハァ、本当あなたって女心が分かってないわね」
(ひぇぇぇぇぇっ!? 公爵様の顔を触ったぁぁぁ!?) 周囲の仕立屋たちが過呼吸を起こしそうになる中、俺はカーマインの手を払いのけ、殺気すら込めた冷酷な低音で威嚇した。
「……貴様、後で覚えていろよ」
「はいはい、おっかないおっかない。分かったわよ、そんなに睨まないで頂戴。……まったく、今日は私の奢りでいいわよ」
「……ならば、全部だ」
間髪入れずに言い放った俺に、カーマインは一瞬ポカンとし、すぐさま扇子をバシッと叩きつけた。
「あんたねぇ! 少しは遠慮ってものを知りなさいよ!?」
「……看板が泣いているぞ、カーマイン。天下のカリスマと謳われた男の『奢り』とは、随分と底が浅いのだな」
「……っ! なに顔色ひとつ変えずに煽ってくれてんのよ!? 撤回なんてしないわよ、女に二言はないわ!」
「(……お前、男だろ)」
「なにか言ったかしら、レイン?」
カーマインが不穏な笑顔でギロリと睨んできたため、俺はそっと目を逸らした。……やべぇ、心の中でツッコんだつもりが声に出てた。
さらに、ドレスだけでなく溢れんばかりの宝石類も持ち込まれ、オリヴィアの美しい翡翠色の瞳に合わせるように、高級なエメラルドやダイヤモンドの首飾りが次々と胸元を飾っていく。
(アカン……! 全部可愛すぎてどれが一番か全く分からん!! 天使は何を着ても天使なんだよ!!)
完全に選択不能に陥った俺は、ふと部屋の隅で凍り付いているマリアへ冷たい視線を向けた。
「……マリア」
「ひっ……! は、はいっ……!?」
「お前が選べ。どれが一番似合っている」
「……えっ!?」
唐突に振られた指名に、マリアの顔から血の気が完全に失われた。
(な、なぜ私に……!? 試されているの……!? もし公爵様のお気に召さなかったら……即座に首をはねられる……っ!!)
死の恐怖に直面しながらも、マリアは必死に頭を回転させた。オリヴィアのために、間違った選択をするわけにはいかない。彼女は震える声で、必死に自分の意見を絞り出した。
「あ、あの……っ! オ、オリヴィア様の……美しい翡翠色のお目に映える……こちらの深緑のドレスと、エメラルドの飾りが……一番、お美しく見えるかと……っ!」
「……ほう」
俺は深緑のドレスを着たオリヴィアをじっくりと見つめた。金髪に映える深緑、そして瞳と同じ翡翠の宝石。確かに素晴らしい選択だ。だが——。
(いや、でもさっきのピンクも捨てがたい! 純白のも聖女みたいだったし、紺も捨てがたいんだが!? ていうか宝石も全部キラキラして似合ってたぞ!?)
イエーイ




