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第79話 ふるーてぃあ

アウラエル「兎人族ですか。主様が受け入れを約束したのであればなんとか致しましょう」


兎人族の件を相談すると、アウラエルが珍しく苦い顔で応じる。


一樹「なにか問題のある種族なのか?」

アウラエル「他の種族と比べて貞操観念の齟齬が大きいので痴話喧嘩の原因になりやすいですね」

一樹「あー、それは確かにありそうだな」


俺も出会ったその日の内に子作りを約束させられたもんな。


アウラエル「とはいえ種族的な特性とも絡む事ですので駄目とも言えません。それに悪いことばかりでもありませんよ」

一樹「というと?」

アウラエル「兎人族の評価基準は強さ、勤勉さ、美しさの3点です。認めた者には既婚未婚を問わず求愛しますが、それ以外には身体を許しません」

一樹「一緒にいた人間族の女も、そんなことを言っていたな」

アウラエル「加えて育児について責任を求めませんので、男達がいい所をみせようと張り切ります」

一樹「なるほど、労働意欲の向上につながると言うわけか」

アウラエル「そんな所です。兎人族の女を何人抱いたかを自慢にする男も多いようですね」

一樹「ああ、有りそうだな」


地球でもその手の自慢話をしたがる男はたまに居たな。

俺は正直ちょっと苦手だったが。


アウラエル「ええ。その場限りの関係ですし、夫の評価が上がるなら、という事で容認する女も少なくないようですね」

一樹「・・・なんというか、すまん」

アウラエル「いえ、こうなったからには主様は一人でも多くの兎人族の女を抱いてください。ひとまずその3人は確実に抱いてくださいね」


「その3人」というのはキャロット、ジンジャー、ラディッシュのことだ。

盗賊退治の流れで子作りをする約束をすることになった。


一樹「あー、正確には2人かな?1人は子供だったから、多分他の2人の真似をしてただけだと思う」

アウラエル「そうですか。兎人族は成人でも幼く見える者もいますから、後で確認しておきましょう」

一樹「そうなのか?手間をかけるな」

アウラエル「いいえ。それと兎人族を受け入れる利点としてもう1つ、彼らは農耕民族です」

一樹「そうすると、大農園を任せられるか」

アウラエル「はい。ただ、彼らとの伝達要員はできれば他の者にやらせて頂けませんか?」

一樹「アウラエルだとまずいのか?」

アウラエル「兎人族の男が求めるのは何より美しさです。顔がいいだの乳房が大きいだのとそればかり!求愛を断るのが面倒なのです」

一樹「わかった。なんとかしよう」


アウラエルは確かに美人だし、おっぱいもそこそこ大きい。

俺があの3人に言い寄られたように兎人族の男が群がるのだろう。

そうすると伝達役はぱっとしない男を選ばないといけないのか?

或いは顔の悪い女・・・どっちの理由でも失礼だよな。

更年期が終わって落ち着いたくらいの年齢の女性を探してみるか。


一樹「ところで、小劇場の件はどう思う?」

アウラエル「任せてよいかと思います。彼らは足が強いのでダンスや曲芸は見ごたえがあると評判ですね。劇場が使えるとなれば踊り子も増えることでしょう」

一樹「なるほど。では、ダンス教室への講師派遣も頼んでみるかな」

アウラエル「はい、それがよろしいかと存じます」


色街の劇場はマティルデたち踊り子ギルドに差配を任せている。

ただ、そちらは性的な色合いも濃く、娼婦ギルドも兼ねている。

ミランダたちにもはもっと純粋な踊り子ギルドを作ってもらうか。

いずれ作る予定の大劇場や遊園地で行うショーの踊り子を育てて欲しい。


俺の方でも1組アイドルグループをプロデュースしてみよう。

『召喚』アプリの使用人タブにはなぜか踊り子というものもあった。

ダンジョンマスターを楽しませる為の魔道人形ということか。


今回は領のご当地アイドル的な役割を担ってもらうことにしよう。

主な役目は各種お知らせや注意喚起、ビデオ教材での生徒役などだ。

加えて『魔族』のイメージ改善、異種族共存のアピールも担って貰う。


なるみ「ほほう、今度は踊り子ですか」

一樹「ああ、もう少し年齢低めのはないのか?」

なるみ「なんと!もっと幼いのがお好みでしたか」

一樹「じゃなくて!生徒役として小学校低学年くらいのが欲しいんだよ」

なるみ「ああ、ビデオ教材のやつね」

一樹「そうだ」

なるみ「んーと、こんな感じ?」

一樹「いいね。一人目はこのねこ耳にしよう。次はもうちょっと年齢を上げて・・・」


なるみと調整しながら5人分のモデルを選んだ。


なるみ「ではではー」

一樹「召喚実行」


ターンッと中指の腹でリターンキーを弾く。

中空に5つの光の繭が現れ、それぞれに裸身の少女が浮かぶ。

左からまず8歳くらいの白髪の猫人族、10歳くらいの金髪の人間族。

続けて見た目は11歳くらいの銀髪のエルフ族、15歳くらいの栗毛の狼人族。

最後は黒髪・黒目、17歳くらいの『魔族』風の女の子だ。


いつものようにゆっくりと周り、胸元に虹色の光が走る。

それぞれの年齢に合わせたかわいらしいブラジャーが現れる。

続けて小さなお尻を見せ付けるように回りながら、腰周りに虹色の光。

それぞれのお尻を上とセットのかわいらしいパンツが包んだ。

最後に全身を虹色の光が包んで衣装を完成させる。

揃いの白いブラウスとチェックのミニスカート、襟元にはリボン。


一樹「名前はそっちからいちご、みかん、めろん、まろん、れもんだ。グループ名は『ふるーてぃあ』にしよう。ダンスショーに加え、各種広報やビデオ教材での生徒役をやってもらう」

ふるーてぃあ「はーい!」


新しいガーディアンを召喚するに当たっては名前がネックになっていた。

だが、踊り子ということであれば芸名ということでこういう名前も有りだろう。


一樹「なるみ、後で兎人族の練習風景やダンスレッスンの様子を見せてやってくれ」

なるみ「はいはーい」

一樹「みんなはそれを見てダンスの技術を勉強してくれ。あと、本名は秘密と言う『設定』でいく。聞かれたら、さっきの名前が本名だと言い張れ」

ふるーてぃあ「りょうかいでーす!」


俺がつけた名前が本名なのだから秘密も何もないけどな。


一樹「指し当たってはビデオ教材で生徒役を頑張ってもらおうか」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。


ふるーてぃあ「マリー先生の!」

マリー「算数教室~!」


拍手のSEと共に大きな画面上にマリーが現れる。


マリー「今日は基本的な足し算をやって行きますね」

ふるーてぃあ「よろしくお願いします!」

マリー「はい、よろしくお願いします。ではさっそく始めましょう。ここにリンゴが2つ有ります。そこに更に3つのリンゴを持ってきました。さて、リンゴは幾つになったでしょう?」

みかん「えーと、1,2,3,4,5。5つです!」

マリー「はい、正解です。これを式に表すと『2+3=5』となります。基本的な足し算はこんな感じですね」

みかん「なるほど。でも、わざわざ記号に直す必要があるんですか?数えた方が早い気がしますけど」

マリー「いい質問ですね。確かに物が目の前にあって、かつ数が少ない時は直接数えた方が速いかも知れません。では、こんな状況ではどうでしょう?」


場面が転換し、店舗風のセットに切り替わる。


みかん「店長!小麦の在庫、残り2袋です!」

マリー「はーい」

いちご「こんにちはー!ご注文の小麦3袋お届けに上がりました!」

マリー「ありがとうございます。えーと、倉庫に残ってたのが2袋で、今3袋届いたから、今あるのは2+3で」

ふるーてぃあ「5袋!」

マリー「その通り!わざわざ倉庫まで行って数え無くても数が分かりますね」

みかん「でも、小麦だとネズミに食べられちゃったりもしますよね」

マリー「そうですね。現実だといろいろな要素が関わってくるので計算結果と変わってくる事もあります。なので、時々は実際に見に行って確認する必要があるわけですが、毎回見に行く必要が無いので仕事がぐっと楽になりますね」

みかん「なるほどー」

マリー「さらに!こうやって記号にすることで、紙に書いて記録に残したり、だれかに伝えたりするのがすっごく楽になるんです」

いちご「そっかー、直接言いに行かなくても、誰かにメモを預けたり、書き置きで伝えたりできるんですね」

マリー「そうですね。特に大人になったらいろいろな事を役所の人に紙に書いて伝える必要が出てきます。その為にもこういった記号を覚えておくと役に立ちますよ」

ふるーてぃあ「はーい!」


画面が再び教室のセットに転換する。

監督官がプリントを受講生たちに配り始める。


マリー「では、さっそく基本的な足し算の練習をしてみましょう。プリントは行き渡ったかな?受け取ったら、まず自分の名前を書いてね」

ふるーてぃあ「はーい!」

マリー「1問ごとに、果物や小物のまとまりが2組ずつ書いてあります。2つのまとまりを合わせると全部でいくつになるか、さっきの要領で足し算の式にしてみましょう」

みかん「えっと、1問目は1つめのまとまりが1,2,3,4、4個で、2つ目のまとまりが1,2,3、3個だから『4+3』ですね」

マリー「その通り!」

いちご「答えはえーと・・・」

マリー「最初は絵を見て数えながらでもいいので、まずは式の形に直す練習をしてみましょう」

いちご「はい。1,2,3,4,5,6,7。7個だから、式は『4+3=7』ですか?」

マリー「大正解!ではその要領で、全部の問題を解いて見ましょう。終わったら、ちゃんと答え合わせまでやってから帰りましょうね」

ふるーてぃあ「はーい!」

マリー「では、今日の授業はこれまです」

ふるーてぃあ「マリー先生、ありがとうございました!」

マリー「ありがとうございました。では、画面の前の皆さんもがんばってくださいね!」

ふるーてぃあ「またねー!」


手を振るマリーと『ふるーてぃあ』の映像でビデオ教材は終わった。


監督官「では、皆さんもがんばってみましょう。答えは前のテーブルにおいてあります。問題をとき終わったら人から前に出て答え合わせをしてください。間違った問題は、自分の答えの下にしっかりと正解を書き写しましょう。自分の名前が書いてある事を再確認して提出したら、帰って大丈夫です」


子供たちが一斉に問題をとき始める。

「子供たち」と言っても、年齢はばらばらだ。

問題が問題なので速い者は数分で席を立って答え合わせに向かう。

教室前方のテーブルに置かれた赤鉛筆で自己採点をして出て行く。


生徒「ありがとうございました」

監督官「お疲れ様です」


ビデオ教材を使っているが、教室に1人の教員を割くことには変わりがない。

ただ、日本では説明と監督というマルチタスクをこなせない教師も多かった。

周りの子に悪戯する生徒が居ても気づかなかったり放置だったりする。

代わりにここでは専任の監督官を置くことで、教室の秩序を守るわけだ。

この程度なら特別な訓練も必要ないだろうし、人員確保もしやすいだろう。


提出されたプリントは相応の学識のある教員で確認してから返却する。

字が極端に汚かったり、自己採点に問題があれば注意を書き込んでおく。

内容次第では呼び出して個別指導も在り得るかな?


最後に単元ごとのテストを受けて合格したら次に進めると言うわけだ。

教科ごと、生徒ごとに自分のペースで学習を進めてもらう。

日本でも放送大学とかあったし、ある程度高度な内容でも対応できるか。

読み書きも基本はビデオ教材でいいだろう。


だが、音読や作文は人がついたほうがいいか。

あとはグループワークとかもちゃんと指導員が付く必要があるな。

化学や物理の実験はビデオを見せた後で指導員付きで実践かな?

テストの採点やそれに基づく補助的指導も人がやった方がいいよな。


あとは半年単位くらいで自由研究も課する予定だ。

目的を持って自分で調べてまとめるという練習は大事だ。

人から教わることでしか学べない者は大成しないだろう。

これも指導教官が必要になりそうだな。


単純に知識を教え込むだけの単元は基本的にビデオ教材でやっていく。

それでも、教師と言う職業が要らなくなるわけではない。

だが、同じ内容を繰り返すだけの授業は無くなり、負担は減らせる。

その分、指導員が必要な単元のクオリティをあげてもらおう。


マリー「緊張しましたー!あれでちゃんと伝わったでしょうか?」

一樹「どうかな?大丈夫だと思うが、問題があるようなら順次改善していこう。そのときはまた頼むよ」

マリー「はい。でも、私が先生だなんてなんか照れますね」

一樹「いや、似合ってるよ。台本の改善提案とか有ったら、細かいことでもいいから教えてくれ」

マリー「分かりました」


マリーは開拓村の拠点の執務室で一緒に教室の様子を見ていた。

使い魔を教室の後ろに配置して映像を送らせている、と説明している。

ちなみに今回の台本は、俺が日本での記憶を元にして書いたものだ。


一樹「こちらから頼んでおいてなんだけど、前に説明したとおり将来的にはいろいろな講師の動画教材を作ろうと思ってる。それぞれを競い合わせて生徒からの人気や受講者の成績で毎月の報酬は変動する予定だ」

マリー「はい、承知しています」

一樹「だから、もっと親しみやすい演出とか、分かりやすい説明とか思いついたらどんどん提案してくれ。何度でも撮りなおすから」

マリー「わかりました。それにしても、一度の仕事で継続的に収入が入ってくると言うのはすごいシステムですね」

一樹「まあ、こっちはずっとマリーの映像を使わせてもらうわけだしね」

マリー「もう!余計緊張しちゃうじゃないですか!」

一樹「ごめんごめん。でも、かわいいマリー先生のおかげで子供達は算数に取っ付き安くなると思うよ」

マリー「そうでしょうか?」


ちょっと赤くなったマリーもかわいいな。


一樹「たぶんね。他の教科や単元もお願いしたいから、この街に滞在するときは教えてもらえるとありがたい」

マリー「分かりました。お願いします」

一樹「こちらこそよろしく」

マリー「はい。では今日は失礼しますね」


ここしばらく、マリーたち『白百合』は俺の領を拠点に活動している。

先日の戦闘以来、王国北部の冒険者では魔術師が不足気味らしい。

おかげで他の街の冒険者ギルドに近づくと面倒が多いということだ。


例の伯爵が冒険者が駆り出し、俺が魔術師を狙い打ちにしたせいだろう。

彼らには悪いが、おかげでマリーに仕事を頼みやすくなった。

もっとも、俺は飽くまで降りかかる火の粉を払っただけだ。

恨むなら戦場に駆り出した伯爵を恨んで欲しいね。


さて、『ふるーてぃあ』のステージデビューはどうするかな?

とりあえずは兎人族のステージを見学させて勉強させよう。

その上で兎人族にダンスショーの演出を頼もうかな?


色街の分ならダンスショーの動画データは既にたくさんあるんだけどね。

『ふるーてぃあ』のコンセプトからすると、あっちは色っぽ過ぎるんだよな。

この世界では踊り子は娼婦とあんまり区別されていないみたいだからね。


あれ?ってことは踊り子型ガーディアンもそういう機能付いてたりする?

ガーディアンの役割はダンジョンの防衛とマスターの生活環境の改善。

それは俺の生活環境改善の範疇なのだろうか?

いや、実際序盤はちょっとつらかったけどね・・・・。


ま、今はその辺も充実してるから気にしないことにしよう。

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