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エルデン・グライプ~「不滅者」は混沌の世界を狂気と踊る~  作者: 津崎獅洸
第二部

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273/275

271:借金返済!


銀王国の大穴の前に出て、俺は悩んだ。


「……どうしたらいいんだ」


穴の広さはかなりある。

あの鎖をつたってゼスティレイルのところに行くか?

できるのか?深さは分からんぞ?


「うーん」

「飛べばよろしいのでは」


オパールの言葉に俺はハッとしたが、飛べないひといますよね?


「シンジュ、オニキスとクォーツとルリは飛べないよな?」

「なんでですか?」


心底不思議そうに言われ俺は戸惑った。


「え?」

「飛べますよ」


ほらとオニキスが青い薔薇の纏わりついた翼を出す。

続いてクォーツもタンポポの花がまとわりついた翼を出す。


「ん?なんで?」

「はあ……花竜ルロンセの血脈は花の翼を出すんだよ。晶竜の血脈は宝石の翼を出す。だから、基本的な古竜の血脈は翼持ちだよ」

「でも、地竜とかいるじゃん」

「ああ、だから、一部の古竜の血脈は足の力を手に入れたんだ。足が変化するぞ」

「んえ?」

「……一定LVになると翼を出せるようになったり、足の力を手に入れる。60がそのハードルなんだ」


ふーん……二人は大丈夫でもシンジュとルリは飛べないよな。


「あ、セトも飛べないか」

「まあ、この姿だと飛べないな」

「え?砂の神……あ、そっか砂化すれば飛べるのか」

「お前が連れてけ」

「はいはい」


俺は翅を出しセトを担ぐ。


「オパール。ルリを頼めるか」

「はい、かしこまりました」

「クォーツ、シンジュを頼む」

「おう」


その状態で飛び始めると結構距離があることに気付く。

あの塔でかいから縮尺が分からんかった。


「と、遠い」

「頑張れ」


投げやりな言葉を投げてくるセトを担ぎ直し、せっせと飛ぶ。

ようやく着いた頃には俺は疲れていた。

翅を仕舞い、高い塔の上を見る。


「で、入り口は?」


クォーツの問いに俺は乾いた笑いをするしかない。


「おい……あ」


向こうの方から誰かが来る。

俺はぼんやりと見ていると、駆けて来たのは燕尾服を着こなす踏塵候。


「どうやってこちらに」

「飛んで」

「……次からは王城にいらしてください」


手を向けられたのは城壁の向こうの巨大な城。


「え?」

「そちらで連絡を取れるようになっておりますので」

「あ、なるほど」


先に言ってほしかったな。疲れたよ……。


「皆様、こちらへどうぞ」


俺たちは案内されるまま塔に沿って半円を描き、入り口に到達する。


「う、疲れた……」

「神になったのですから、気の持ちようかと」


踏塵候ににべもなく言われ俺はセトをそっと置いてどさっと倒れた。


「ひどい……」

「ひどくないから、起き上がれ」

「あ、はい」


クォーツに言われて立ち上がり、踏塵候の後ろについて行く。


「ゼスティレイル様はおられるんですか?」

「はい。お待ちです」

「いつもここに?」

「はい。いつでもこちらに」

「暇じゃないですか?」

「忙しい方なので、暇はないですね。寝る間も惜しんで、折衝を」

「なんでですか?神竜は人間に興味がないのでは?」


扉の前で立って、踏塵候はすっと背筋を伸ばしこちらを見下ろした。


「ゼスティレイル様は、ニンゲンに、心を砕いておいでです」

「そう、ですか」


確かに、敵軍であろうとも蹂躙戦は選ばなかった。だとすると相当甘い性格か?


「千差万別、か」


踏塵候は扉を叩き、一歩下がる。

中から扉が開かれ獣人の執事が出てくると、踏塵候を見上げ背筋を伸ばす。


「踏塵候閣下」

「ゼスティレイル様は?」

「こちらに」

「今、いいですか?」

「はい」


獣人の執事は扉から出て俺たちを招き入れる。

入った部屋は雑然としていて几帳面なゼスティレイルらしくない。

前もそうだったな。細かく見ると積まれている本の内容も変わっている。


「あ?」


ゼスティレイルが愛想悪く、目の下に濃いくまを作ってこちらを睨んだ。


「あ、お忙しいところ申し訳ございません。6000万金貨が出来たので、お渡しに」

「ああ」


緑貨の入った袋をどさっと踏塵候に渡す。

それを持って、ゼスティレイルに渡されると、それを開き、眺めてから溜息を吐く。


「まあ、これくらい簡単に集められるか、ちっ」

「え?苦労しましたけど!?」

「……なんでだ?」


こいつ、金銭感覚が腐ってんのか!?


「緑貨一枚ですら苦労しました!!!」

「お前神だろ」

「は?」


それが何か?金貨を生成しろとでも?


「体の一部が高く売れるだろ」

「……え?なんですって?」

「そりゃ、お前みたいな新参者は安く買いたたかれるだろうが、音の神だからな、それなりの値段になるだろ?」

「えっえっ???」

「……まさか、お前、何もわかってなかったのか。神っていうのは、一線を越えた超越者の一種だ。安いもんじゃない」


俺はセトを見下ろし、それから踏塵候を見た。


「え?」

「だから、国に帰って髪とか血とか唾液とか売れるんだよ」

「き、気持ち悪っ」

「気持ち悪くない。触媒になるんだよ。金属とか布に練り込むと魔法伝達率が良くなるから、まあお前の場合だと、音属性の魔法が付きやすい。付与魔法だって楽じゃないからな」


うえええ……まじかよ……


「無駄に稼いだ……?」

「無駄ではない。お前が苦労してくれて俺もうれしい」

「……性格悪っ」

「はっはっはっお前のせいでどれくらい損害が出たと思ってんだくそ野郎」

「ぬぐぐぐぐぐ」


くそっ!!!楽に稼げる方法があったのか!!!


「セトは何で教えてくれなかったんだ?」

「え?」

「え?」


セトはきょとんとしてこちらを見上げる。


「えっだって俺は、売れないし」

「…………」


いや、うん?


「いや、セトを売りたかったんじゃなくて、神の一部が売れるって話をしてくれたら、ゼノグエントに会わなくて済んだじゃないか」

「うーん。俺が人間の世界で生活していたころは神じゃなかったんだ。半神って言ったらいいかな……まあ、うん。大昔は神の一部を売り買いしたりしなかったんだよ。俺は知らなかった」

「人間の世界で生活してたの?」

「ああ、ホルスに負けた後、人間の世界で生活してた。まあ、早めに回収されたけどな」

「なんで」


なんか悪いこととかしたんかな。


「俺が危険だから、ラーが回収に」

「セトが危険なの?セトが危険な目に遭いそうだったの?」

「……俺が危険だ!!!」


その顔、絶対嘘じゃん。今のこの姿を見たところ、多分、人買いとかに狙われたんだろ。


「まあ、いいや」

「さっさと帰れ」

「ひどっ!」

「仲良くする気はない。さっさとロイノーネ陽王国に帰れ」

「はーい。じゃ、お邪魔しました」


外に案内され、俺は曇り空を見上げた。


「はあ、髪でも売るか」

「禿げろ!!!」


セトにローキックされ俺は苦笑した。



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― 新着の感想 ―
今なら竜の鱗集めとかより楽に稼げるけど、神や古竜も金稼ぐ必要があるとか世知辛い世界だなあ。
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