第四章:新勢力 対 挑戦者
ロマン=ツールイズム同上主義。次のロマン第一主
義者は少し特殊でロマン第一主義と言いながらツー
ルイズム。つまりは、道具を同じくらい重要視して
いる敵だ。いままでのヒップアタックバトルは学校
内でやることが多かったためある程度道具は限られ
ていたが高校からは外での対決がメインになり、
道具がかなり自由になった。しかし、ルールは今ま
でと変わらず武器での物理的攻撃は反則と見做され
るので基本は変わらない。
「あいつは二つ名があって倒せば新たな主義として
世間的に認められるようになるだろう。まぁ、
相手も特殊な主義だから、頑張れよ」
「名前はなんですか?」
「《舞闘の籠手》とこ高校二年生、白鳥 奏斗だ」
「こて?」
「かごのことだ。あいつの場合、スーパーのかごで
衝撃を受け止めたり受け流してから反撃するとい
う戦法だ」
「なるほど。確かに結構特殊ですね」
「あぁそうだな、技は籠で完全に相手の
攻撃を防御する護り籠と受け流す円月流しが
ある。でも、それでは次の攻撃に繋げるのが
難しいため、あまりやらないがな」
高校生活初めての二つ名との対決。これを倒せば
僕はまた奴。辻蓮に近づける。
「あれ?でも今までは学校内だったから良かった
けど、今回の敵は違う学校だからどこで闘うん
ですか?」
「それはだな。二つ名は自分の縄張りとしている
場所があるんだ。普段はそこで練習をしたり、
挑戦してくるやつの相手をしている」
「それで、そこはどこなんですか?」
「えっとなーーーー」
いつものように自分の罠張りである公園で練習を
する。いつかはあの列強達をも倒し、上り詰める
ために……。『挑戦者』として。俺は体格とプラ
スで道具を使いこなす技術力がある。この籠で
舞うように闘い、撃破して見せるんだ。かつての
ようにーー。そうして、中央にそびえ立っている
燃えるような一本木を見上げる…………。しかし、
『決意』を決めてしまう。
「ということでそこの公園にいつもいるから闘い
たかったら呼んでくれ」
「これから行きましょう」
「え?」
「行きましょう」
一刻も早く倒したい。かつては『最強』と謳われて
二つ名もあったが今では《飛騨のシロフクロウ》の
名も剥奪された。だからまた『新勢力』として名を
馳せたい。認められたい。そう感じていた………。
「奏斗さん。いや《舞闘の籠手》」
「なんだ?闘いにきたのか?」
「はい、ロマン第一主義者を倒す中で初めての二つ
名とのバトルです!」
「それはめでたいことだ………。だがーー」
「?」
「俺は闘わない」
ーーーえ?この人は何を言っているんだ闘わない?
「聞こえなかったか?俺は闘わないと言っている
んだ」
「な、なぜ?」
「俺は毎日練習している。しかし、上のやつには
到底敵わない。どれだけ努力をして、頑張ってい
ても報われない………。逆に下のやつには簡単に
勝ててしまう。だからこれ以上続けても面白く
ない。もうやめるんだ。そう、『決意』した」
「僕は必ず勝ってみせます」
「その言葉は何度も聞いた。何度も聞いて、俺自身
も何度も言った。しかし簡単に勝ててしまう。
簡単に負けてしまう」
「…………」
「そもそも、俺は闘う資格がないんだ。籠でガード
し当たらないようにする……。そんな卑怯な戦法
なんてクソなんだ」
「そんなことない!」
「あるんだよ。俺はただの逃げることばかりを考え
ている臆病な卑怯者なんだ」
「あなたはロマン=ツールイズム同上主義として
独自の技術を持っているじゃないですか!それを
どうして………」
「放っておいてくれ他のやつを探すんだな。綺麗事
は………嫌いだぞ」
あまりの出来事に僕は唖然と立ち尽くす。
「なんで………」
「いやーまさかの展開だったな」
「……………」
「まぁ他にも腕のいいやつはいるから、そいつらに
しよう」
「いや………」
「ん?」
「僕は奏斗さんと闘いたいです!」
「あのなぁ楓。あいつが闘いたくないと決めたんだ
よ。あいつにはあいつなりの気持ちがあるのさ」
「ーーーなら、説得しに行きます」
「奏斗さんまた、やりましょうよ」
「いや、前にも言ったとおりだ」
来る日も来る日も奏斗さんに説得しに行った。そう
簡単にはいかないと、分かっていながらも。
「大体、他のやつもいるだろ」
「僕はどうしても奏斗さんと闘いたいんです」
「ダメだ。何度言われれば気が済むんだ。俺の気持
ちは変わらないぞ………」
奏斗はすでに心が揺らいでいたーーー。この何度
言ってもわかってくれないこのバカなら俺に勝って
くれるかもしれない。そう、思い始めた。たとえ
これで勝ってくれなかったとしても久々に楽しい
バトルができのではと、考えるようになった……。
試してみる価値はあるのかもしれない。そうして
俺は『決意』をもう一度、決める。
「わかった。やろう」
「やった!」
「ただし、これでお前が負けたらもう二度と来るん
じゃないぞ。分かったか?」
「はい!」
「では、また明日だ」
「木村師匠〜。今日、一回だけ闘ってくれるらしい
ですよ」
「おう、良かったじゃねえか」
「早速行きましょう」
そうして僕らはあの公園に向かった。
「奏斗さ〜ん」
「やっときたな、じゃあ始めようか」
奏斗は籠の取手を握り直す。
「パンッ」
今、闘いの火蓋が切られた。まずは初動。奏斗さん
に向けて一気に駆ける。そこからロングアタックを
するも、腕でガードされ弾かれる。
「お前の攻撃なんぞ籠なしでも受け切れるぞ!」
籠に注目しがちだが奏斗さん自身もロマン第一主義
の仲間であり、かなり体格がいいのに加えて、道具
を器用に使いこなせる技術力もある………。これは
長期戦になりそうだ。
「ガンッ」
一撃喰らってしまう。ーーーしかし、今までの敵
とは違う………。重みが。さすがは二つ名といった
感じだろう。すぐに体制を立て直し攻撃に備える。
また、一撃放ってくるがこれはかわし、回り込む。
そこから背中に向けてアップアタックをして吹き
飛ばすことに成功。着地点に向けてロングアタック
少しずれるものの見事に当たる。これで大ダメージ
………をーーー。
「なんだって…………」
奏斗さんは地面に着くときに籠で衝撃を吸収し、
なんともなかったかのように立ち上がってみせた
のだ。こんなことが可能なのか………。
ーーー帰ってきた。今、この瞬間こそ、自分は闘い
の野に本当に帰ってきた!そんな思いが胸を埋め
尽くしていた。こんな思いは久しぶりだ。ここは
一つ………賭けに出ようーーー。実は二つ重ねて
あった籠を分解し、両手に一つずつ持つ。二つある
ことを気づいていなかったのか楓は驚いた様子を
見せる。
「………いいだろう。本気を出そう《舞闘の籠手》
我が名の意味を思い知れ!」
まずは奏斗さんとの距離を詰めながらロングアタッ
クをするも舞うようにかわされてしまう。すぐに
奏斗さんの方を向くのだが……。籠を持ってない⁉︎
さっきまで手に持っていたはずの籠が両方ともない
「『ロマン砲=天網恢々(てんもうかいかい)・上下』!」
「なに!?」
気づいたときには足と頭に籠が絡みつき身動きが
取れないどころか視界も奪われてしまった。
「ドカンッ」
「グッ」
ロマン第一主義者のフルパワー攻撃はきつい……。
よし、使おうーーー。
「お前きもいんだよ!」
「バンッ」
「ご、ごめんなさい」
「うるせえ!お前なんか死ねよ!」
「はははは」
人の目を避けるようにして生きてきた小学生時代。
男子から体が人より小さいという理由だけでいじめ
られて以来、ずっと。
「お前らやめろよ!」
「ひぇ、隣のクラスの大河だ………。逃げろー」
「おい、大丈夫か?」
「う、うん」
それからというもの休み時間などは家が近く幼稚園
からの仲であった大河にくっつくように過ごして
いた。
「おい!なんで俺に言ってくれなかったんだ!」
「大河に………迷惑かけると思って………」
「はぁ、全くお前は」
その後は大河が通っている水泳クラブに入った。
初めてのときはなかなかうまくいかず、たくさん
練習した。そしたらある日、僕のタイムが大河を
超えたーー。そのときは大河にすごく褒められた。
それがすごく、すごく、これまでにないくらいに
嬉しかった。だからこそ水泳の大会では大河に頑張
れよと、言われたときに死に物狂いに頑張ってかな
りいい成績を残せた。小三の頃に大河に助けてもら
ってもなお、その時代に染みついた生き方を消す
ことができなかった。それがこんなところで意味を
持つ………。それは自分自身驚きでありそして幸運
だった。これまで嫌だったことが全て力になって
いるーーー。
「こっちも全力で行きますよ!」
まずは足にアンダーアタックをして、ひるませて
からの………。
「『瞬間砲=四極連撃』!」
「ガン ガンーーー」
「なに!」
受け流されたーーー。いままで一度も失敗したこと
がなかった四極連撃が籠によって。
「危ない危ない。できるだけ円月流しは使いたく
なかったんだけどなー」
「くそ!」
「『ロマン砲=天網恢々・上』!」
まずい!視界がーーー。
「ガンッーーー」
起き上がれない………。体がーーー。
「どうした楓!絶対倒すんじゃなかったのか?」
お互いに体力は少ないはずだ………。次の一手で
決める。
「まだ来るか!もう籠など必要ない。次で仕留めて
やるよ!」
「「おらぁぁぁぁぁぁーーーーー」」
お互い一撃必殺のロングアタック!迫り来る……。
「ズガンッーーーーー」
ーーー勝った。それがすごく嬉しい。
「勝ったぞーーーーーー」
〜その後〜
「奏斗さん、ありがとうございます。僕と戦って
くれて」
「いや………」
本当に感謝しなければならないのは俺の方だろう、
そう奏斗は思うのだったーーーー。




