42話
翌日。
LIVENTO事務所。
「……は?」
会議室、沈黙。
目の前に営業担当、グッズ担当、広報。
そして七瀬真琴。
「いやだから」
俺はもう一度説明する。
「Re:Burst大会の優勝特典で」
「優勝チームグッズ作るらしいです」
「で」
営業担当が静かに聞く。
「クロさんを含めたい、と」
「許可確認ですね」
数秒、沈黙。
そして。
「……初ですよね?」
「何がです?」
「クロさん個人グッズ」
「……あ」
一瞬、部屋が止まる。
真琴まで少し止まった。
「……ほんとだ」
誰かが呟く。
そう、今までクロ個人グッズは存在しなかった。
LIVENTO集合で周年記念。
そういうものはある。
でもクロ単体は一度も無い。
「えっ待って」
広報担当が資料を見返す。
「登録者100万ですよね?」
「はい」
「ソログッズ無し?」
「……無いですね」
普通に無かった。
「なんで!?」
「箱企画出ないので……」
「そこ!?」
会議室がざわつく。
いや実際そうなのだ。
イベント不参加、案件少なめ、コラボ少ない、表へ出ない。
その結果グッズ化タイミングが無かった。
「……逆にレアでは?」
誰かが呟く。
真琴が小さく頷いた。
「かなり」
「えっ欲しい人めっちゃ居そう」
「クロさん、固定ファン強いですし」
「表出ないから余計に」
なんか変な方向へ盛り上がってきた。
「いや別に普通でいいんですけど」
「普通じゃないんですよクロさん」
営業担当が真顔だった。
「100万登録で初グッズって何ですか」
「知りませんよ……」
俺だって初めて知った。
その時会議室のドア。
ガチャ。
「失礼しまーす!」
星宮アリス。
「聞いたよ!!」
早いなぁ。
「クロ初グッズ!?」
「らしいです」
「えぇぇぇ!?」
アリスが本気で驚いていた。
「今まで無かったの!?」
「はい」
「なんで!?」
「だから表出ないので……」
「そこで納得出来るのが怖い」
ルナまで入ってきた。
「いやでも確かに」
「クロ、マジで記念系ほぼ居ないよね」
「グッズ映えしない男」
「失礼だな」
でも実際かなりレアだった。
だからこそ、会議室全体が妙に盛り上がっている。
「しかも優勝記念だろ?」
アリスが笑う。
「絶対売れるじゃん」
「いやRe:Burst側の人気もあるでしょう」
「でもクロ初だよ?」
「レアカード扱いやめてください」
その時真琴が静かに口を開く。
「伊織」
「はい?」
「ファン、かなり喜ぶと思いますよ」
「……」
少し止まる。
真琴は穏やかに続けた。
「ずっと待ってた人、多いと思います」
静かな声だった。
その言葉で、少しだけ実感する。
初、本当に初めてなのだ。
クロ個人グッズ。
「……まあ」
俺は少し視線を逸らす。
「許可出るなら、別に」
するとアリスがニヤニヤし始めた。
「照れてる?」
「違います」
「絶対嬉しいじゃん」
「普通です」
その横で真琴だけが、少しだけ優しく笑っていた。
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