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第37話 商人

鬼族からの応援部隊は300人に増員されることになった。

砦の出来があちらの想定よりもよかったのだろうか?

対人間族の防衛ラインに正式に組み込むことになったようだ。

鬼族は人間族より大柄で力も強いし、こちらには砦もある。

攻めて来るのが1000人程度なら、十分に戦えるだろう。


だが、あくまでそれは敵が正面からぶつかってきた場合の話だ。

砦は谷の街道を塞ぐ形でたっているが、左右の山が無防備だ。

俺はゴブリンアーチャーを50体召喚して山の中に潜ませた。

魔力が貯まるのを待って次はゴブリンソードマンを50体召喚する。


正面から軍にぶつけるとすれば頼りない構成ではある。

しかし、足場も視界も悪い山の中では相手も大人数の運用はできないはずだ。

そういう環境なら敵の動きを抑制するくらいの働きはできるだろう。


さらに魔力を貯めて今度はオークを50体召喚し、砦の地下に待機させる。

中央通路に突入されるような状況では見た目に構ってもいられない。

怪力のオークも、平地での戦いなら包囲されてつぶされてしまうだろう。

しかし、幅10mの隘路で、疲れを知らないガーディアンならどうか?

勝てないまでも、それなりの時間を稼いではくれるはずだ。


オークが待機しているのは中央通路の地下空間だ。

平時には通行人や一般の兵の目には入らないようにしておく。

今回使わずに済んだなら、どこか別のダンジョンか森の警護にでも回そう。


ちなみに壁で隔てられたその両脇には、一般兵用のベッドが並んでいる。

そして1階には食堂や浴室があり、2階は武器庫やアーチャーの待機室がある。

現在は鬼族の戦士20人が寝泊りし、地上部の警護に当たってくれている。

残り280人は敵の動きがあり次第駆けつけてくれる予定だ。


なるみ「かずきおにぃちゃん、商人さんとの話はまとまったみたいだよ」

一樹「そうか。なら、俺も挨拶くらいしておくかな」


村長たちの様子を観察していたなるみが声をかけてくる。

食料調達に関する商人との交渉は村長たちに任せていたのだ。

俺は相場とかわからないし、何が必要なのかも把握していない。

なにより、『魔族』の俺が前に出れば毒を入れられる可能性もある。


村長「ああ、領主様!ちょうどよいところに」

商人「商人のアーネストと申します。どうぞ御贔屓に」

一樹「領主の一樹といいます。よろしくお願いします」


俺はアーネストと名乗る商人と握手を交わす。


アーネスト「ご丁寧にどうも。これでも王都に小さいながらも商会をもっている身です。ご入用のものがあればぜひお声がけください」

一樹「商会の長が自らこんな辺境へ足を運ぶのですか」

アーネスト「変化は商機ですからな。この目でしっかり見ておきたかったのですよ」

一樹「それは困った。まだ何もお見せできるようなものがないのですよ」

アーネスト「一樹様はこの町をどうなさるおつもりで?」

一樹「ここから魔界に向けて山脈を横断する道を作ろうと思っています。そうすればここは、魔族、鬼族、人間族を結ぶ交易拠点になるでしょう」

アーネスト「それは壮大な計画ですな。ぜひ生きている間にこの目で見たいものです」


山脈の幅は15kmほどだろうか?

人力で道を作るなら数十年はかかる事業だろう。


一樹「遠からずお見せできると思いますよ」

アーネスト「そういえば、過去に一夜で城を建てた魔王もいたという話もありますな。誇張された話と思っていましたが、カズキ様もあの砦を一晩で作られたとか。魔族というのはすごいもんですな」

一樹「この件は俺が担当するので魔王様のようにはいきませんが、それでも春までには開通できる見通しです」


今のペースで魔力が確保できるならたぶん大丈夫だろう。

せっかくの人間族との通商の糸口だ、しっかり売り込んでおかねば。


その上でさらっとバックに魔王がいると匂わせておく。

実際にはぜんぜん繋がってないんだけど、人間族への牽制にはなるだろう。


アーネスト「そうですか!いやあ、いい話をききました!来てよかった!ぜひ、アーネスト商会をご利用ください!」

一樹「そう言ってもらえると助かります。ぜひに」


改めてアーネストさんと握手を交わす。

だが、やはり聞かずにはいられない。


一樹「でも俺は魔族ですよ?魔族相手に商売して大丈夫なんですか?」


自分では人間のつもりだが、こちらの世界で俺たちは『魔族』と呼ばれている。


アーネスト「ははっ、そんな細かいこと気にしていたら商売なんてできませんよ」

一樹「そういうものですか」

アーネスト「カズキ様、人間と魔物の見分け方て分かります?」

一樹「難しい質問ですね」

アーネスト「他人の持ち物が欲しくなった時にどうするか。魔物は奪う。人間は買う。どうです?」

一樹「なるほど、わかりやすい」

アーネスト「そうでしょう?お金は人類最大の発明。お金こそ文明の証です。お金を持ってくるなら相手がゴブリンだろうがスライムだろうが商売しますとも」

一樹「それはたくましい」

アーネスト「たくましくなきゃ商人なんてつとまりゃしませんよ」


欲しいものを金で買うのが人間か。

死体から剥ぎ取った金で買う奴はなんなんだろうな?

魔物か?いや、金を奪うなんて、それこそ人間だけか。


アーネスト「ところで、カズキ様の方でご入用なものはありませんかね?たいていのものはご用意できますよ?」

一樹「欲しいものはいろいろありますが、あいにくと人間界のお金は持ち合わせが少ないもので」

アーネスト「おや?金貨を100枚ポンと出されたと聞きましたが?」

一樹「ええ、おかげですっからかんです」

アーネスト「それは気前のよいことで」

一樹「商品の買取をお願いすることはできますか」

アーネスト「もちろんですとも。今お見せいただくことはできますか?」

一樹「ええ、あちらに準備しています」


俺はアーネストさんを村の北側の拠点に案内する。


なるみ「かずきおにぃちゃん、お金ならまだ金貨で200枚以上残ってるよ?」


なるみが俺の耳元に声だけ飛ばしてくる。


一樹「それは今後のためにとって置こう」

なるみ「ん、わかった」

アーネスト「すみません、なにかおっしゃいましたか?」

一樹「いえ、なんでもありません。こちらです」

アーネスト「ほほう、なるほど、魔界産の品物ですな。今の時期は少なくなるんで助かりますよ」

一樹「こういうものも時期がありますか」

アーネスト「ええ、この時期は冒険者たちも魔界に行きたがりませんからね」

一樹「まあ、寒いですしね」

アーネスト「ええ。それに冬場は食料の現地調達が難しくなるのも大きいらしいですね。防寒具に燃料に食料で荷物がえらいことになります」

一樹「なるほど」


最初のダンジョンへの侵入者がこのところ少ないのはそのせいか。

春までにはまた改装してあっちの防備も強化しないとな。


アーネスト「買い取り金額ですが、金貨14枚で如何ですか?」


アウラエルの見立てでは14~16枚ということだったか。

買い叩かれているというほどではないが、安めの見積もりだな。

出入りの商人が増えたら売る先を変えないといけないかもな。


一樹「お任せします」

アーネスト「おや、交渉なさらないので?」

一樹「生憎と商売には疎いもので。アーネストさんを信用しますよ」

アーネスト「これは参りました。値上げ交渉をしてくると踏んで低めの値段を提示したのですよ。しかし、そう言われては仕方ありませんな。目いっぱい出させて頂きましょう!そうですね・・・、金貨16枚と銀貨3枚でどうです?これ以上出す商会はまずないですよ?」

一樹「ではその値段でお願いします」

アーネスト「かしこまりました。では、改めてご入用の物を伺いましょう」


俺はアーネストさんの馬車に残っていた油と砂糖を全部買い取った。

追加のハムル油を注文したら、ハムルの苗も届けてもらえることになった。

油は食用、石鹸用に加え、砦の防衛線で敵に投げつけるのにも使える。

砂糖は料理用に加え、果実などの保存用に使う。


魔道具用のルビーについても探しておいてもらうことにした。

ちなみに真珠の方は必要になったら鬼族のほうから買えそうだ。


アーネストさんを見送った俺は、拠点の地下へと向かう。

ただ広いだけの土壁の空間は、L字型に折れて砦方面に向かう。

L字を折れて街道の地下を進むと、途中で行き止まりになっている。

そこには白い石造りの四角い建物があり、正面には両開きの扉がある。

この村の砦を含むサブダンジョンのコアルームだ。


今のところ村人たちはおとなしく俺に従っている。

フローレンとナターシャに屋上から見張らせてもいる。

しかし、いつまでも無防備なままにもしておけないだろう。


一樹「なるみ、剣士型ガーディアンは何人召喚できる?」

なるみ「手持ちの魔力だと33人だね」

一樹「そうか。ではジェシカとエイミーを16体ずつだ」

なるみ「また同じ姿にするの?」

一樹「そうだ。それぞれ最初の1体はオリジナルと同じ格好でここの門衛に立たせる。記憶を同期させて同一人物として振舞わせることはできるか?」

なるみ「できるよ」

一樹「では、表向きの名前はそのままジェシカとエイミー、区別するときはジェシカ’とエイミー’とでもしておくか。残りはバイザー付の兜とビキニアーマーで、名前はフローレンのときと同じようにジェシカ001とエイミー001から連番だ」

なるみ「おっけー!じゃあ、かずきおにぃちゃん、きっかけよろしくー」

一樹「いいだろう!サモン・・・・」

なるみ「ん?」


女性型だからソードマンじゃおかしいのか?

ソードウーマン?いや、ウィーメン?なんか語呂が悪いな。


一樹「えーと、サモン・ソードガールズ!!」

なるみ「めんそーれー」


ピシッ。

俺の芝居がかった仕草に応え、放電のエフェクトが走る。

それとと同時に中空に無数の光の繭が浮かぶ。

そしてその一つ一つに女の裸体が浮かび上がる。

だが、そのほとんどは同じ顔で、顔は全部で2人分しかない。

まるで万華鏡でもみているかのようだ。

きっと2種類の顔はぞれぞれ1人だけが実体で、残りは鏡像なのだろう。


形のよい胸を見せ付けるかのようにたくさんの裸体がゆっくりと半回転する。

胸の周りに虹色の光が走り、ブラジャーを構築する。

いや、ブラジャーがついたのは実体だけで、鏡像の胸は露なままだ。

続けてお尻を見せ付けるかのように32人の裸体がゆっくり半回転する。

腰周りに虹色の光が走り、それぞれのお尻をパンツが包む。

いや、しっかり包んだのは実体の分だけで、鏡像の方はTバックか。

さらに半転しながら全身を虹色の光が包み、装備を完成させる。

実体は普通の皮鎧で、鏡像の方は肌も露なビキニアーマーだ。

そうだ、実体と鏡像じゃなくて、本人とその人形だったっけ?


ジェシカ’「ジェシカ一同、着任いたします」

エイミー’「エイミー一同、着任いたします」


そうだった、この二人もコピーだったな。


一樹「ジェシカ’とエイミー’は交代で地上の入り口を見張れ。残りは地下の防衛だ。もし許可なく地下まで侵入する者がいたら、生かして帰すな」

剣士たち「はっ!」

一樹「では頼んだ」


剣士たちが散開し、それぞれ持ち場につく。

「生かして帰すな」か、まるっきり悪役の台詞だよな。

でも、こんな光景見せられないしね。

というか、なんでこんなエロ衣装にしたんだっけ?


ま、いいか。要は不法侵入なんかしなけりゃいいんだよ。

そうすりゃ、俺だって殺さなくて済むんだ。

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