第九話『修羅場』
現在、人生で2回目の克駄天宮にいます。
弟のレイルの降臨の儀の最中です。
宮司さんが祝詞を読むと、翡翠が僕の時の5倍ぐらいの光量で光り始め、巻き起こった風と混じり合って光の嵐が起きました。
次に目を開けた時には、光を纏ったレイルが立っていました。
どうやら神助をいただけたみたいです。
宮司さんが狼狽えながらおっしゃりました。
「レ、レイル・ブレイクス、英神様の神助を得たり!」
そこからはミリア母さんが迅速でした。
家族全員で拝殿に一礼をし、颯爽と境内を出ました。
***
ラウルの時と同じく、ミリアが異次元のスピードで家族全員を連れて境内から抜け出した。
一息ついて周りを見てみると、ギャレクは顔が赤くなったり青くなったりと忙しそうにしていて、ミリアとラウルは嬉しそうにこっちを見ていた。
ラウルが話しかけてくる。
「英神様ってどんな方だった?」
そこからくるんだ。まあいいけど。
「洗練された魔力を纏っていらっしゃいました。さらに、すごく凛とされた方でして、美しかったです。」
レイルは、感じたままのことを言う。
「少年たち、そんなに私のことが知りたいかい?」
突然、背後から弦楽器のようのに響く声がかけられた。
「「!!!???」」
2人して体を飛び上がらせ、バッと振り返ると、そこには黒髪の美男が立っていた。
彼は、目を丸くして呟いた。
「…2人とも驚すぎじゃないかい?」
「「驚きますよ!!」」
ラウルに関しては初対面であるから尚更であった。
「神助をした神は、そのかけた人の子の周りになら顕現できるんだよ。」
神は人の心を勝手に読むこともできるらしかった。
「あ、貴方様は、英神様でございますか……?」
ギャレクが、さっきまで青かった顔を赤く上気させながら聞く。
「そうだ。私こそが英神である!」
英神様が堂々と胸を張って言った。
思わずギャレクがお手本のようなジャンピング土下座を決めた。
「愚息のような者に神助を与えてくださり、誠にありがとうございます!!もう私の人生にひとかけらの悔いもありません!!」
急に死んでもいい宣言がギャレクの口から飛び出した。
「いや、父さんにはまだ生きててもらわないと困る……。」
ラウルが本当に困ったように言う。
「ら、ラウルゥ、お前はいいやつだ……。」
涙を流しながらラウルの頭を撫で、ギュっと抱きつく。親の威厳というものをかけらも感じさせない状況であった。
「ま、まあ、父様。一回落ち着いてくだs…」「お前も!2人とも!我が家の誉だ!」
なんとギャレクを宥めようとしたらこっちにも抱きついてこられた。
英神とミリアに助けの目を向ける——と、一方は腹を抱えて笑っており、もう一方は穏やかな微笑みを湛えていた。
始まった瞬間にもうレイルの負けは確定していたようだった。
それが続くこと5分。
ガラガラという音が聞こえてきた。
「あ、馬車来ましたよ。」
ギャレクに抱き締められているせいか窮屈そうな声でそう言ったラウルの視線の先を見ると、確かに我が家の馬車が見えた。
レイルとラウルにしてみれば、救いの馬車であった。
もうすぐ馬車が俺たちの前についた。
一目散に馬車から飛び降りてきたイエルムさんとサフーリン先生は——
ギャレクが親の威厳を捨て去って息子2人に抱きつき、それを困った顔で受け入れている息子達。さらにその周りで笑っている見慣れた婦人と見たことのない神々しい男性を見て、
「「……修羅場?」」
とハモったのであった。




