いざ舞踏会に!⑦
レインの断固とした拒絶を聞き、レディオンはふっと柔らかく、どこか真摯な表情を浮かべた。
「……だが、お前にまた大切な人ができて嬉しいよ。オリヴィア嬢のおかげだな。あの子と一緒にいるお前を見ていると……なんだか、幼い頃のお前を見ているみたいだ」
その言葉に、カーマインが食いついた。
「ちょっと待って! 幼い頃のレイン!? どんな感じだったのよ、それ!?」
「カーマインは学園から俺たちと知り合ったから知らないだろうけどさ。昔のあいつは、悪戯好きで、可愛くて、かっこよかったんだぞ?」
「気になる! すごく気になるわ、聞かせてちょうだい!」
カーマインは目を輝かせ、レインの頬を指先でツンツンとつつきながらまじまじと顔を覗き込んだ。
「こうしてみると確かにイケメンだけど……可愛い? 悪戯好き? 全っ然想像つかないわねぇ!」
「そうだろう? 昔のあいつは……今みたいな権力主義者なんかじゃなかった。……あいつがこんな風になっちまったのは、俺のせいでもあるんだ……」
レディオンの言葉が、ベランダの空気を重く沈めかけた——次の瞬間。
「……レディオン、黙れ」
氷点下どころではない、これまでの比ではない絶大で冷酷な威圧感がレインから放たれた。まるで世界そのものを凍結させるかのような冷酷非道な公爵の眼光に、レディオンも言葉を呑む。
(……っ!? なんだ今の!?)
レインは内心で激しいショックを受けていた。今、自分の意思とは関係なく、口が勝手に動いてレディオンを制止したのだ。
(まさか……原作の『冷酷公爵』が、過去の自分を隠したがっているのか……!?)
その圧倒的な拒絶の気配を感じ取り、レディオンは静かに両手を下げた。
「……分かったよ。お前の許可なく、昔の話はしない」
「あら〜? なにそれ、ものすご〜く気になるじゃないのよぉ!」
重職な雰囲気を察しつつも、カーマインは場を和ませるように不満げな声を上げ、再び公爵の頬をツンツンと突いた。
「ねぇ、教えてよレイン〜!」
「……うるさい。つつくなと言っているだろ」
レインはカーマインの手を払いけながら、密かに冷や汗を拭った。




