第十一話『祝いの宴』
裏山での魔力回廊の治療実験の翌日から、本格的な稽古が始まった。
例の実験でレイルの魔力回廊が魔力を通したことがなく不慣れなため十分に機能を果たせないことが判明したので、まずはそこを重点的に治すことになった。
その内容とは——
奇しくも英神が言った通り、手繋ぎデートであった。
まあ、デートといっても路上を見せつけるように歩くわけではなく、裏山を散歩したり、なぜか踊りだした英神の相手をしたりといったところだが。
まあ、レイル自身は踊れないし身長もだいぶ違うのでほとんど振り回されていただけのだが。
それと同時進行で素振りや筋トレを始め、座学も再開した。
例え英神との魔力共有が完璧にできたとしても、まず剣を持って振ることができなければ宝の持ち腐れだからである。
また、座学は魔法史、剣術史を、本を読んだりサフーリンに教わったり信号機三娘に聞いたりし始めた。剣術も魔法も知識がないと実践が難しいからである。
英神との魔力回廊のリハビリは順調であった。
それだけで希望があるし、やる気も出るのであった。
***
それを続けて約一ヶ月。
場所は家族、三娘、先生がいる我が家の居間であった。
「お!きたきた!」
ついに英神と片手を合わせるだけで魔力を全身に生き渡すことができるようになった。
嬉しさのあまり涙ぐんだ。
「英神様…ありがとう……ございました……!」
長年のコンプレックスが治った瞬間だった。
家族や先生、三娘、そし英神にもすごくお世話になった。
「おいおい。今泣いてどうするんだ。これからが始まりだろう?強くなろうじゃないか!」
「……はい!これからもよろしくお願いします!」
感極まったレイルは、思わず英神の腕の中に飛び入った。
「おっと。」
「レ、レイル!いくら英神様がお優しいとは言えいくらなんでもそれは失礼だ!!」
ギャレクがそう叫ぶ。
言われて、慌てて離れようとしたが、なんと英神側がレイルをさらに強く抱きしめたのだった
「いや、いいんだよ。逆にやっとこの子のちょっと子供らしいところを見れて嬉しいよ。」
子供らしい、と言われてレイルは赤面する。レイル自身も忘れがちだが、レイルは前世成人男性である。
「確かに…レイルが甘えているところを見たことがないな。」
「そうですね。」
「ラウルくん含めてな気もします。」
「ブレイクス家の坊ちゃんたちは大人しくて物静かでいい子ですからね。」
各々が勝手な感想を言い合う。
それだけ奇跡のような出来事だったのだろうか。
というより、これまで怪しまなかったこの家の人たちの優しい鈍感さにまた涙が出そうになった。
そこで、ギャレクがガバッと立ち上がって言った。
「よし!こんなめでたい日は全力で祝うぞ!宴じゃ!全員準備じゃ!」
「「「はい!!!」」」
家族が一斉に走りだし、一瞬でどこかへか散らばっていってしまった。
その場にポツンと残されたのは、レイル、ラウル、英神だった。
「…2人ともよく頑張ったな。私が褒めてあげよう。レイルは魔力回廊の矯正成功、ラウルは空魔法聖級。ラウルに至ってはそこら辺の冒険者パーティーの魔法使いじゃ話にならないレベルですごいし強いよ。」
そう言って2人の頭をわしゃわしゃと撫でた。
「今日は全力で祝ってもらうんだぞ。」
そう言った英神の顔は慈愛に満ち溢れていて、これまでの中で1番優しい顔だった。
***
2時間ほどあと。
『準備できましたー』
と居間を追い出され、自室で待っていたレイルとラウルをブルムさんが呼びにきた。
今に入ると、食卓には豪華なご馳走がずらっと並べてあった。
「「おぉ…」」
兄弟そろって感嘆をあげる。
ギャレクが機嫌良さそうに言う。
「今日は無礼講!好きなだけ騒いで食って飲んで寝ろ!特にはみ出せ!」
「「「「「よっしゃーーー!!!」」」」」
れっきとした貴族の家では聞いてはいけないようなハイテンションな大声が上がった。
それからはもう大騒ぎであった。
絶品料理を食べ、みんなで大笑いをした。
ギャレクは酔っ払い、ミリアに解放され、ブルムにラウルが(物理的に)振り回され、レイルも英神にに振り回され、イエルムとレナアが歌い出した。
なかなか貴族の家で見られる光景じゃないが、みんなが楽しそうだった。
最高の自分達へのご褒美になった。
今日みたいなみんなが幸せな日々が続きますように——とレイルは満腹からくる微睡の中、心の底から幸せを願い、深い眠りに落ちていったのだった。




