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エルデン・グライプ~「不滅者」は混沌の世界を狂気と踊る~  作者: 津崎獅洸
第二部

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272:原初の神


久しぶりの故郷。

俺は実家の扉を叩く。


「はいはーい」


母の声だ。胸がポカポカする。


「へー辺鄙だなあ」

「普通の村はこんなもんだよ」

「ふーん。1月過ぎなのに雪は降らないのか」

「うん。この辺は雪降らないよ」


セトは物珍しそうにきょろきょろしている。

クォーツは静かに立っているし、ルリはオニキスを見ている。

そんなオニキスはしゃがんで花を見ているし、シンジュはオパールを見ていた。

オパールは家のつくりを気にしていて一周周ってそれから俺に声をかける。


「こういう村にしては豪華な造りですね」

「ああ、俺が出資して作り変えたんだ。ゲブって人に頼んで」

「ゲブ?」

「うん?」


セトが俺を見上げ顔を明るくした。


「父上がいるのか」

「え?俺の?」

「違うゲブは俺の父だよ。近くにいるのか?」

「ロージニアにいるよ」

「会いたい」

「うん。後で会いに行こうか」


セトは珍しく本当に珍しく無邪気ににこーと笑い、わくわくしている様子だった。


「誰?」


ガラッと開いた扉に俺は顔を出す。


「おはよう」

「あら!元気だった?年末にも来なかったから、何かあったんじゃないかと思って」

「うーん、ちょっと元気がなくて」


神に監禁されてましたとは言えない。


「好きなだけいてくれていいから!ささ入って」


皆が入ると土間はなんというかごちゃごちゃしてしまう。


「広い土間で良かったわ。白湯しかないけどいい?」

「あ、お茶買って来たよ」


ポーチから袋を取り出す。


「お茶ってどうやって淹れるの?」

「え?」


そりゃ、お茶の葉を入れたポットにお湯を入れて……。あ


「あー……今度ポット買ってくるよ」

「あら、ごめんなさいね」

「ううん。こっちこそごめん。白湯ちょうだい」

「はーい」


母は鍋で沸かしたお湯を陶器のコップに入れてテーブルに並べた。


「……椅子が足りないわね」

「良いよ俺立ってる。オニキス、シンジュ、座りな」


この家は前の家と違い広いがそれでも椅子は4脚しかない。


「そちらの2人は?」

「こっちはオパール。こっちはセト」

「どうも、お嬢さん」


セトは白湯をふーふーしながら言う。


「あら、貴方、神様?」

「え!?」

「……」


母はふふっと笑いながら席に着く。セトは胡乱げな目を俺に向ける。


「私はお嬢さんなんて歳じゃないし、貴方は見た目より達観している。所作も美しい。貴族の長命種と言うよりはさらに上の雰囲気を感じる。なら、神様」

「なん、なんで」

「神様に会ったことがあるのよ。私、昔は国中を周っていてね。ヘパイストス様も神様だし」

「あれっそうなの?」

「鍛冶の神様よ」


母は白湯を飲んでこちらを見上げる。

そして、なんともないように言う。


「あなた、神成をしたでしょう」

「ごふっ!!!」


なん、なんで分かったんだ!?


「んぐっげほっ」

「あらあら大丈夫?」

「なんで!?なんでわかるの!?」


分かるのは神様とか古竜とか神竜とかだったとおもうけど。


「私、神狩りをしてたのよ」

「は?」

「若いときはね、邪神の神性持ちと戦ってた。うふふ」


白湯を飲み、それから母は俺を見る。


「あなた、夢白泥の王の神性、知灰泥の王の神性、幻角公の神性をもっているわね。それから、神の気配を感じる。これは、新しい神の気配。なら、神成をしたってことでしょう?」

「ひえ」


一息に当てられ俺は後ずさる。

母はにこりと笑った。


「その髪で、その眼帯。隠そうって方が無理があるわよ。知っているヒトが見れば分かるわ。大変だったわね」


俺は正直に告げた。


「俺、エルデン・グライプで……」

「そう……死んだのね」

「うん」

「生き返ってよかった。あなたはこれから先、大変な目に遭うと思うの。でもね、ここに家があることを覚えていて欲しい。実家にいつでも帰ってこられるの。だから、思いつめないで。アンジェラだっているし、何かあればアンジェラが助けてくれる。私もお父さんも助けてくれる」

「うん、うん」


俺はぽつんと涙を流し、慌てて拭いた。


「大丈夫。こっちへ来て、カーク」

「うん」


俺は母の元に行き、膝をついた。

手を差し出すとコップをテーブルに置いた母がその手を握る。


「あなたは何をしたいの?」

「え?」

「神に成る者は使命を持つ。それは定めなの。定命の者とは違う……あなたはその使命を知っているの?」

「知らない……え?俺、どうしたら」


「セト」


そこに穏やかな声が響く。振り返るとゲブとヌトがいた。


「母上様、父上様」


セトは静かに膝をつく。

ヌトがその姿に首をかしげる。


「おうおう半神の姿なのはどうしてだ?」

「カージェンテスカと遊んで、力を使い果たしました」

「カージェンテスカ?」

「そこにいる、音の神です」


俺はセトに指さされ、慌てて立ち上がった。


「えっなんでこちらに」

「うん、うーん。セトとオシリスの気配がしたから?」

「オシリスの気配?あれは追ってきていないはずですが」


セトはじとっと俺を見上げた。


「あ、多分、俺がオシリスを食べたせいかと」

「はあ、最近の子はやんちゃだ。何でも口に入れちゃうんだから」


ふははと笑われ俺はどうしたらいいか分からなかった。心底助けてほしい。

ヌトはテーブルについている母を見つけてにやりと笑う。


「そこにいるのはソフィアか?」

「ええ、はい。ヌト様」

「こんなところにいたのか。また手合わせを願いたい。君がいなくなってちょっと退屈だった」

「光栄です、ヌト様」


すっと立ち上がり、カーテシーをした母は深く頭を下げた。

貴族として洗練された仕草である。


「あれ、なんで……」


俺は驚いて、口を開ける。

それを見て不思議そうな顔でヌトが口を開く。


「彼女はこのロイノーネ陽王国の太陽の影騎士団元団長だぞ、君の母上かい」

「えっ」


太陽の影騎士団。

文字通り所謂、影の組織。なるほど、神狩りとは影の組織だったのか。


「なんで、神狩りなんてしてたの?」


俺の疑問に答えたのはヌトだった。


「うん?邪神を退けたいロイノーネ陽王国は太陽神ラーを信奉している。その信心を背負って戦っている太陽の影騎士団を囲っているんだ。団員の全員が善神からの神性を授かって戦っていたのだが、20数年まえ泥の神性持ちと戦った際にほとんど壊滅状態に……ソフィアは」

「ヌト様、それくらいに」

「そうか?まあ、君に会えてよかった。田舎暮らしは性に合うかい?」

「ええ、楽しいです。息子も2人出来ましたし」

「そうかそうか。君は苦労性だからな。幸せで何よりだ」


そこに父が帰ってきて俺を見た後、ゲブ、ヌト、セトを見てからぎょっとした顔を見せるとくるっと踵を返し、走り去る。


「ん?え?」


俺が困惑しているとヌトが叫ぶ。


「ああ!?あいつ!!!ソフィア!あいつと結婚したのか!?何を考えているんだ!!!」

「うぐぐ」


母は気まずそうな顔を見せ、セトが顔色を悪くする。


「ヌンじゃないか……なんでこんなところに」


セトの言葉に俺は首をかしげる。


「父の名前は違うぞ?」

「ヌンだよ。間違いない。原初の神の一人……あのラーにも並ぶ存在だ……あーだからお前、泥の神性を持っていたのか」

「は?」

「泥、と言うのは水属性だ。逆らえないという意味だよ」


意味が分からんが?


「ん?ん?」

「水に逆らうのは馬鹿のすることだ。だから、水獄の君だってかなり強力だろ?」

「あ、えっでっでっでも、俺の父さんは神様じゃないと思うんだ。だってなにもしたことないし、偏屈なところはあるけど、普通の人だよ」

「ヌンが何歳だと思ってんだ。俺が産まれるよりずーーーーっと前の神で、ラーに並ぶほど旧い神だよ」


何が言いたいか分からず俺はきょとんとしてしまう。


「演技なんて簡単だし、騙すことに良心の呵責もないだろうよ」

「母さん?」

「……母さんが負けたのはあの人くらいなの」

「ひえ」


ぽっと頬を赤らめる母に俺は何も言えず、父の後を追った。



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母ちゃん父ちゃんにわからせられて二人の子持ちに?
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