平和な日常➁
やがて、オリヴィアがふと思い出したように表情を引き締め、まっすぐな瞳でレインを見つめた。
「あの……お父様。私、もっとお勉強や魔法、マナーのレッスンを受けたいです。お父様や、屋敷の皆様の役に立ちたいから……!」
その言葉にレインは思案する。オリヴィアも二年後には学園に入学する年齢だ。今から魔法や教養を学ばせておくのは、彼女の未来にとっても非常に良い選択と言えた。
「……分かった。家庭教師を手配しよう。励むといい」
「はいっ! 私、一生懸命頑張ります!」
元気良く返事をして、再び美味しそうに料理を頬張り始めるオリヴィア。その微笑ましい光景を見ていたマリアが、思わずくすくすと声を漏らした。
「マリア。何がおかしい」
「あ、申し訳ありません……! ただ、こうして楽しそうに笑い合っているお二人を見ていたら、なんだか胸がいっぱいになってしまって……」
照れくさそうに頭を下げるマリアに、レインは小さく息を吐き、それ以上は追求しなかった。
◇
帰り道の馬車の中――。
一日中動き回ってお腹もいっぱいになったオリヴィアは、マリアの膝の上に頭を預け、すやすやと心地よさそうに眠っていた。
ガタゴトと揺れる馬車の中で、規則正しい寝息が響く。
レインは窓の外の景色から視線を外し、眠る娘の穏やかな寝顔をそっと見つめた。その瞳には、誰にも見せたことのない限りなく優しい光が宿っていた。




