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第69話 訓練

色街の管理についてはマティルデたち踊り子ギルドに頼むことにした。

踊り子ギルドに期待する主な役割は踊り子や娼婦たちの保護だ。

色街での契約は全て踊り子ギルドを通し、悪質な契約を弾いて貰おう。


また、従事者の定期健診や労働状況のヒアリングについて周知してもらう。

労働状況のヒアリングについては踊り子ギルドの方でやってもらおう。

そういう業界の内情は良く知らないし、許容範囲とかよく分からないしね。

管理人については頭を悩ませていた所だったから助かる。

将来的には監査制度も作りたいが、当面は俺とアウラエルで確認しよう。


定期健診については領主体で、アウラエルたちにやってもらう。

一般領民は年1回の予定だが、職業が職業だから2ヶ月に1回とする。

全身の皮膚を確認し、痣や傷などといった暴力の痕跡がないか確認する。

また、大事なところの内部も擦過傷や炎症、異臭などがないか確認する。


この辺はアウラエルと卯月、皐月に任せるつもりで居た。

しかし、アウラエルから俺も一部担当するよう言われてしまった。

俺の生体操作魔法の基礎訓練を兼ねて、ということらしい。

ひょっとしてアウラエルの仕事が多すぎると暗に抗議されてる?


ただ、性病リスクの高い娼婦たちはアウラエル達が担当するそうだ。

俺が担当するのは色街で働いてはいるが踊り子専業の女の子たち。

踊り子専業なら健康的な問題は基本的にはないはずではある。

ただ、場所が場所なのでこっそり売春させられている可能性もある。

或いは暴力でエッチなダンスを強要されている可能性もあるか。

俺はその辺の可能性を考えて暴力や性病の痕跡を探すというわけだ。


アウラエルかマティルデがうまく説得したのか、みなさん協力的で助かる。

緊張している場合には「まどろめ」の魔法でリラックスしてもらった。

一番困ったのはむしろ俺の方がひどく緊張してしまうことだ。

踊り子というだけあって若くスタイルのいい女の子が多い。

医者になれば女体もモノとしか思えなくなるとも聞くが、その域には無い。

というか、そういう心境にはあんまりなりたくは無いかな。


踊り子ギルドにはダンス教室への講師派遣もお願いした。

ダンス教室は『経済特区』の小劇場兼演劇練習場でやってもらう。

とりあえずはストレッチと基本ステップを中心とした初級クラスだ。


初級の受講と自主トレ用の共同練習室利用は月額銀貨1枚の定額制にする。

ただし、俺の領の劇場でダンサーとして働いている者は無料。

といっても、今のところ色街のエッチなダンスホールしかないんだけどね。

一応2種類あって、片方は際どいながらも着衣のまま踊るホールではある。


いずれは『経済特区』の東側に真っ当な大劇場を作る予定で居る。

コンサートホールも作る予定だからバックダンサーの需要も出てくるだろう。

それに備えてのダンサー育成政策というわけだ。

そんなわけで、うちの領民たちは無条件で受講も利用も無料だ。


中級・上級クラスに関しては系統の違いや講師の好みもあるだろう。

その辺の価格設定や生徒募集は個別にやっていくことにする。

王都からも客を呼べるような踊り手が育ってくれる事を期待したい。


訓練といえば、鬼族たちとの試合形式の稽古は今も続けている。

カシには未だに速度強化なしではカエデと二人がかりでも1本取れない。

経験年数が違いすぎるから仕方ないのだが、一応の進展はあった。

俺の攻撃のほとんどはかわすか往なすかされている。

しかし、たまにだがカシが木刀で受ける場面も出てきたのだ。

魔力で攻撃力を強化した実戦でなら、太刀を折れるかもしれない。


ちょっとだけ速度強化ありの状態で、ケヤキの長巻風の木刀とも試合をする。

長巻を振り回されると、60cmの棍棒では間合いに近づくことすら難しい。

本体を狙いつつも、たまに武器破壊を狙って棍棒を木刀にぶつけてみる。

可動範囲が広くて狙いがつけにくいが、たまに当てられるようになった。


武技に関して言えば、俺はこの世界の戦士たちに大きく遅れをとっている。

10年以上も修行している相手に数ヶ月で技術が追いつくはずもない。

しかし、単純なパワーとスピードなら『聖騎士』さえ凌駕しているらしい。

ならば無理に敵本体を狙うより、ガードの上から武具ごと破壊しよう。

そのように方針転換をしてから、この稽古にも手応えが感じられてきた。

これなら今後は近接戦闘をあまり避けなくてもいいのかもしれない。


格下の相手ばかりさせるのも悪いので、俺も時々速度強化高めで相手をする。

これであちらも『聖騎士』など超常の敵を想定した訓練になるだろう。

いや、『聖騎士』は速度はともかく剣技は俺よりずっと上なんだっけ?

俺以外の『魔族』を想定した訓練ということになるのかな?


あと訓練といえば、おっぱいの引き締め魔法も残っていたな。

なんとか発動できるようにはなったが、忘れないように復習も必要だ。


正確には靭帯を縮める魔法で、手足に使えば相手の動きを抑制できる。

戦闘中には使いにくそうだが、逃走抑止とかには使えそうだ。

常に縄を持ち歩くのも手間だし、罪人が相手でも全員殺す訳にもいかない。

相手には数週間のストレッチを強いる事になるが、そこは頑張ってもらおう。


おっぱいの引き締め魔法はアウラエルが完全予約制でたまに施術している。

1回銀貨10枚と高額ながら、予約はたいてい埋まっているようだ。

貴族や豪商、そして踊り子や娼婦に人気の高いサービスだという。

色街の女たちにとっては売り上げに大きく影響する要素であるらしい。


その客の一部を条件付でこちらに回して貰い、俺が銀貨1枚で施術する。

条件は俺のスケジュールに合わせるとか、失敗しても文句言わないとかだ。

練習で手足の靭帯を縮めるわけにも行かないから、こういう練習法になる。

だが、妙に言動が色っぽい客が多いのはなぜだろう?


この人選の裏には何かアウラエルの意図があるのだろうか?

一応俺はここの領主で権力者という立ち位置にあるはずだ。

なら、今後スパイを含めて俺に色仕掛けをしてくる者も出てくるだろう。

精神力を鍛えてそういった誘惑を撥ね退けろということだろうか?

それとも単に合意の上なら遊んでOKということか?


どちらにしてもスパイとか手を出すとやばい女は含まれて居ないのだろう。

せいぜい小金をせびられる位で、それを教訓とするという事かも知れない。

まあ、その場合はアウラエルを失望させてしまうという事にもなるのかな?

だが、逆に単に俺に楽しませようと思っているとしたらどうだ?

手を出さないのは誘惑する女にも手配したアウラエルにも失礼か?

とりあえず保留にして、努めて淡々と業務かつ復習をこなすことにする。


ダンサーの育成もそうだが、治癒術師の育成も進めないといけないな。

とりあえず開拓村&経済特区用に既存ガーディアンのコピーを召喚しよう。

治療担当で卯月’、皐月’、ウィセル’、サジタエル’だ。

ついでにハーブで解決できそうな問題を探す担当でマーガレット’。


治癒術師の育成は時間かかりそうだし、とりあえずガーディアン増やすか。

名前については月名シリーズの残り7つを全部それに当てるかな。

育成といえば、学校の教員も何とかしないといけないな。

今は字が読める大人たちに交代で読み書きの授業をしてもらっている。

託児所もとりあえず育児経験のあるおばさま方にお願いしている状態だ。

職業訓練所も場所だけは作ったが指導員が確保できていない。


いや、そもそも街のことを全部俺が直接手配するって発想が駄目なんだ。

今の時点でもかなりアウラエルやクリスに頑張ってもらっている。

俺はもっと人を使うことを覚えないといけない。

こまごました実務はクリスに言えば公爵家配下の文官たちがやってくれる。

これでは実質公爵領だが、人間の管理については任せちゃってもいいだろう。


俺がやるべきは第一にダンジョンの防衛、そのための森の保護。

街を作ったのは人間との共存が目的であり、権力欲によるものではない。

だが、ここが本格的に王国領となれば『魔界』全体のリスクにつながる。


ローゼンヴァルト公爵本人がどういう人物かは全く分からない。

なし崩し的にこの地を手中に収めようとしている可能性は否定できない。

しかし、一応キャシーとクリスたちからは誠実な印象を受ける。

それに基盤インフラをこちらが握っている以上、裏切りはしにくいはず。


マティルデを頼ったように、もっとキャシーとクリスを頼ろう。

その上で、俺がやるべきこと、俺にしか出来ないことは何なのか?

俺がやるべきは大枠の制度設計、基本方針の策定、ダンジョンの操作。

喫緊の課題は教育制度の拡充、治安維持対策、安定した税収の確保。


学校は年齢別の一括授業じゃなくて単位制にしたいな。

今の領民が既に年齢相応の教育を受けてるって訳じゃないだろう。

そうでなくとも、習得速度、得手不得手には個人差があるものだ。

成人してからの学びなおしとかにもその方が有効だろう。


となると、履修状況を管理するシステムが必要になる。

学生証・・いや、もっと広義に身分証明書を作る必要があるか。

それに治療師とか保育士とかの技能を紐付ければいい。


治安維持対策でも警察手帳みたいなのがあった方がいいよな。

砦の出入りも今は顔パスだけど、人が増えれば対応できなくなる。

犯罪件数のほとんどは再犯者って話もきくし、そのデータベースも必要か。

そういえばマリーは「魔力の感じ」がどうとか言っていたか。


一樹「なるみ、個々人の魔力の特徴を判別できる魔道具とかゴーレムみたいなのはできるか?」

なるみ「できるよ。ただ、遠隔だとちょっと精度は上げにくいから、直接触れた方がいいね」

一樹「その特徴と紐付けて身分証明のカードを作ることはできるか?」

なるみ「できるけど、戸籍管理をしろってこと?」

一樹「あと、クリミナル・データベースもだな」

なるみ「んー、それならなるみの分身というか、助手が欲しいかな。毎回なるみが直接照合するのも手間だしね」

一樹「それもそうだな。どうすればいい?」

なるみ「そういうゴーレムをデザインして召喚すればいいよ。魔力の特徴から個人を判別できればいいんだよね?」

一樹「ああ。それに氏名、性別、生年月日に住所、学校での単位の取得履歴、資格・免許一覧、あと犯罪歴なんかも紐付けてくれ」

なるみ「おっけー。都市1つ分、仮に最大100万人として戸籍管理サーバが2億ポイント、照合端末が300万ポイントかな」

一樹「けっこうでかいな。まあ、今ならなんとか出せないこともないか」

なるみ「ID発行マシンは5000万ポイントくらい。あと、サーバはバックアップ用に複数あった方がいいよ」

一樹「了解した。なんとかやりくりしてみよう」


今更な気もするけど、領の運営で戸籍管理は基本だよね。

出入りの多い商人とかにもID発行すれば通行がスムーズになるだろう。

人口と人の流れが増えれば、おのずと税収もあがるはずだ。


サーバは3台作り、3つのダンジョンのコアルームに置くことにした。

激しい戦場になりうる場所でもあるが、これ以上安全な場所も思いつかない。

サーバには一応魔道防壁の展開機能もあるらしいし、簡単には壊れないだろう。

ただ、どういうわけか人型でゴーレムなのに血色のよさそうな肌色をしている。

1/6スケールならぬ2.5倍スケールの美少女フィギュアといったところか。

メガネをかけたねこ耳ロリメイド、ツインテールに絶対領域、デジャ・ヴュ?


一樹「どっかで見たようなデザインだな」

なるみ「ふふふ、それだけじゃないよ?冷却ファン出力最大!」


ニーソックスと足の隙間から上に向かって空気が噴出される。

ミニスカートが風をはらんで膨れ上がり、そのままひらりと舞い上がった。


なるみ「はい!ぱんつは水色のしましまにしときましたー!」

一樹「せんでいい!」

なるみ「だってー、なーんかいつまで経ってもしまぱんメイド喚ぶ気配がないんだもん」

一樹「ああ、そうだったな。せっかく考えてくれたのにすまん」


そういえばこれは最初に召喚しようとしたメイドさんか。

なんだかんだで結局召喚しないままここまで来てしまった。

召喚しようと思えば出来るが、現状では街の娘を雇うべきだろう。

若い娘たちの働き口は少しでも増やしておきたい。


一樹「しかし、見た目が幼女なのに3mくらいあるのはなんか異様だな」

なるみ「でも、その分ぱんつが見えやすくなったでしょ?」

一樹「いや、それ必要?」


小さな女の子をそのまま巨大化したせいか、スカートの裾は俺の胸の高さだ。

これではちょっとした拍子にパンツが見えてしまうだろう。

本来の大きさなら腰の位置がずっと低く、気になることもないんだろうに。


なるみ「大きいと萌えないかー。まあ、照合端末はちゃんとちいさい女の子だから安心してね」

一樹「安心の意味に齟齬を感じるが・・・。ところで、これはズボンに換装出来ないのか」

なるみ「いやー、このスカートは放熱板も兼ねてるから無理だよ」


すると、人口が増えて負荷が上がるとスカートはずっとひらひらしてるのか?

いや、ゴーレムのパンツが見えたからどうなんだという話ではあるんだが。

街に置く端末側は普通の女の子サイズらしいから気になることもないだろう。


照合端末はスピード重視で駅の自動改札みたいなボックスタイプも作ってある。

移動が必要になった場合には脚が生えて自律走行も可能だ。

メイドタイプは砦の予備窓口と、劇場やホテルなんかで働いてもらう予定だ。

手作業は非効率かもしれないが、メイド姿のねこ耳少女が出迎えるというのは和みそうだ。


ただ、『勇者』との決戦の場に巨大なねこ耳ロリメイドがいるのはどうなんだ?

いや、そうならないための街づくりとダンジョンのデザインなんだけどね。

今はまず、全員のID発行と教育制度の拡充を頑張っていくとしますか。

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