いざ舞踏会に!➄
オリヴィアの許可を得ると、カーマインは主人公の手首を掴み、静かなベランダへと連れ出した。夜風が通り抜けるベランダで、カーマインは扇子をパチンと閉じ、ジト目で主人公を睨みつけた。
「……あんたねぇ。『皇室に娘はやらん』って、皇帝夫妻相手に脅迫までかましたんですって?」
「……なぜそれを知っている」
「私の情報網を舐めないで頂戴。オーケストラの陰で何が起きてたか、会場の空気で丸分かりよ。……ったく、相手がレディオンじゃなかったら、あなたいくら公爵だからって不敬罪で即・首が飛んでたわよ?」
「……フン」
鼻で笑う主人公に、カーマインは深々とため息をついた。
「ハァ〜……。まあ、あの権力第一主義だったあんたが、いつから娘を最優先に考えるようになったのかしらねぇ?」
「……時が経てば、人も変わる」
主人公が短く答えると、カーマインは懐かしむように夜空を見上げた。
「……本当にね。あんたが舞踏会に来たことも驚いたけれど、あの時、娘ちゃんを連れて私の店に来たことにも心底驚いたのよ? 正直、オリヴィアちゃんがあの見た目だから……権力のために老貴族にでも嫁がせるつもりなんだろうって、ずっと心配してたんだから」
「……バカを言うな。そんな真似をするわけがないだろう」
「ふふっ、本当……変わったわね、あんた」
カーマインが目を細め、どこか温かい微笑みを浮かべた——その時だった。
「ひょっとして〜? 私もその楽しいお話に混ぜていただけたりします〜?」
張り詰めた夜の空気をぶち壊すような、ひょうきんで呑気な声が響いた。
二人が振り返ると、ベランダの暗がりから、顔に不気味で奇妙なお面をつけた怪しい人物が、ひょっこりと姿を現していた。
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