58話
深夜三時過ぎ。
Discord通話終了。
しずくは完全に寝ていた。
ソファ。
猫のぬいぐるみ抱えたまま。
「……ほんと寝るの早いですね」
俺は小さく呟く。
真琴が毛布を持ってくる。
「かなり遊びましたからね」
「ですね」
そっと毛布を掛ける。
しずくは少し動いて。
「……クロさん」
寝言。
「なんで」
真琴が吹き出していた。
「懐かれてますねぇ」
「犬扱いされる理由分かった気がします」
「今更です?」
静かな夜だった。
「じゃあ」
真琴が時計を見る。
「私達も寝ますか」
「そうですね」
しずくはソファ。
だからいつも通り。
ベッドで二人。
最初の頃は少し気まずかった気もする。
でも今はかなり自然だった。
「電気消しますね」
「お願いします」
部屋が暗くなる。
静かかなり。
「……」
「……」
その数秒後。
もぞ。
「早」
真琴が近付いてくる。
いつもの抱きつき虫。
「伊織」
「はい」
「落ち着きます」
「猫ですか」
「かもしれません」
小さく笑う声。
真琴は眠い時はかなり甘える。
新人時代からそうだった。
疲れてる時ほど距離が近い。
でもそれを嫌だと思った事は無い。
「今日」
真琴が小さく呟く。
「楽しかったですね」
「ですね」
「しずく、かなり嬉しそうでした」
「元気でしたね」
「伊織も」
一瞬、少し止まる。
「……そうです?」
「かなり」
静かな声だった。
でもどこか嬉しそうだった。
「昔」
真琴がぽつりと言う。
「こんな風になると思ってませんでした」
「何がです?」
「伊織が人と遊んで、家呼んで、笑ってるの」
「……」
昔、配信以外ほぼ何も無かった。
仕事、編集、配信それで終わり。
でも最近は違う。
騒がしい人が増えた。
気付けば少し賑やかになっていた。
「……まあ」
俺は小さく息を吐く。
「悪くはないです」
その瞬間、真琴が少しだけ抱きつく力を強くする。
「はい」
短い返事。
でもかなり満足そうだった。
静かな夜、すぐ近くに体温がある。
昔から変わらない距離感。
それが妙に落ち着いて、俺もそのまま目を閉じた。
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