第七話『初めての稽古』
ギャレクとサフーリンのなんとも締まらない模擬戦のあと。
家に帰ってきて2人は風呂に入ったり荷物を運び込んだりと忙しくしていた。
ひと段落つき、俺たちは今のテーブルに4人で集まって座った。
よし、とギャレクが、俺に笑顔で圧をかけてくる。
「さっきので十分だったかな?レイル君。(圧)」
「はい…。すいませんでした。」
「分かればいいんだよ(よくない顔)。お望みのことは終わったようだから、これからはお前たちの番だぞ。(圧)」
ラウルからの悲しい目線が左半身に突き刺さる。レイル自身はあまり反省はしてない。
「じゃあ、さ、早速始めますか?魔術の基本から…。」
サフーリン先生も乗ってきた。
ラウルの視線が痛く冷たい。
せっかくブルムが淹れてくれたしっぶいお茶が冷めそうなほどであった。
「やっちゃってください、先生!」
ギャレクも便乗する。
「で、では、説明を始めますね。」
こほん、と小さく咳払いをして、先生は喋りだす。
「………、何から教えましょうか。」
真剣な顔でそんなことを言ってくるから台所でイエルムさんが吹き出した。
けれども、ラウルは優しかった。
「魔術の使い方について教えていただきたいのですが。」
「つ、使い方ですか。わかりました。庭に出て一緒にやってみましょう。」
俺たち三人は家から無駄にだだっ広い庭に出た。
「魔術を放つには、想像と理想が大事です。例えば簡単な魔術である『水弾』について想像してみましょう。」
俺たちは目を閉じて考える。
「水が生成され、球の形をなし、空中に向かって跳んでいく。…さあ、イメージはできましたか?」
俺は頷く。
「次は、理想です。どんなものにしたいか。壁に当たったら跳ねるのか、すごいスピードで飛ぶのか、当たった場所で破裂するのか。」
俺は速く飛ぶものを想像してみる。
「用意はできました。目を開けて、詠唱してみましょう。」
「「『水弾』!!」」
手を前に突き出して詠唱するーーーが、俺の手からは何も放たれなかった。
代わりにーーードッゴオン!ザババババー!!と隣のラウルの手から水弾ーーと言っていいのかわからないほどの水ーーが溢れ出していた。
「…………。」
サフーリンは顎に手を当てて考え始めてしまった。
気まずい雰囲気が庭に漂う。
「…。まず、ラウル君。何を理想としてイメージをした?」
先生が問う。
「レイル・マジ・溺◯、って考えてました。」
レイルは命だけは助けてもらえるだろうか、と考える。
「どれだけ強い思いがあってもその魔法の域を超えることはないのですが…。これは一段階上の魔術の『水砲』です。」
ラウルは、本当にやばい魔術師だったみたいだ。
「そして…レイル君。」
「ハイ…。」
「実は、あなたから魔力が感じれないのです。もしかしたら、先天的な魔力不全かもしれません。」
まりょくふぜん?…魔力不全?何かの冗談であろうか。
「嘘ですよね。」
「まじです。」
サフーリンの真剣な声音から、不安が濃くなっていく。
「その場合って、つまり…?」
先生がすごい悲しそうな顔をする。
「その場合レイル君は一生魔法が使えません。無理に使った場合、体が爆散する可能性があります。」
「(気絶)」
レイルの時代の到来はだいぶ遠いらしかった。




