いざ舞踏会に!⑧
三人がベランダで昔話に花を咲かせていた頃——会場の壁際では、レインとのダンスを終えたオリヴィアが、嬉しさを隠しきれない様子でマリアに語りかけていた。
「マリア、私……お父様と踊れたの! 転ぶこともなく、上手に踊れたのよ!」
「ええ、ええ! 拝見しておりましたよ、オリヴィア様! まるで絵画から飛び出してきた妖精のようで、本当にお見事でした!」
マリアは目を輝かせ、心から愛おしそうにオリヴィアの言葉に耳を傾けていた。胸の前でギュッと手を握りしめ、パッと頬を染めるオリヴィアの笑顔は、今まで屋敷に閉じ込められていた頃には決して見られないものだった。
しかし、ふとオリヴィアが会場の中央へ視線を向けると、そこには自分と同じ年格好の令嬢や公子たちが、楽しそうに談笑しながらダンスを踊っていた。今まで同年代の友達など一人もいなかったオリヴィアは、羨望と寂しさが入り混じった表情で、少しだけ視線を落とす。
「……みんな、楽しそう。私にも……あんな風にお友達ができるのかしら」
「大丈夫ですよ、オリヴィア様。もう少し大きくなって学園にお通いになられれば、お友達なんてたくさんできますわ!」
「本当に……?」
「はい、本当ですとも! オリヴィア様のように優しくて可愛らしい方なら、皆様すぐに大好きになりますわ」
マリアの優しい言葉に、オリヴィアは「うん……!」と嬉しそうに頷いた。
そんな仲睦まじい二人を余所に、周囲の貴族たちは遠巻きにヒソヒソと噂話を交わしていた。
「……それにしても、素晴らしいダンスだったな」
「ああ、流石はヴァルハルト公爵の娘だ。お顔立ちも極上なら、マナーも完璧……まさに隙がない」
「ああして見ると本当にかわいらしい……少しお近づきになりたいものだ」
「バカ言え! 下手に手を出してみろ、公爵に一族郎党消されるぞ……!」
貴族たちが恐怖と憧れの間で戦々恐々とする中、オリヴィアはベランダの方をチラチラと見つめ、そわそわと身体を揺らしていた。
(お父様……早く戻ってきてくれないかしら)
せっかくお父様と舞踏会に来られたのだ。もっと色々な話を聞きたいし、あそこに並んでいる美味しそうなお菓子も、お父様と一緒に食べてみたい。夜風に揺れる大きな窓硝子を眺めながら、オリヴィアがそんな淡い期待を膨らませていた——その時だった。
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