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トライ・ワールド  作者: 英心
3/5

三話  「代償と絆」

三話です


1日の出来事に複数の記憶。歪んだ記憶。重なる記憶。違った記憶。

交差する記憶を整理していく。


「…そうだ。俺は同じ行商に2度会っている。遺跡にも2度訪れ、そして死んだ

 でわ、この身体は何だ?。若造…確か祭壇の間に…なるほど、彼は2度目の

俺の様に隠し部屋で剣を見つけたのだろう。だが、他の宝は見つけれなかった

…そう云う事か…何故俺はあの時フィードバックして1日をやり直せた?」


死んだ本物のエレインと自分の違いを探るが答えは出ない。そんな考えを

しながら街中を歩く。ここは生まれ育った街『ブランドール』俺の街だ。

殆どの奴を俺は知っている道具屋のベンや屋台のカーリーも俺ドロイド・ロイド

だと認識しない処か『そんな奴』は知らないと言いやがった。

俺は…試さずには居られない。知らなければいけない場所へと向う。


在る筈の物が無い。そう…俺の家だ。ボロくてみすぼらしい家だが、守る家族が

住まう家だ。流石に俺でもコレはキツイ。ケリーとダリアはどうなった?

打ちのめされ、茫然とする俺。女性の声が耳に入る。聞き覚えのある声だ。


独りの女性が男と楽しそうに話をしている姿が目に映る。2人のそばに若い娘の

姿もある。娘のダリアだ。俺と暮らしていた時とは違い元気で明るい雰囲気の

ある娘の様だ。

大人の女性は痩せてはいるが、妻のケリーの面影がある。


あぁ…若い頃のアイツに何処と無く似ていると俺は思った。隣の男は知っている

名はシーボルト。気に食わない男だが、奴も古い知り合いだ。

俺の否、俺たちのマドンナ『ルーラ』を手篭めにし妻に娶った男だ。

奴さえルーラに悪さをしなければ、俺は彼女と結ばれる筈だった。

急に忘れていた憎しみが蘇る。


…待て!傍に居るケリー俺の妻になる筈だった女は、奴の傍で幸せそうに

している。俺に出来なかった事を奴は叶えていた。そう考えると奴への怒りが

収まって行く。…そうかドロイド・ロイドと云う俺が消えたお蔭で、ケリーは

シーボルトと結ばれダリアが2人の間に生まれたんだ。と俺は悟った。

どんな形であれ、俺が守ってきた二人は別の形で幸せを掴んでいた。それを良し

として俺は気に入らないがシーボルトに後を託しその場を離れる。


奴が…奴がケリーと結ばれているのなら、その思いが俺を動かす。


急いで屋台が鉈部通りの角を右に曲がり走る。何人もの通行人にぶつかっても

お構いなしだ。走る。走る。胃の中の物が全部出そうな思いをしながらも

走り続け、そして立ち止まった。


手入れの行き届いた庭には綺麗な花々が咲き誇る。昔からそうだ。彼女は花が

好きで、幼い頃から庭の手入れは欠かさなかった。庭が綺麗に整備されたのに

反して、家は少しボロい…何故?俺の頭に疑問が過る


「どちら様?我が家に御用ですか?」


不意に声を掛けられ驚く。振り向けば、化粧ッ気が無いオバサンがコチラを

見ている。着ている服はツギハギだらけ、髪も整えておらず、白髪も混じりだ。


「あの…コチラは、コチラの家は?」

「まぁ~もしかして寄付の方ですか?ええ。此処が孤児院ルーラの家です

 私が代表のルーラです」


目の前のオバサンがルーラと名乗り衝撃が走る。確かに目元は美しい彼女に

似ている。だが、シーボルトと結婚しなかったからと言って、ここまで彼女は

貧しくなるのだろうか?


「えっ!ここは…ここは孤児院なのですか?」

「あら、そのお言葉では寄付の方では無かったのですね。すみません。私ったら

 こんな歳になっても、そそっかしい性格でゴメンなさい。それで何か御用?」


『貴方の今が知りたくて来た』とは言えず言葉に詰まる。

だが、彼女が元気で居る事に少しばかりの安堵を得た俺は考えた。


「今日はコチラの現状を見に来ました。俺に、俺にできる事は何だろうか

 知っておこうと思いまして、お伺いしたんです」

「まぁ~それは在り難い話です。ここは幼い子ばかり、男手が無いので

 貴方の様な方なら、大歓迎です。子供等に愛の手を差し伸べて下さい」


差しさわりの無い言葉で会話を紡ぎルーラの現状を探る俺。

現在、孤児院には5人の子供達が共に寝起きをしている。上の子は8歳

下は2歳。まだ、誰も外で働く年には至って居無い。つまり収入源の働き手は

ルーラしか居なかった。その上、家事やら家の事全てを彼女一人で行なう為、

碌々働きに出る時間もない様に思えた。


「失礼ですけどルーラさんはご結婚は?」

「お恥ずかしい話ですが、一度も…」

「そうですか…あの…」


俺は彼女の言葉を聞いて確認したい衝動に駆られる…多分彼女も他の知人達と

同じ結果だろうが、俺の気持ち的問題がそうさせた。


「ドロイド・ロイドと云う名に聞き覚えは有りませんか?」

「ドロ…イド…ロイドさん…いいえスミマセン。

 記憶に無いお名前です「そうです」…でも何故でしょう!?そのお名前

耳に残る響きですね。どこか…懐かしくもあり、愛おしくも感じる…ウフッ。

こんなオバサンでも少し心踊る気持ちに成りましたわ。

不思議なお名前ですね」



「エレイン…さん、どうなされました?」


俺は彼女の言葉に頬を濡らす。

遺跡で石像に殺され、訳も判らず生き返った俺。再び生命を宿す代わりに全てを

失った俺。誰も俺の事など知らない。コッチが知ってる分、尚辛い。

だが、彼女は…ルーラだけは俺の名を懐かしがってくれた

それが、俺の心に響く。


「あぁ~どうしたんでしょうね、自分でも驚きます。…判りました。

 俺に出来そうな事を考えて出直します」


そう彼女に告げ孤児院を後にする。


住む家も無く俺は町の宿屋『ヤドリギ』に暫く居座る事にした。町一番の飯が

旨い宿で小さいながらも風呂があるからだ。

部屋に入ると自分の持ち物否、エレインの持ち物を全てチェックする


「…なるほど、やはりコイツは凄腕らしいな、殆どが武器や防具の類しか

 無いじゃないか」


若い冒険者。独り者。流浪のトレジャーハンターは生活に必要なモノは

アウトグッズ類しか持ち合わせて居無い。まったく少しは生活観を持てよ!

と俺は死んだ若輩者に小言を言った。


「…だけど、その分お宝の類はあるな、アイツが頑張って手に入れた品々、

 悪いが少し使わせてもらぜぇ」


勝手に売りさばいても良さそうな物を仕分けする俺。伊達に歳は取って居無い。

知識だけは豊富な俺は、彼が持っていた宝の価値が少しは判る。

何より一番の宝は、これ等を詰め込める『魔法のバック』だ。

どれだけ詰め込んでも、容量も重さも関係ない。おかげで、全部いっぺんに

引き出せば床が抜けるかもしれないと思った位だ。

次は『鑑定のメガネ』これは品々の良し悪しが判別できるメガネ

そして薬品類。これらは売らずに取っておこうと考える。俺のこれからの生活に

十分使える品々だからだ。


「よし、この辺の素材と財宝は売っても良いだろう。俺でも知ってる名の魔物類

 の皮やら骨だしな。コッチは聞いた事もない奴等…コッチは売らずに居よう」


売るものが決まれば、後はする事は決まっている。

時間は既に陽が翳り始めている。道具屋ベンの店には明日売り行くと決め、

今は違う目的の店に足を向けた


三話  「代償と絆」  完

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