第78話 兎人族
俺は山の中を逃げる山賊を追跡していた。
しくじった!多寡が山賊と見くびりすぎていたか。
相手は雪風たちによる『間引き』を生き抜いた精鋭たちだ。
山賊とはいえ、もう少し慎重に包囲網を敷くべきだった。
先日捕らえた盗賊を一通り尋問してみたが有益な情報は得られなかった。
やはり黒幕はなかなか慎重な連中のようだ。
加えて賞金を懸けられた者が一人も居なかった事も気になる。
メインターゲットが『亜人』だったから王国は事態を軽視しているのか?
いや、それより黒幕に王国貴族がいると考えたほうが自然だろう。
俺は続けて『領域』内の山賊どもの掃討作戦を始めた。
だが、情報の入らない焦りもあって作戦が杜撰になっていたようだ。
踏み入った山賊のアジトから街道方面に2匹を逃してしまった。
2匹の山賊が逃げていく先に街道を進む馬車が見える。
荷物が多いのか数人は徒歩で、馬車の速度も遅いようだ。
まずい!だが、幸い馬車には冒険者が護衛についている。
俺が追いつくまでの時間稼ぎくらいはしてくれるだろう。
冒険者「どうした?何があった?」
しまった!ぱっと見では山賊も冒険者も見分けがつきにくい。
何かから逃げている様子の山賊を見て冒険者と勘違いしたか?
冒険者はモンスターの襲撃に備えて山のほうに警戒の目を向ける。
その隙に距離を詰めた山賊は、無防備な冒険者を切り伏せた。
山賊「てめえら動くな!御者は降りろ!」
1匹の山賊が娘を人質にとって武器を突きつける。
御者が降りると、もう1匹の山賊が手綱を握る。
人質を抱えた山賊は山のほうを警戒しながら荷台に向かう。
一樹「魔弾よ、あらゆる障害を越えて彼の敵を穿て。スナイプ!」
俺の魔法が人質を取った山賊の眉間を正確に撃ち抜く。
一樹「ストーンバレット!」
続けて御者台の山賊の胸をつぶす。
一樹「大丈夫か!?」
娘たちがコクコクと頷く。
俺は倒れている2人の冒険者の状態を確認する。
負傷はしているが、即死はなんとか避けられた様だ。
一樹「悪いが初級の治癒魔術しか使えなくてな。しばらく寝込む事になるぞ?」
冒険者「分かった、頼む」
一樹「ヒーリング」
俺は傷口を押し寄せてくっつけた状態で魔法をかける。
この魔法は体の自己治癒能力を強化・加速するものだ。
その分、対象者は体力を消耗することになる。
2人目の治療が終わると、俺は馬車の一行に囲まれていた。
興味深々で覗き込む女の子たちはなぜかバニースーツ姿だ。
踊り子ということか?あれ?移動中もバニースーツなの?
踊り子1「すっごーい!つよーい!」
踊り子2「ありがとうございます」
踊り子3「素敵!抱いてー!」
一樹「はいはい。よっと」
若い踊り子の軽口にお姫様抱っこで応える。
踊り子3「わーい!じゃなくて!ふつう子作りでしょ!」
一樹「あー、そっちだったかー」
怖い思いをしたはずだが、冗談を言う元気はあるようだ。
大きな怪我やトラウマは負ってないみたいだな。
踊り子2「やん!どうしよう!おしり擦り剥いちゃった」
踊り子1「たいへん!お医者さん行かなきゃ」
一樹「大丈夫か?見せてみろ」
踊り子2「見て!これじゃ舞台に立てないよ」
みると、バニースーツから露出したお尻が赤くなっている。
大した傷ではないが、確かに舞台に立つなら目立つかもしれない。
というか、網タイツの下って生尻なの??
一樹「簡単な治癒魔法なら使える。俺でよければ治療するよ」
踊り子2「ほんと!?お願いします!」
そういって何かの決めポーズのようにお尻を突き出す。
お尻が一番きれいに見えるポーズが身に染み付いてるのかな?
一樹「とりあえず洗うね。ちょっと染みるかもしれない」
踊り子2「はーい」
そういえば、傷口を水道水で洗うと痕が残るとかきいた気もする。
あれは塩素の関係だろうか?それとも浸透圧?
彼女らの反応からするとお尻は大事みたいだし、痕は残せないか。
生理食塩水が出せればいいんだが、うまくイメージできるだろうか?
ああ、そういえば旧日本軍の軍医は目で濃度を確かめたんだっけ?
一樹「我が涙よ、滝のごとく流れて心の澱を押し流せ、ティアレイン!」
俺の手の平から流れる液体が踊り子のお尻を伝っていく。
踊り子2「んっ、、、あれ?痛くない?」
一樹「それはよかった。じゃあ、触るよ?」
踊り子2「はい、どーぞー」
かわいらしく突き出されたお尻に手を当てて魔力を浸透させる。
即席の魔法だったがうまく生理食塩水が出せたようでよかった。
一樹「ヒーリング」
踊り子1「おおー!」
踊り子3「きれいになったー!」
踊り子2「ほんと?ほんとだ!ありがとう!」
そういって踊り子は俺に抱き着いてきた。
なんというか、リアクションがいちいち大きい子たちだね。
踊り子1「あたしもここ打っちゃったかも」
一樹「どこだ?」
踊り子1「ここ」
そういって指差したのは左のおっぱいだ。
一樹「いや、特に傷はないようだけど?」
踊り子1「あとで痣になると嫌だから、ちょっと診てもらえます?」
一樹「わかった」
遠慮がちにおっぱいに手を添えると、踊り子はぐいと奥に押し込んだ。
踊り子1「お願いしますね」
一樹「わ、わかった」
明らかに別の意図を感じるが、出会ったばかりでどういうことだ?
一応魔力を浸透させて中の状態を確認するが、特に異常は見られない。
一樹「特に問題はないようだな」
踊り子1「あら、気のせいだったかしら?でもおかげで安心できました」
一樹「どういたしまして」
踊り子3「すごーい!いろんな魔法使えるんだね」
一樹「まあ、いろいろ練習してはいるよ」
踊り子2「他にどんな魔法使えるんですか?」
一樹「あー、攻撃魔法をいくつかと、生体操作系はおっぱいの・・・いや、初級の治癒魔法かな」
なんか、接待で行かされたキャバクラみたいな雰囲気だな。
おべっかと分かっていてもどうにも口が軽くなってしまう。
まあ、格好からすると実際そういう系統の職業なんだろう。
けど、バニースーツって普段からきてるもんじゃないよな?
踊り子1「おっぱいの?」
踊り子3「もしかして豊胸魔法?」
一樹「まあ、それも一応使える」
踊り子2「すごーい!」
踊り子1「それも、ってことはひょっとしておっぱいの引き締め魔法?」
一樹「それも使えるな」
踊り子1「すっごーい!」
踊り子2「あれって使えるの天使族だけかと思ってた」
一樹「まあ、天使族から直接教わったんだよ」
踊り子1「素敵!抱いてー!」
踊り子2「あたしもー!」
踊り子3「待って!あたしが最初だからね!」
なんかキャバクラの域を超えてきてないか?
さすがにここまでは普通言わないよな?
女「その辺にしときな。旦那が困ってるだろう」
踊り子3「ぶー。だってー」
女「まあ、待ちな。旦那、助かったよ。ありがとう」
一樹「いや、こちらこそ討伐中の山賊を取りこぼして迷惑をかけたようで済まない」
女「ひょっとして、魔族の領主様ってのはお前さんかい?」
一樹「ああ、この辺りの話なら俺の事だな」
女「そうかい。申し訳ないが学がないもんでね、しゃべり方が雑なのは勘弁しておくれよ」
一樹「わかった、問題ない」
女「ありがとよ。それにしてもちゃんと山賊を退治してくれる領主様とは心強いね」
一樹「そう在りたいもんだな」
女「ところで、あの3人の中じゃ誰が一番好みだい?」
一樹「え?あーいや、全員かわいいと思うが?」
女「そうは言っても3人いっぺんには無理だろう?」
一樹「えーと?」
踊り子2「そんなことないよねー?」
女「あんまり旦那を困らせるんじゃないよ。1人で我慢しときな!」
踊り子3「ぶー」
踊り子1「じゃあ、あたしよね?おっきいおっぱいお好きでしょ?」
踊り子3「そんなことないよね!若いのが一番だよね?」
一樹「ちょっと待ってくれ!助けた礼とかなら気にしなくていいから」
女「おや?兎人族の女は始めてかい?」
一樹「ああ、悪いが初めてだな」
女「兎人族の女は強い男の精を欲しがるのさ。なに、養育費だの相続権だのは要求しないから心配しないでいいよ」
踊り子2「そうそう、子供はこっちでしっかり面倒見るから安心してね。だからあたしとしよ?」
踊り子3「あたしだってちゃんと面倒みるもん!」
踊り子1「蓄えならあたしが一番さ。子供に金で不自由はさせないよ?」
女「馬車の中を使っていいからさくっとやっとくれ。でないと収まらないからさ」
いや、いきなり無茶言うなよ。
一樹「お前たちが向かうのは俺の街なのか?」
女「そういうことになるね」
一樹「なら急ぐ必要もないだろう。冒険者たちが衰弱してる。命の別状はないはずだが、早いところ休ませてやってくれ」
踊り子1「そういうことなら、順番に全員お相手いただけるって事でいいのかしら?」
一樹「わかった、そうしよう」
踊り子3「やったー!約束だかんね!」
一樹「ああ、わかった」
それにしても、強さだけで相手を即決とは随分と動物的だな。
ただ、俺の強さは生来の素質とかじゃなくてダンジョン依存なんだよな。
まあ、俺との間にできる子供は相手の女のクローンになるらしい。
少なくとも、種族的に弱体化することは無いだろう。
山賊たちの死体と遺留品の処理をジュリエッタたちにお願いした。
冒険者たちを荷台に乗せ、代わりに俺たちが護衛を勤める事にする。
荷台には数人の楽士らしき者たちが乗っていた。
やはりダンスショーか何かの一座だろうか?
女「領主様に護衛していただけるなんて恐れ多いことだね」
一樹「こちらの不手際のせいでもあるからな」
女「殊勝な方だね。遅くなったが、あたしはミランダってんだ。領主様の街で興行させてもらえないかね?」
一樹「一樹だ。どういう興行なんだ?」
ミランダ「ダンスショーだね。兎人族は脚が強いからね。なかなか見物だよ」
一樹「それは楽しみだ。ただ、今のところまともに稼動してるのは色街の舞台だけでね。一応一般向けの小劇場も場所は作ってあるんだがスタッフが揃ってないんだ」
ミランダ「色街かい。兎人族は強い男の精は欲しがるがそれ以外はお断りでね。見せるのはいいが売りはやらないよ?」
一樹「その辺りは大丈夫なはずだ。踊り子ギルドでしっかり区別するように言ってある」
ミランダ「それならいいんだが。一応小劇場ってのも見せてもらえるかい?スタッフのほうはこっちで手配しても構わないかね?」
一樹「むしろそうしてもらえると助かる」
普通の劇場なら信用できないスタッフに設備は触らせられないだろう。
だが、うちの劇場はダンジョンの地上部だから多少痛めても問題ない。
興行経験者にスタッフを集めてもらえるなら願ったりだ。
ミランダ「じゃあ、そうさせてもらおうかね」
踊り子3「あたしはキャロットだよ。いっぱい赤ちゃんつくろうね!」
一樹「あ、ああ、よろしく」
踊り子1「あたしはジンジャー、覚えといてね」
踊り子2「あたしはラディッシュっていうの。約束、忘れないでね」
一樹「ああ、わかった。よろしく頼む」
兎人族は野菜の英語名なのか?
こっちも地球人の影響を強く受けてそうだな。
ミランダ「ところでその小劇場ってのは何人くらい入るんだい?」
一樹「客席は500席ほどだな」
ジンジャー「あら、おっきぃわねー」
ミランダ「ほんとだよ。小劇場っていうからには、大劇場もあるのかね?」
一樹「残念ながらまだ予定の段階だ。そっちは2500席ほどの予定だ」
キャロット「すっごーい!」
ジンジャー「それってあたしたちも使えるの?」
一樹「ああ、もちろんだ。だが、色街以外ではあまり色っぽいのは駄目だぞ?」
キャロット「はーい!」
ミランダ「それで、小劇場の利用料は如何程なんだい?」
一樹「それはまだ決めかねているところだ。将来的には1日いくらで固定にしたいんだが、当面は売り上げの3割程度にしようかと考えてる。あと税が1割だな」
ミランダ「つまり、売り上げの4割を納めろってことだね?」
一樹「そうだ。ちなみに色街では税が2割になる。その代わり踊り子は定期健診と職業訓練が受けられる。というか、義務だな」
この世界では踊り子と娼婦はあまり区別されていない。
色街で働く踊り子なら、売りもやらされる可能性は高い。
申告が踊り子専業であっても、娼婦同様健診を受けさせている。
ミランダ「性病が蔓延るのを防ぐのと、引退後のために手に職をつけさせてくれるってことかい?随分と手厚いんだね」
一樹「そうだな。実際、長く続けられる商売でもないだろう?」
地球できいた話だと30歳くらいで一線を退くダンサーが多いらしい。
娼婦だって年齢が高くなれば客は取り難くなるだろう。
ミランダ「そうだね。もっとも、兎人族に関しちゃその心配は要らないよ」
一樹「そうなのか?」
ミランダ「ああ。おや、門が見えてきたね」
一樹「そうだな、ここまで来たらもう護衛なしでも問題ないか」
ミランダ「そうだね、ありがとよ。ところで、さっきの小劇場だがね。遊んでるならあたしらに仕切らせちゃもらえないかい?」
『経済特区』の小劇場はダンジョンの地上部として大枠は作った。
だが、スタッフや内部の細かい設備、調度品などが揃っていない。
興行経験者に仕切ってもらえるなら願ったりだ。
クリスに言えば王都辺りから経験者を連れてきてくれるだろう。
しかし、できれば公爵の息のかかっていない者を設備管理者にしたい。
だが、今会ったばかりの一座を信用していいものなのか?
一樹「設備管理者を探しているのは確かだが、俺一人で決めるわけにもいかないな。それに、まずはうちの領民になってもらう必要がある」
ミランダ「どうすりゃいいんだい?」
一樹「現在の国籍を捨て、俺への忠誠を誓ってもらう。その上で俺の指示や領の規則に従う事、働いて税を納めること。採用するかどうかはその後だな」
ミランダ「なるほど」
ジンジャー「ねね、領内に兎人族の集落ってあるの?」
一樹「いや、今あるのは人間族と鬼族の村だけだな」
ジンジャー「じゃあ、今から作るのは大丈夫?」
一樹「兎人族だけの村が欲しいって事か?」
ジンジャー「そそ。だめ?」
一樹「今は人間族だけだが、できればいろんな種族に仲良く住んで欲しいと思っている」
ジンジャー「そっかー」
ミランダ「兎人族が子育てするための建物とかだけでも駄目かい?」
一樹「それくらいならできるかもしれないな。家賃はもらうことになるが」
ラディッシュ「やったー!」
一樹「なぜ兎人族専用に拘るんだ?」
ミランダ「あたしは王国に未練なんかないからいいんだけどね。兎人族は兎人族だけの集落で子育てするしきたりなのさ」
一樹「ほう」
養育費も相続権も要求しないとはそういうことか。
ということは、逆に親権とか面会権も無いのかな?
キャロット「それにほら、あたしたちってかわいい子多いでしょ?」
一樹「まあ、そうだな」
自分で言っちゃうかね。
まあ、確かに3人ともかわいいけどさ。
キャロット「だから、兎人族の子供って誘拐されやすいんだって」
一樹「わかった。そういうことなら子育てに限り兎人族専用区画を設け、俺の直属兵を護衛に付けよう」
キャロット「やったー!」
例の山賊どもも兎人族が売れると言っていたか。
黒幕の王国貴族の好みではなかったらしいがな。
なんにしても、誘拐と人身売買がけっこう行われているようだ。
ジンジャー「ありがとう!そういうことなら誓っちゃう!一生の忠誠を誓っちゃう!」
ラディッシュ「あたしもー!忠誠を誓いまーす!」
2人が抱き着いておっぱいを押し付けながら俺の頬にキスをする。
相変わらずリアクションが大きい。嬉しいような恥ずかしいような。
キャロット「あたしも!あたしもちゅーする!」
2人のキスを見てキャロットがぴょんぴょん跳ねている。
俺はキャロットが俺の頬に届くように前屈みになった。
するとキャロットは俺の頬に両手を添えて、唇を重ねた。
更にぺろりと俺の唇を舐める感触・・・え?あれ?
キャロット「あたしもカズキ様のとこの領民になるー!」
一樹「そ、そうか。歓迎するよ」
キャロット「よろしくねー!」
一樹「じゃあ、身分証の発行はあそこの列に並んでくれ。発行料は就労用の滞在券なら銀貨1枚だが、領民になるなら無料だ」
ミランダ「あいよ。世話になるよ」
一樹「ああ、よろしく頼む」
さて、風変わりではあるが領民が増えてくれるようだ。
代わりに専用の育児施設を作ることになっちゃったけどね。
そういえば家賃は誰にどう請求すればいいんだ?
兎人族協会みたいなのを組織してもらえばいいのかな?
種族への帰属意識が強いみたいだからそれで大丈夫だろう。
あとは小劇場の件はアウラエルに相談してみよう。
兎人族のダンスはどういうものなんだろうな?
衣装や口ぶりからするとジャズダンスとかタップダンス系?
小劇場付属の練習場で行うダンス教室の件も頼んでみよう。
将来的にはバレエとかミュージカルみたいなのもやって欲しいな。




