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Vtuberになったのに裏方をしてます  作者: 東海林


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54/56

54話

ゲームセンターを出た後の夕方。

人通りの多い駅前通り。


「楽しかったです……!」


しずくは猫のぬいぐるみを抱えながらかなり満足そうだった。


「それずっと持つんですね」


「取ってもらったので!」


「犬だなぁ」


「違います!」


真琴が横で少し笑う。


「かなり懐いてますけどね」


「真琴さんまで!」


騒がしい。

でも悪くない空気だった。


その時。


「あれ?」


前から声。

女性、俺は少し顔を上げる。


「……あ」


そこに居たのは長い茶髪。

ラフな私服、キャップ姿の女性。


お互い止まる。


「久しぶりじゃん」


「……久々ですね」


しずくが小さく首を傾げる。


「クロさんの知り合いですか?」


「まあ」


女性は少し笑った。


「ひど。まあって」


「説明面倒なので」


「相変わらずだなぁ」


その声、少し低め。

落ち着いた喋り方。

そして真琴が軽く頭を下げる。


「お久しぶりです」


「真琴ちゃんも久しぶり」


かなり自然な空気。

しずくだけが完全に置いていかれていた。


「……?」


女性はしずくを見る。


「ん?」


「あ、ごめん」


「初対面?」


「はい」


「そっか」


少し笑って。

そして。


「StellaLiveの朝霧レイです」


一瞬、しずく停止。


「……え?」


「えぇぇぇぇぇ!?!?」


駅前で叫ぶな。

周囲が少し見る。


「すみません!?」


「いやいいよいいよ」


朝霧レイ。

StellaLive所属。

かなり有名、歌系トップVtuber。

登録者も多い。

ライブ人気も高い。


しずくが固まっていた。


「えっ」


「えっ」


「本物!?」


「まあ本物」


レイが笑う。


「クロ、相変わらず変な交友関係してんなぁ」


「勝手に広がっただけです」


「嘘つけ」


昔からそうだった。

大会、イベント、案件。

いつの間にか知り合いが増える。

でも深く絡む事は少ない。


だからこうして会うのはかなり久しぶりだった。


「クロ、最近めっちゃ見るよ」


レイが笑いながら言う。


「Re:Burst大会とか」


「巻き込まれてるだけです」


「楽しそうだったけど?」


「……」


最近よく言われる。

その横、真琴がまた少し笑っていた。


「実際楽しそうでしたよ」


「真琴ちゃんずっとそれ言ってない?」


「事実なので」


レイが吹き出した。


「距離感変わってなくて安心したわ」


しずくはまだ少し混乱している。


「あの」


「ん?」


「クロさんとどういう関係なんですか……?」


「昔大会で一緒になった」


「かなり前ですね」


「まだクロが今より尖ってた頃」


「やめてください」


レイが笑う。


「当時ほんと喋んなかったよね」


「今もそんな変わらないです」


「いやかなり丸くなった」


真琴が頷く。


「本当に」


「本人だけ気付いてないタイプかぁ」


なんか居心地悪い。


「でも」


レイがしずくを見る。


「クロと普通に遊ぶ仲なんだ」


「え、まあ……」


「かなりレアだよ」


「そうなんですか?」


「クロ、自分から人と遊ばんし」


「……」


否定しにくい。

その時、レイがニヤッと笑う。


「しかも真琴ちゃん付き」


「セットなので」


「そこは否定しないんだ」


しずくが何故か少し笑っていた。

そしてレイはスマホを見て。


「あーやば」


「次あるんでしたっけ」


「収録」


忙しそうだなと思う。


「じゃ、またね」


「はい」


「クロ」


「?」


「今度StellaLiveとも何かやろ」


「考えときます」


「絶対やらない返事じゃん」


図星だった。

レイが笑いながら去っていく。

その背中を見送り。


しずくが静かに呟く。


「……クロさんって」


「はい?」


「ほんと謎ですよね」


「なんで?」


「普通に大物と知り合い出てくるので……」


その横で真琴だけが少し楽しそうに笑っていた。



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