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Vtuberになったのに裏方をしてます  作者: 東海林


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42/56

42話

翌日。

LIVENTO事務所。


「……は?」


会議室、沈黙。

目の前に営業担当、グッズ担当、広報。

そして七瀬真琴。


「いやだから」


俺はもう一度説明する。


「Re:Burst大会の優勝特典で」


「優勝チームグッズ作るらしいです」


「で」


営業担当が静かに聞く。


「クロさんを含めたい、と」


「許可確認ですね」


数秒、沈黙。

そして。


「……初ですよね?」


「何がです?」


「クロさん個人グッズ」


「……あ」


一瞬、部屋が止まる。

真琴まで少し止まった。


「……ほんとだ」


誰かが呟く。

そう、今までクロ個人グッズは存在しなかった。


LIVENTO集合で周年記念。

そういうものはある。

でもクロ単体は一度も無い。


「えっ待って」


広報担当が資料を見返す。


「登録者100万ですよね?」


「はい」


「ソログッズ無し?」


「……無いですね」


普通に無かった。


「なんで!?」


「箱企画出ないので……」


「そこ!?」


会議室がざわつく。

いや実際そうなのだ。

イベント不参加、案件少なめ、コラボ少ない、表へ出ない。

その結果グッズ化タイミングが無かった。


「……逆にレアでは?」


誰かが呟く。

真琴が小さく頷いた。


「かなり」


「えっ欲しい人めっちゃ居そう」


「クロさん、固定ファン強いですし」


「表出ないから余計に」


なんか変な方向へ盛り上がってきた。


「いや別に普通でいいんですけど」


「普通じゃないんですよクロさん」


営業担当が真顔だった。


「100万登録で初グッズって何ですか」


「知りませんよ……」


俺だって初めて知った。

その時会議室のドア。


ガチャ。


「失礼しまーす!」


星宮アリス。


「聞いたよ!!」


早いなぁ。


「クロ初グッズ!?」


「らしいです」


「えぇぇぇ!?」


アリスが本気で驚いていた。


「今まで無かったの!?」


「はい」


「なんで!?」


「だから表出ないので……」


「そこで納得出来るのが怖い」


ルナまで入ってきた。


「いやでも確かに」


「クロ、マジで記念系ほぼ居ないよね」


「グッズ映えしない男」


「失礼だな」


でも実際かなりレアだった。

だからこそ、会議室全体が妙に盛り上がっている。


「しかも優勝記念だろ?」


アリスが笑う。


「絶対売れるじゃん」


「いやRe:Burst側の人気もあるでしょう」


「でもクロ初だよ?」


「レアカード扱いやめてください」


その時真琴が静かに口を開く。


「伊織」


「はい?」


「ファン、かなり喜ぶと思いますよ」


「……」


少し止まる。

真琴は穏やかに続けた。


「ずっと待ってた人、多いと思います」


静かな声だった。

その言葉で、少しだけ実感する。

初、本当に初めてなのだ。

クロ個人グッズ。


「……まあ」


俺は少し視線を逸らす。


「許可出るなら、別に」


するとアリスがニヤニヤし始めた。


「照れてる?」


「違います」


「絶対嬉しいじゃん」


「普通です」


その横で真琴だけが、少しだけ優しく笑っていた。


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