男の友達
……炎を纏う剣、か。
ダニエルさんの持つ剣に目を向ける。
魔法の効果を自身の持つ武器に付加させる術技があるのは知識としては知っていた。
物語の本の中でも、主人公などは多くがこの手の術技を持ち、そしてドラゴン討伐などを成し遂げるのだ。
魔法理論としては治癒の魔法の効果なども付加させることができるらしいが、現実的にはほぼ全ての場合において攻撃系の魔法が付加される。
そりゃそうだよね。
剣で斬り付けておいて治癒の魔法を発動させても意味がない。
治癒魔法を付加させるのは、紙や布などに戦闘の前に予め……という形が多いらしい。
好きな時に取り出して自身の治癒を行うのだ。
それなら魔法を使えない人間にも魔法と同じことを行うことができるからね。
それにしても、ダニエルさんはどこまで本気なのだろうか。
魔法を付加させた剣で人を斬りつければ大怪我は必至だし、下手をすれば致命の一撃になる。
さっきダニエルさんはこの決闘を茶番と言った。
……本気で戦う気はないのだろうか?
でもだとすれば剣に炎を纏わせるのはどういった意図があるのか。
ダニエルさんは剣に魔法を付加させることができるのは家系によるものだとも言っていた。
学院でそれを行うことができるのは自分1人だけだとも。
そんな術技を披露してまで茶番の決闘に使うことがあるのだろうか?
いやでも…………
「主様、あれこれ考えるのは無駄じゃ。相手の意図など実際に剣を合わせてみなければ分からんよ」
「うん、そうだね叢雲。それにこんな珍しい術技を使う人と1対1の戦いができるなんてのは滅多にない経験だ」
「その通りじゃ。主様にとって必要なのは経験。それもできれば色んなタイプの人間との戦闘経験じゃ。願ってもない相手じゃぞ」
「よし、それじゃあいくよ。さっきの戦いと同じように呼吸と歩法を意識して戦ってみる」
先程の青髪の生徒との戦闘を思い出す。
『自分と相手とをセットにして世界を把握する』
という感覚。
自分1人だけを把握してもダメ。
相手だけを把握してもダメ。
自分と相手のいる空間を1つの世界として認識するような、不思議な感覚。
さっきはそれが何となくだが実践できた。
自分の呼吸に足運び。
相手の呼吸に足運び。
骨の動き、筋肉の動き、皮膚の動き、鼓動、その他を自分の中で認識する。
「うむ、いいの主様。それでいい。自分の動きだけを気にしてもダメだし相手だけでもダメじゃ。自分と相手のいる空間丸ごとを認識の下に置く。それが出来てやっと戦闘といえるものが出来るようになる」
「言うほど簡単じゃないけどね……多分、全体の1割も把握してないよ」
「そう簡単にできてたまるか。それに先は長いぞ。剣豪と呼ばれる者は、自分と相手どころか周囲全てを認識しながら戦う。隊を率いて戦う者ならば、それこそ小隊全員の動きを把握しながらな。戦士団の団長がいたじゃろ。あの者はそれくらい軽くこなすじゃろうな」
「雲の上の人の話はいいよ。今は自分と相手1人ずつで精一杯。それすら難しいんだからさ」
「そうじゃな。では、ダニエルと言ったか。相手の動きをよーく見るのじゃ」
ダニエルさんの筋肉が緊張する。
動き始める前にそれが分かる。
続いて筋も。そして皮膚も。
「くる!」
ダニエルさんは小細工なしの上段構えからの振り下ろしをしてきた。
くると分かっていても避けられるかどうかはギリギリ。
そう。
認識するだけでは意味がないのだ。
それに対応できるだけの身体能力と経験、それに技術が必要だ。
今僕にできるのは、全力で横に転がって避けることだけ。
「くうっ……!」
横に転がってもそれで攻撃が終わるわけではない。
ダニエルさんは振り下ろした剣はすぐさま薙ぎ払いの形で僕に向けてくる。
「主様の技術では避けても連撃は止まらん! 儂を使って剣を弾いて距離を取れ!」
叢雲が叫ぶ。
言われた通り、叢雲でダニエルさんの剣を受け、そのまま全力で後ろに下がる。
「ふう。距離は取れたの……あのな主様、避けるのにも技術が必要なんじゃ。その後の自分の動きと相手の動きを予想して避けなければ何の意味もないんじゃぞ。なんじゃ今のは。追撃してくれと言わんばかりに、相手の利き腕と逆方向に避けているではないか。相手がまだ未熟だから剣を受けることができたが、もっと上の人間が相手だったら二撃目で終わっておったぞ」
「しょうがないでしょ避けるだけで精一杯だったんだから……むしろ一撃目を避けられたことを褒めて欲しいくらいだよ。凄く速かったよ」
「ダメじゃぞ主様。相手は魔法を纏った剣を持っておるんじゃ。今の自分ができること以上のことをやるんじゃ。やろうと足掻くんじゃ。そうでなければ戦闘による経験なんぞ意味がない。素振りでもしてた方がマシじゃ」
「……戦いのことになると叢雲は厳しくなるなぁ……」
「当たり前じゃバカ主様。この世で主様よりも大切なものがない以上、戦闘なんぞで死なれてたまるか。戦闘なんてもんは生きるための選択肢のほんの1つに過ぎんのじゃ」
「よく分からないけど、頑張ってみるよ」
「ああ頑張れ。存分に頑張るんじゃ。それに今の一撃でダニエルという者の技量は大体分かった。次は筋肉が緊張した瞬間に呼吸を合わせて間合いを詰めてやればいい。それで終いじゃ。もちろん歩法には十分意識を向けるんじゃぞ」
「叢雲は簡単に言うなあ! ダニエルさんの実力はかなりのものだよ?」
「それでも、じゃ。うーん、あれで学院で5位以内の実力か……どうやら主様はエリスとワイバーンとの戦闘で相当に経験を積んであるようじゃな。多分……というか普通に勝てるぞ」
「ワイバーン戦なんて最後に叢雲を振り下ろしただけじゃん! あれで経験になったとはとても思えないんだけど」
「バカじゃな主様は。ワイバーンと対峙し剣を振り下ろすことがどれだけの経験になるか分からんか。大立ち回りなどしなくとも、この世のほとんどの人間がしたことのない経験をしておるんじゃぞ。少なくともあれより強い存在と戦うことは、迷宮深部に潜らん限りまずないじゃろ」
「まぁ、確かにそうだろう……けど……」
「度胸という面だけならもう相当なもんじゃろうよ。竜種と相対す以上の脅威なんぞまずない。人間相手ならば誰が相手だろうと臆す必要などない」
「え、そんなに強くの僕?」
「いや、臆さないというだけで主様より強い人間は世界には100人単位でゴロゴロいるぞ」
「意味が分からない!」
「分からんか? 戦闘で臆する怯むというのはそれだけで実力を大きく縮めてしまう。発揮できんようになる。それは相当な影響があるんじゃぞ。臆さずに普段の実力を発揮するということがどれ程に大変なことか。だがワイバーンと対峙したことがあるという自信が、そうなることを防いでくれる。例え最後のトドメだけ漁夫の利的にブスっといっただけでもな」
「う、うん……漁夫の利……うん……」
「自信を持て主様。そしてその相手の動きを見て、臆さず怯まず最適の動きをしてみせよ。それで勝てる」
「分かったよ叢雲」
次にダニエルさんが攻撃に移ろうとした時に、筋肉の動き骨の動き皮膚の動き……それらを感じつつ最適な歩法でもって近づき、斬る。
それだけでいい。
燕返しも無拍子も不要。
基本の足運びだけに意識を集中させろ。
(今!)
ダニエルさんが動き始める前に、恐らくはダニエルさんにも分からない予兆が身体に現れる。
呼吸が見える。
どう足を運べばダニエルさんが対応できないかが見える。
叢雲を逆さに持ち直し、致命にならないよう力を加減してダニエルさんの腹部に叩き込む。
最適の動き、最適の力。
「な? なぜそこにいる……?」
ダニエルさんが崩れ落ちる。
戦闘続行は……できるのか? するのか?
「追撃はいらん。離れよ主様」
「了解、叢雲」
叢雲に言われた通り、後ろに飛び退きその場を離れる。
「うぐっ……さっきの戦闘で使っていた技か……? なんだ? 動きの認識を阻害する魔法を使えるのか……?」
「魔法ではありません。呼吸と歩法を工夫することによって今みたいなことができるんですよ」
「呼吸? 歩法……? なんだそれは? う……」
ダニエルさんは苦しそうにしながらも立ち上がる。
戦闘続行の意志があるということか?
気を抜きかけた僕は叢雲を持ち直す。
「いや、もう戦闘を続けるつもりはない……俺の負けだ」
ダニエルさんが宣言する。
見た感じはまだ戦えそうにも見えるけど……
「続けても今と同じことをやられたら対応できる気がしない。同じことを繰り返すだけだ」
僕の考えを見透かしたようにダニエルさんが言う。
確かに、対応できない技を相手が持っている場合には、対処方法がなければいくら続けても無駄だろう。
「ふう……ちょっとは自信があったんだけどな。炎の魔法剣も、剣を振る前に間合いに入られちゃ何の意味もねーな。しかも気付かれずに、ときたもんだ。反則だぜあれ」
「ありがとうございます。上手くいくかどうかは博打みたいなところがあったんですが、良かったです。なにせあまり人間相手に戦闘をした経験がなくて……」
「人間相手の戦闘をしたことがない? おいおい、なんだよそれ。さっきのお前の動きは百戦錬磨の達人の雰囲気を感じたぜ? 力を鍛えるだけじゃ辿り着けない、というか……その手の感じだ」
「あ、はい……ええと、なんというか……百戦錬磨の達人の技ではあるんです。あるんですが、それは自分の技術ではないというかなんというか……」
「うーん、よく分からねーな」
ダニエルさんが分からなくてもしょうがない。
女神の加護(極)で得た、武の極致とも言える術技である『無拍子』。
まだまだ僕にはそれを自在に操ることはできないけれども、無拍子の基礎である呼吸と歩法を駆使して戦ったのだから。
「ま、どちらにせよ俺の負けだ。それは動かない。夏希。お前の覚悟の程は俺が身体を通じて理解した。また、一方的に決闘を無理強いしたことについて、心から謝罪する。それと、俺が負けた場合には後ろにいる連中も納得してお前を受け入れるというのは事前に話し合っておいた。全員の総意だと受け取ってもらって構わない」
ダニエルさんが頭を下げる。
「頭を上げて下さいダニエルさん。謝罪される理由がありません」
「そうはいかねえ。決闘だぞ決闘。吹っ掛けたのはこっちだ。そして負けたのもこっち。お前には俺らを糾弾する権利がある。それに決闘の中で俺が死んでいたってそれまでの話だ。お前、峰打ち使っただろ?つまりもう俺の命はお前に握られたってことなんだよ」
「殺傷する必要がなかったからそうしただけです。それに、ダニエルさんと僕の認識は多分相当に違います。僕にとって、こういう形でもって僕を受け入れるかどうかを決めて下さったのは、とっても誠意を感じます。だってそうじゃないですか。こんなことする必要ないんですから。突然女神のコネで学院に入ってきた人間なんて、ずっと放っておけばいい。相手にする必要も義務もないんですから」
「いや、それはエンリケのやつがな? 必死に食い下がるもんで……俺としては決闘するつもりはなかったんだ……だから、それについて俺を評価されるのは筋違いというか……」
「それでも、ですよダニエルさん」
手を差し出す。
「これから宜しくお願いします、ダニエルさん」
「おう。宜しくな夏希。お前は覚悟を持って学院に入学してきた、俺らの仲間だ」
「ありがとうございます!」
ダニエルさんは僕の手を取ってニカっと笑った。
赤い髪の毛と、鍛え上げられた精悍な体づきと相まって、本当に爽やかな印象だ。
「ああ、それと……悪かったな。炎の剣なんてもんを使っちまって。一応言い訳しとくとな、もし剣がお前に当たったとしても治癒魔法の準備はしてあったんだ。後ろの連中の中には5人ばかり治癒魔法の得意なやつがいてな」
「気にしないで下さい。持てる武器を使うのは決闘なら当たり前のことです。それにしても、実際には初めて見ましたが凄まじい術技ですね。人間相手というよりも、モンスターを相手にする時に効果がある術技なのでしょうか? 防御力が高いモンスター相手にも、あの炎の剣でなら大きなダメージを与えられそうです」
「そうだな。人間相手なら普通に剣で斬り付けるだけでも十分だしな。お前の言う通り、この魔法剣の術技はモンスター相手に最大の効力を発揮する。戦士団を目指す人間としては願ってもないことだろ? 俺の親父も爺様も、この術技のお陰で戦士団の中でそれなりに活躍できたってわけよ」
「ダニエルさんのお父様も戦士団……? それでは、先日の迷宮からモンスターが出た時にも戦闘に出ていた……とか……?」
「ああ、もちろん出ていた。だがお前の心配は杞憂だ。死んだ戦士団にはうちの親父は含まれていない。ピンピンしてるぜ。ちなみにお前の戦いっぷりを近くで見ていた。だから……な、お前が何を斬ったのかも一応聞いてる。……他言無用で頼むぜ? 本来なら箝口令が敷かれてる内容だからな。身内とはいえ話しちゃダメなことだからな。酔っ払ってる時に、ちょいっと口を滑らしたんだよ親父が。すぐに『あっ』って顔になって話を逸らされたから、詳しいことは聞いてねーがな」
「なるほど……そうでしたか」
戦士団が戦った相手が、そして僕がトドメを刺したモンスターがワイバーンだということをダニエルさんは把握している。
……まぁ、戦士団の息子でもあり学院に身をおいて自身も戦士団を目指す以上は、いずれ知ることになっていただろう。
それに意味なく周りに吹聴して歩くタイプの人にも見えない。
それほど心配はいらない……と思う。
「僕にも夏希くんと離させてくれよダニエル」
そう言いながら、先程の青髪の男子生徒が後ろからこちらに歩み寄ってきた。
「僕はアズーレ・コロナ。よろしく夏希くん」
右手を差し出される。
できるだけの笑顔で僕はそれに応えた。
改めてみると、ダニエルさんとはタイプが違うけれど青髪の彼は……なんというか美少年だな。
優男、という表現は失礼になるのだろうけど、その表現が一番しっくりくる。
けれどもちろんのこと身体は徹底的に鍛えられてるんだけどね。
……ちょっと緊張する。
「よろしくお願いします。ご存知かと思いますが、夏希といいます」
「うん、もちろんよく知っているよ。出会いがこういう形になってしまったけれど、僕としてはこれから夏希くんと仲良くやっていきたいと思っている。決闘を挑んだ身で勝手な言い分かもしれないけれど、できればそうして貰えると嬉しい」
「もちろんです、アズーレさん。僕のほうこそ宜しくお願いします。あ、それと……ダニエルさんもアズーレさんも貴族様……ですよね。えっと……その……」
「気にしなくていいよ。この学院では親の爵位は関係ない。そういう場所だからね。伯爵であろうと公爵であろうと、戦士団の試験に合格できなければただの人。それが学院だから。外の世界では殿下と呼ばれるような人間も中にはいるけれど、ここじゃただの生徒同士。呼び方も好きにして貰って構わないよ」
「そう言って頂けると嬉しいです」
「それに夏希くん、君は女神様のご子息じゃないか。確かに爵位は持っていないかもしれないけど、ある意味貴族よりも尊い血筋だという考え方もできるよ?」
「いえ、母親のことは……確かに女神ですけれど……」
「ふふ、そうだろう。子供が集まる場で、親のことはあまり持ち出したくないだろう? 僕達も同じさ。親の爵位も、夏希くんの親御様のことも僕達の間では関係ないということにしていこう。……ま、生徒の中にはあからさまにそういうのを持ち出してくる人もいるけれど、少なくともここにいる10人の中にはそういうのはいないと思うよ」
アズーレさんが他の8人の生徒たちに目を向ける。
全員が、親指をグっと差し出してニカっと笑ってくる。
あれ、なにこの連帯感。
「ああ、それとな夏希。喋り方も普通でいいんじゃないか? 親も爵位も関係ないって確認したんだろ? じゃあバカ丁寧な喋り方はかえっておかしいだろーが」
ダニエルさんが提案してきた。
「ダニエルさん……え、あ……うん……そう?」
「普通に、他の男友達と同じように喋りゃいい」
「……他の男友達……」
「そうだ。男のダチ相手に喋るのと同じにすりゃいいんだよ。どうせこれからは毎日の付き合いになるんだ。かたっ苦しい喋り方じゃ肩が凝っちまうだろーが」
「あの……実は……同年代の男の友達ってのは初めてなもので……えっと……」
「…………え?」
「あの、労務場で年上の男性の労務者の方と話したことはあるんですが……僕と同じくらいの年代の友達っていなくって……あ、先日レジーナとは友達になったんですけど……」
「…………逆にすげーな。え……っと、なんだ、わざと男の友達を作るのを避けていたとか、そういう意味なのか?」
「そうじゃないんですよ。えっと、僕は……女神が母親じゃないですか。だから、女神3人とここから離れた場所でずっと暮らしてきたんです。女神3人と僕1人の4人だけで。あ、剣も1人いましたけど。ですから、そこから離れてこのトリネロに来るまでは、友達どころか男の人と話したこともなかったんです……変ですよね」
「……変ではあるけど……まぁ女神様の子供なんだから、他と違う人生だったんだろう。俺らには想像もつかない世界の話なんだろーよ。まぁいい。そんなことはこれから関係ないだろう。初めてだろうが100人目だろうが、俺たちはこの学院の生徒同士で、ダチってことだ。タメ語でいくってことでいいな?」
「……うん、もちろんだよ。これから宜しく、ダニエル」
「ああ、こちらこそだぜ夏希」
……うわー。
男の友達ができた。
しかも、なんというか『僕が考えていた男友達』のそのまんまの人だ。
少し粗雑で、だけど優しくて。
しかも話し方もタメでいいって言ってくれてる。
……うわーうわー。
しかも、ダニエルとアズーレの他にも後ろに8人いるよ。
もしかしてみんな僕と友達になってくれるんだろうか。
そうだと嬉しいなぁ。
どういう付き合いになるんだろう。
想像もつかないや。
レジーナの場合は、確かに初めての友達ではあるんだけど、女性ということもあってあまり緊張はしなかった。
今まで女神と暮らしてきたからね。
……男友達か。
緊張するなぁ。
バカな話とかするんだろうか。
下らない話とかするんだろうか。
……もしかしたら、たまには少しHな話とかもするんだろうか。
それって、それって……
すっごく、楽しそうだ。
いいなぁ、そんな生活。
憧れていたそのまんまじゃないか。
庭から出て、人間らしい生活をするという目標が、今日ここでその何割かが達成されてしまった気さえするよ。
ふいー。
「主様、主様。無事か?」
「あ、叢雲。何? 無事って?」
「なんだか主様の顔が物語に出てくるヒロインのようになっていたのでな。精神的な安否の確認をしただけじゃ」
「……なんだよそれ。僕は大丈夫だよ。正常だよ」
「そうか。ならいいが」
変なこと言うなぁ叢雲は。




