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Vtuberになったのに裏方をしてます  作者: 東海林


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86話

第三エリア。


画面いっぱいに広がっていたのは、複雑な構造をした巨大な遺跡だった。

これまでのエリアとは違い、敵を倒すだけでは先に進めない。

複数の装置を起動し、道を作りながら攻略する必要があるらしい。


「……これは面倒だな」


俺はマップを見ながら呟いた。


「装置が四つありますね。それぞれ別の場所に配置されています」


ユラが状況を確認する。


「しかも制限時間付きか」


レイが画面の端に表示されたタイマーを見る。


残り時間は約六分。

ここで時間を使いすぎれば、最後まで到達できない可能性がある。


「とりあえず分担するか。俺とレイで左側、ユラは中央、カナタは右側を――」


「待って」


カナタが俺の言葉を遮った。


「どうした?」


「これ、全部の装置を起動する必要はないと思う」


「え?」


ユラがマップを確認する。


「でも、説明には四つの装置を起動すると……」


「うん。そう書いてあるね。でも、よく見ると装置の上に数字があるでしょ?」


カナタが画面上の装置を指す。


「左が二、中央が一、右が三、奥が二。これ、たぶん装置を起動する順番じゃないかな」


「順番?」


「それと、床にある模様。装置の数字と同じ形があるよ」


俺も画面を確認する。

確かに、床にはいくつかの模様が描かれていた。


「つまり、順番通りに起動すればいいってことか?」


「たぶんね。全部を起動しようとすると時間が足りない。でも、正しい順番なら必要な装置だけで道が開くと思う」


「なるほど……」


ユラが少し考え込む。


「確かに、説明文には四つの装置を起動せよとは書いてありますが、順番については触れられていませんね」


「試してみる価値はあるな」


俺はカナタに聞いた。


「順番は分かる?」


「うん。たぶん、中央、左、奥、右」


「間違ってたら?」


「そのときは一緒に謝ろう」


「軽いな」


カナタがくすっと笑う。


「でも、クロなら何とかしてくれるでしょ?」


「人任せにするなよ」


「ふふ。冗談」


俺たちは作戦を変更した。

ユラが中央の装置へ向かい、俺とレイが左側の通路を確保する。

カナタは奥の装置までのルートを確認した。


「ユラ、中央の装置をお願い」


「分かりました」


「レイ、左側の敵は俺たちで処理する」


「任せて!」


ユラが装置を操作する。

一つ目の装置が起動した。


続いて、俺たちは左側の装置へ向かう。

しかし、通路の途中で敵が大量に出現した。


「うわ、思ったより多い!」


レイが攻撃を受け止める。


「レイ、右から来る!」


「分かってる!」


俺は敵の隙を見て攻撃を仕掛ける。

その間にカナタが奥の装置へ移動していた。


「カナタ、そっちは大丈夫か?」


「大丈夫。こっちは敵が少ないよ」


「じゃあ、装置の準備を頼む」


「了解!」


俺たちが二つ目の装置を起動した直後、画面に変化が起きた。

遺跡の中央にあった大きな扉が、わずかに開いたのだ。


「おっ、合ってる!」


レイが声を上げる。


「やっぱり順番が正解みたいですね」


ユラも嬉しそうだ。


「カナタ、次は奥だな」


「うん。私が先に起動してくるね」


カナタが奥の装置を操作する。


三つ目の装置が起動。

そして最後の右側。


俺たちが移動しようとした瞬間、画面に警告表示が出た。


『WARNING』


『遺跡防衛システム起動』


「……おいおい」


大量の敵が出現した。

しかも、これまでの敵よりも動きが速い。


「これはちょっと厳しいですね」


ユラが言う。


「俺が引きつける。レイは援護してくれ」


「了解!」


二人で敵を引きつける。

しかし、敵の数が多く、なかなか前へ進めない。


「クロ、少し下がって!」


カナタの声が響く。


「何かあるのか?」


「敵の動きが一定だよ。左側に集まってるから、右の通路が空いてる!」


「分かった!」


俺はすぐに方向を変えた。


レイもそれに続く。

カナタは敵の動きを見ながら、少しずつ右側へ移動していた。


「ユラ、装置まであと少し!」


「はい!」


ユラが装置に到達する。

しかし、その直後に敵が襲いかかった。


「ユラ!」


「大丈夫です!」


カナタが援護に入り、敵の攻撃を止める。

その隙にユラが最後の装置を起動した。


『全装置起動確認』


『最終ゲート解放』


大きな音とともに、奥の扉が開く。


「よし!」


レイが声を上げた。


「行きましょう!」


ユラが走り出す。


俺たちも続いた。

最終エリアに到達した瞬間、画面に大きな敵が現れる。


「最後のボスか」


「残り時間は?」


「二分半!」


レイが答える。

かなり厳しいだが、ここまで来た以上、最後までやるしかない。


「カナタ、何か分かるか?」


「ちょっと待ってね……」


カナタはボスの動きを観察していた。

そして、数秒後。


「クロ、あの敵の背中にある装置を見て」


「背中?」


「うん。あれが弱点だと思う。でも正面から攻撃してもダメージが通らない」


「じゃあ、どうする?」


「レイが正面で引きつけて、ユラが右側の装置を操作する。私とクロで背中に回ろう」


「分かった」


「レイ、頼める?」


「もちろん!」


レイがボスの正面に立つ。


「こっちだよ!」


ボスが大きく腕を振り下ろした。

その隙に、俺とカナタは横へ回り込む。

ユラが右側の装置を操作すると、ボスの動きが一瞬止まった。


「今!」


カナタの声。

俺たちは背中の装置に攻撃を集中させた。

大きく体力が減る。


「効いてる!」


「もう一回!」


再びボスが動き出す。

しかし、今度はカナタが先に動いた。


「クロ、次は左!」


「了解!」


攻撃を避け、再び弱点を狙う。

レイとユラもタイミングを合わせて攻撃に参加した。


そして――。BOSS DEFEATED!


画面に表示された文字を見て、俺たちは一斉に声を上げた。


「よっしゃ!」


「やった!」


「間に合いましたね!」


残り時間は、わずか十数秒。

ギリギリのクリアだった。


SPECIAL TEAM、第三エリア突破!


実況の声が響く。

俺は一度息を吐いた。


「……危なかったな」


「でも、間に合ったね」


カナタが嬉しそうに笑う。


「カナタ、さっきの作戦すごかったな」


レイが感心したように言った。


「本当に。あの装置の順番、よく気づきましたね」


ユラも頷く。


「昔から、こういう謎解きは好きだったから」


カナタは少し照れたように答えた。


「それに、クロと一緒に遊んでた頃も、こういうゲームばっかりだったし」


「確かに。お前、こういうの見つけるの早かったよな」


「クロはすぐ敵を倒しに行っちゃうからね」


「いや、敵を倒さないと進めないだろ」


「そういうところ、変わらないね」


カナタが楽しそうに笑った。


配信のコメント欄も盛り上がっていた。


『カナタの判断力やばい』


『完全に司令塔だった』


『昔からゲーム上手かったけど、今も変わらないな』


『クロとカナタの連携が自然すぎる』


『SPECIAL TEAM、普通に強くない?』


控室でも、残りの四人が盛り上がっていた。


「カナタさん、すごいですね……!」


しずくが画面を見ながら呟く。


「昔からああいうゲームは得意だったのよ」


ユキが笑う。


「クロとの相性もいいね。あの二人、説明しなくても動きが分かってる感じ」


Riotも大きく頷いた。


「Very good! カナタ、すごい!」


シオンは画面を見たまま、短く言った。


「……いいチームだな」


一方、配信画面には現在の順位が表示されていた。



SPECIAL TEAM:1位

Re:Burstが2位。

LIVENTOが3位。


「おっ、暫定一位か」


俺が言うと、レイが嬉しそうに笑った。


「やったね!」


「ただ、まだ最初の競技です。油断はできません」


ユラは冷静だった。


「そうだな。次の競技もあるし」


俺はカナタを見る。


「でも、いいスタートだ」


「うん」


カナタは画面の中で小さく頷いた。


「私、今日ここに来てよかった」


「まだ始まったばかりだぞ」


「分かってるよ。でも、クロとまた一緒にゲームができて、みんなとも遊べて……すごく楽しい」


「そっか」


「だから、次も頑張るね」


「おう。頼りにしてる」


カナタは少しだけ頬を緩めた。


昔、一緒に遊んでいた頃と同じ笑顔だった。


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