第十三話『計画の将棋倒し』
魔力が英神と片手を繋ぐだけで十分に通るようになり、本格的な魔法、剣術の訓練を始めた。
「まずは、君の適性魔法を調べよう。」
適性魔法とは、自分が最も得意とする魔法のことだ。ギャレクなら地魔法、ラウルなら空魔法である。
「どうやって調べるのですか?」
「これだよ。」
英神はそう言って腰に差していた一本の短めの刀を取り出した。鞘や柄は漆黒で、鍔が銀色なので、落ち着いた印象を受ける刀だ。
「これは?」
「ただの剣だよ。町の武具屋さんに売ってた値段としては中堅ぐらいの刀。まあ、これは私の所有物ってことになってるから、この剣を握れば魔法も使えることだろう。」
少し早口でだいぶリアルに教えてくれることから英神の自腹で買ってくれたものなのだろう。
「これを使って何をするのですか?」
「未使用の武器に自分の魔力を込めた状態で、地面にブッ刺すと、魔法陣みたいな感じで、属性の一文字が地面に表れるんだ。」
「そうなんですか。けど、僕の魔力って…」
「私のだね。まあ、一回君の体内を通っているから、多分君の結果が出るんじゃないかな。」
「確証はないのですか?」
「そりゃあ、だって過去の私が神助を与えた人の子に、私自身がその子を助けるのは別として、私の魔力で戦ってた子なんていないし。」
「ぐうの音も出ません……」
使えなかったものを使えるようにしてもらったことだけでも頭が上がらないのに、それ以上を願うのは、傲慢というものだろう。自分は恵まれすぎていることを改めて認識しようと反省した。
「まあ、それは置いといて。早速やってみよう。」
そう言って英神はレイルの左手をつなぎ、右手に刀を持たせた。刀は普通の5歳児が持つにはかなり重たいだろうが、魔力で体が少し強化されているのと、日頃筋トレをしているレイルにはなんともなかった。
その姿を見てよしよしと英神は頷いて言った。
「だいぶ筋肉もついてきたね。順調順調。」
「まあ、鍛えてますから。」
少々ドヤりながら鼻高々にレイルはそう言った。一般的な5歳児より全然筋肉には自信がある。
「これなら、実戦練習も間近かもね。」
「実戦ってたとえば何をするんですか?」
「魔物と戦ったり、ラウルとかギャレクとかと模擬戦をしたり。」
「遠慮しておきます。」
はっきり言って今のレイルでは誰に対してでも歯がたたないだろう。
「まあ、すぐにとは言わないけど、なるべく早くできるように頑張ってね。」
英神の言葉は少なくない圧をレイルに感じさせた。
「話が脱線したね。早速魔力流すよ。」
そう言った剣神の手とレイルの左手にあたたかな光が宿る。その光は、左手を通って、レイルのつま先から頭頂までを覆う。そして、魔力は右手の先まで到達し、じわじわと刀にも宿り始めた。
「よし、じゃあ引き続き魔力は流し込みながら、刀を地面に刺して。」
レイルは言われた通りに剣を地面に突き立てる。じわじわと剣先までを覆った光は、形や色を変えて地面にも広がり始めた。
光は方位磁針盤のように四方に広がり、一つの文字を形成していく。もともと青みがかっていた光はその青をさらに強くしていく。
「色的に『空』かな?…って」
もう少しで光の半径が50センチに届くかというところで、光は急に色を変え始めた。澄んだ空色がまるで雨雲かかったかのように急に濃い藍色に染まっていった。
もうすぐ光はその変化を止めた。
現れた字は、『陰』だった。
「………『陰』??」
「え!?『陰』って嘘だろ!?」
文字を一目見た瞬間から、英神は興奮したような声で叫び始めた。
そして、レイルの方をばっと振り返って言った。
「レイル!!君は、『陰魔法』の使い手だ!」
『陰魔法』という知らない魔法の属性にレイルは混乱した。そんな魔法は存在しないはずである。
剣神は続けて言った。
「この魔法は神が使う最上位魔法の一つ!すなわち!」
人差し指で名探偵ばりの指さしをした。
だいぶためを作って言い放った。
「この魔法、禁忌!!」
その言葉を聞いた瞬間、グッバイ俺の時代——とレイルは膝から崩れ落ちた。




