第45話 砦
アーネストさん一行と『白百合』の3人は王都に帰っていった。
谷の入り口の王国軍が撤退するのを数日待った後のことだ。
彼らは王国側の人間ではあるのだが、敗残兵に絡まれるのは避けたい。
マリーとは当然だがその後これといった進展はなかった。
カフェの店員さんがかわいかった、みたいな程度の話だ。
なるみたちにからかわれて変に意識してしまったが、恋とかではない。
戦闘も一段落したので、今のうちに町の開発を進めていこう。
防衛力の強化に先立って、栽培人、木こり、大工を召喚した。
姿はすでにメインダンジョン周辺で働いているものと同じだ。
開拓村用はそれぞれローズ’、ミカエル’、ガブリエル’とした。
場所が離れているので、同じ人物がいても特に問題は起こらないだろう。
先日の戦闘で荒れてしまった山林は思い切って切り開くことにする。
今ある砦より王国寄りの場所なのだが、新たに街を作ることにしよう。
薪と木材もこれでかなりの量が確保できるはずだ。
最初は、今ある開拓村を交易都市にしたいと考えていた。
そのためには様々な人間が自由に行き来できる環境が望ましい。
しかし、領の安全のためにはしっかりした入国審査と検疫が必要だ。
そこで、俺は入国制限を2段階に分けることにした。
谷の入り口から開拓村の砦までが交易のためのエリアだ。
ここまでは簡単な入国審査だけですぐ入ることができる。
倉庫やホテル、レストランなどなども充実させていく予定だ。
そして開拓村のあるエリアへは厳しい入国審査と検疫が必要になる。
砦の前に関所を設けてしっかりと領民を守れるようにしたい。
もっとも、制度も人員もまったく確保できていない。
引き続き鬼族に警備をしてもらえるよう頼んでみるしかないだろう。
交易エリアは誰でも入れるのだから、砦は不要かとも思った。
しかし、簡単に蹂躙される場所では商人もよりつかないだろう。
交易エリアの防御のために、谷の入り口に砦を新設することにした。
街道沿いに谷の入り口に向けてダンジョンを約1km拡張する。
そして谷を塞ぐように地上階層を造り、2つ目の砦を造成した。
入り口に向かうことで谷が広くなり、砦の幅は200mほどだ。
構造としては1つ目と基本的には同じになる。
高さ3mの乙女の裸像タイプのゴーレムは今回は6体召喚する。
屋上に立たせる弓使いと魔法使い型はそれぞれ2体に増やした。
中央通路の両脇に立つ剣士型はここも2体だ。
壁に埋め込む固定型単機能ゴーレムは30体に増やした。
配置は1つ目とほぼ同じだが、正面を10体増やして18体とした。
鋼の矢とファイヤーストームとが各7体で、サンドストームが4体だ。
地下にはやはりオークを50体待機させ、中央通路への侵入に備える。
ただ、やはり魔物の軍勢では外聞が悪いのでヘルメットで顔を隠した。
遠めから見れば、いかつい体格の重装歩兵っぽく見えるだろう。
直接武器の回収とかはできないが、並べて威圧するのには使えるはずだ。
地上の警備についてはやはり鬼族のみなさんにお願いした。
同盟関係にあるし、この街道の警備は鬼族にとっても重要だ。
鬼族への依存度が高すぎる問題については引き続き検討しよう。
単純な戦闘だけならガーディアンでも問題はない。
しかし、一般人への対応を含めた平時の警備となると難しそうだ。
そこはやはり生身の兵士を雇う必要があるだろう。
今後の課題として考えていく必要がある。
差し当たってはガーディアンで防備を固めよう。
屋上にはビキニアーマーのアーチャーを20人配置した。
今日も裸体が林立する召喚演出を眺める。
必ずしも俺が見に来る必要があるわけではない。
なんとなく、見なければいけない気がするのだ。
20人分のおっぱいが露なままにゆっくりと回っていく。
女の裸を見るのが好きなのは否定しない。むしろ大好きだ。
しかし、同じ顔の裸体が並ぶ光景は、どこか狂気を誘うようにも思える。
それでも、見届けなければいけないという妙な義務感を覚える。
「女性型ガーディアンが召喚される所を見届けなくてはならない」
「同じ顔なら2体目以降はエロ衣装にしなくてはならない」
自分でも意味が分からないこの謎の義務感。
この2つの義務感が、自分の中でぶつかり合っているのを感じる。
それでいながら、この2つは根っこは同じであるようにも思える。
20人のお尻に虹色の光が走り、Tバックが現れる。
いや、今はそんなことより防備をどうするかだ。
召喚演出を眺めることとエロ衣装にすることは普通に両立できる。
それに、どちらも別にやってもやらなくても特に問題はないはず。
謎ルールについての内省は後回しでいいだろう。
ノーブラ&Tバックの女たちの体がゆっくりと回転していく。
最後に虹色の光は顔まで隠す兜とビキニアーマーを構築した。
アビーによれば、この辺りの女の子の夏服はビキニみたいな感じらしい。
それならビキニアーマーはたぶんセーフだろう。
けど、弥生のスリングショットはさすがにやりすぎたかな?
地下を守らせるにはいいが、砦用に別の衣装を考える必要がありそうだ。
さて、全長200mの砦に対してアーチャーが20人、10mに1人の割合。
平時の見張りとしては十分だろうが、有事の際の戦力としては頼りない。
魔力が貯まるのを待って追加の戦力を召喚していくことにしよう。
なるみ「かずきおにぃちゃん、なんか立派な馬車が来るよ」
見れば、落ち着いた色合いの上等そうな2頭立ての馬車が来ている。
少し前方で2人の騎士が左右を固めている。
どこかの貴族なのだろうが、何の用だろうか?
戦いに来たわけではなさそうだが、『魔界』に来るにしては護衛が少ない。
門衛の鬼族が呼び止めて手続きを求めている。
ちなみにここでは全員の名前と来訪目的を記帳してもらうことになっている。
また、煙草や大麻などの依存性薬物を持っていないことや病人がいないことも確認。
最後に領内ではこちらの規則と指示に従う旨の誓約書に署名してもらう。
この門では基本的にすべて自己申告のみで通れる。
明らかに怪しい者が居ない限りは持ち物検査などはしない。
とはいえ、貴族が相手となると、署名についてごねる者もいそうだ。
俺が降りていくと、ちょうど金髪の少女が誓約書に署名するところだった。
簡素ながらも質のよさそうな服装から察するに、彼女がこの一行の主なのだろう。
意外とすんなりと手続きを受け入れてくれたようだ。
貴族風の女「領主様とお見受けします。はじめまして、私はカトリーヌと申します。貴族の生まれではありますが、今は家名を名乗ることは許されておりません。キャシーとお呼びくださいませ」
一樹「はじめまして、一樹といいます。こちらにはどのようなご用件で?」
キャシー「一樹様の後宮にお部屋を頂きたいと思いまして」
一樹「後宮・・ですか?」
わけが分からない。
王都にいるアウラエルの差し金だろうか?
それとも何かの罠か?
キャシー「このような行き遅れで恐縮ではあるのですが、どうぞよろしくお願いいたします」
行き遅れというには若すぎる少女は、実に華麗に礼をした。




