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悪役令嬢の父親(冷徹非道)に転生した俺、前世の知識で娘の処刑フラグをへし折りに!  作者: シャロ


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馬車の中の絶望➁

(……え、俺!?!? 俺なにもしてないけど!? なになに、俺いつの間に『影の支配者』みたいな裏ボス的ポジションになってたの!?)

レインの脳内で過去最大級の驚愕の悲鳴が上がる。

同時に、絶望に沈んでいたはずのオリヴィアとマリアも「お父様(公爵様)が……!?」と目を丸くして驚きの表情を浮かべていた。

カーマインは指を一本立て、理路整然と解説を重ねる。

「あなたは四大公爵家の当主であると同時に、皇帝レディオンの唯一無二の親友。その二重の意味での影響力は、あんたが考えているよりも遥かに大きいのよ」

「……そんなことでか?」

「『そんなこと』じゃないわよ! レディオンは国を揺るがすような重大な決断を下す時、他の四大公爵家の当主たちよりも先に、まずあなたに意見を求めに来るの。これがどういう意味か分かる?」

カーマインは身を乗り出し、はっきりとその事実を叩きつけた。

「実質的に、あなたがこの帝国で二番目の権力者なのよ。だからこそ、他の四大公爵家だって、あなたが議会に出てこなくても文句一つ言えないの!」

(俺すごすぎだろ……!? まさかの二番目の権力者!?!? 前世はただの一般人だったのに、今世のスペック高すぎて震えるんだが!?)

内心で己の絶大な立場にガクブルしつつも、レインは腕を組み、冷酷非道な公爵の表情をぴくりとも動かさずに会話を続ける。

「……そんなあなたが、皇后の息子である第二皇子との政略結婚を突っぱね、さらにはその首を跳ねようとした。……それがどういう意味を持つか、分かる?」

「そういうことよ。……ヴァルハルト公爵家が第二皇子の後ろ盾になる可能性は完全にゼロになった。それどころか、今後もし他の四大公爵家の誰かが第二皇子の後ろ盾になろうものなら、それは即ち**『ヴァルハルト公爵家との対立』**を意味することになるのよ。どんな大貴族だろうと、あなたを敵に回すとなれば相当の覚悟がいるわ」

帝国のパワーバランスを一瞬で塗り替えてしまったレインの暴挙。

だが、レインはどこまでも冷徹な声で一蹴した。

「……俺の娘に手を出そうとしたんだ。命があるだけありがたいと思ってもらいたい」

「ハァ〜……本当、親バカもここまで来ると国を揺るがすわね……」

カーマインが肩をすくめて溜め息をついた、その時。ガタゴトと揺れていた馬車が、緩やかに速度を落とし、静かに停止した。

「あら……そろそろ着くわね」

窓の外を確認したカーマインが呟く。レインは眉をひそめた。

「……どこに着いたんだ? 屋敷ではないようだが」

カーマインは先ほどまでの重苦しい雰囲気を一変させ、怯えていたオリヴィアに向かって優しく花が咲くような笑顔を向けた。

「ふふっ、オリヴィアちゃん。舞踏会で何も食べられなくて、お腹が空いちゃったでしょう? だからね、お父様の奢りで、今から王都で一番美味しいお店にご飯を食べに行くのよ!」

「え……っ!?」

オリヴィアは一瞬ぽかんとした後、翡翠色の瞳をパッと輝かせた。罰を受けるどころか、食事に連れて行ってもらえるということに驚きを隠せない。

「ほ、本当ですか……!? お父様とお食事……!」

「……ああ」

期待に満ちた愛娘の視線を一身に浴び、レインが断る術など持っているはずもなかった。静かに頷いて同意を示す。

「やったわね〜! もちろん、私にも最高級の料理を奢ってもらうわよ!」

「……調子に乗るな」

レインは呆れたように言い捨てつつも、馬車の扉を開けて先に降り、オリヴィアの手を取って優しくエスコートした。

そこは、王都の裏通りに佇む、知る人ぞ知る極上の隠れ家レストランだった。

店の中へ入ろうと足を踏み出しかけたレインだったが、馬車の中に固まったまま残っているマリアに気づき、立ち止まった。消される覚悟をしていたマリアは、自分だけ置き去りにされるのだと思い込んで小さくなっていた。

「……マリア。何をぼさっと立っている」

「えっ!? あ、あの、私めは使用人ですので、馬車でお待ちしております……っ!」

恐縮して死を覚悟するような眼差しで見つめてくるマリアに対し、レインは冷酷な公爵の面のまま、しかしどこか不器用な気遣いを込めて告げた。

「……お前には怖い思いをさせた。それに、俺が来るまで命がけでオリヴィアを守ろうとしてくれたことには感謝している。……いいから、早く来い」

「公爵様……っ!」

処刑されるどころか、命がけで守ったことへの感謝の言葉をかけられ、マリアは感激のあまり涙を崩壊させた。

オリヴィアもまた、自分が失望されるどころか深く愛され、守られていたのだと悟り、嬉しそうに駆け寄ってマリアの手をギュッと握りしめた。

「マリア、一緒に行きましょう! お父様がそう仰ってくださっているわ!」

「はい……っ! ありがとうございます、オリヴィア様! 公爵様……っ!」

マリアは涙を拭いながら深く深く頭を下げ、オリヴィアと手を繋いでレインの後を追った。

不気味な噂と政治のドロドロとした暗雲を吹き飛ばすように、温かな光が漏れ出るレストランの扉をくぐる。



(((・・;)

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