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Vtuberになったのに裏方をしてます  作者: 東海林


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4/6

4話

『LIVENTO大運動会』は、配信開始直後から凄まじい勢いだった。


同接は既に二十万を超えている。

3Dスタジオ内では、巨大モニターに配信画面とコメント欄が映し出されていた。


『うおおおおお』


『3Dだ!!』


『ルナかわい』


『蓮うるせぇw』


『アリス動きうるさくて草』


配信は順調。

珍しいくらい順調だった。


「平和ですね」


俺が呟くと、隣の真琴が頷く。


「逆に怖いです」


「分かる」


大型企画って、大抵何か起きる。

音ズレ、同期飛び、通信エラー、マイク事故。

だが今回は驚くほど安定していた。

だから俺の仕事もそこまで多くない。


モニター監視と軽い補助程度。

完全に裏方モードだった。


スタッフ席からステージを見る。

広い3Dスタジオ、走り回るVtuber達。

普段は画面越しでしか見ない連中が、今日は実際にその場に居る。

……いやまあ、実際には全員モーションキャプチャースーツなんだけど。


「クロ君」


「はい?」


後ろから声。

緒方玲だった。


「今暇?」


「今のところ」


「じゃあ休憩入っといて」


「珍しいですね」


「本番始まる前に色々潰せたから」


有能スタッフが多いとこうなる。

俺は軽く伸びをして席を立った。


休憩スペース。

自販機前でコーヒーを買う。


その時。


「……本当に居た」


横から声。

見ると、白雪ミオが呆然とした顔をしていた。


3D企画用衣装のまま。

まだ慣れてないのか、どこかぎこちない。


「お疲れ様です」


「お疲れ様ですじゃないですよ……」


「何がです?」


「なんで普通にスタッフ側に馴染んでるんですか」


「長いんで」


「いやそういう問題じゃ……」


そこへ。


「クロー!」


騒がしい声と共に、星宮アリスが飛び込んできた。


「お前マジで裏方やってんの!?」


「昨日から説明してません?」


「でもさぁ!」


アリスが俺を指差す。


「クロって箱企画来ない人じゃん!」


「まあ」


「なのに今日いる!」


「スタッフです」


「意味分かんない!」


リアクションが毎回でかい。

すると更に。


「……確かに珍しいわね」


天音ルナが缶ジュース片手に近付いてきた。


「クロ、箱企画ほぼ来ないし」


「必要性感じてないんで」


「言い切るなぁ」


ルナが苦笑する。

実際、俺はほとんど箱企画に参加しない。


大会も大型コラボも別に嫌いではない。

ただ、優先順位が低いだけだ。


「でも普通に助かってる」


ルナが続ける。


「さっきも同期ズレ一瞬で直してたし」


「慣れてるだけですよ」


「演者側のセリフじゃないんだよなぁ」


その時だった。

休憩スペース奥の大型モニターから、配信音声が流れてきた。


『というかさー!』


灰堂蓮の声。


『今日クロ来てるんだよな』


一瞬、空気が止まる。


「……は?」


俺がモニターを見る。

3Dステージ上、蓮が普通に喋っていた。


『しかもスタッフ側』


『え?』


『クロ!?』


『マジ!?』


『は????』


コメント欄が爆速で流れる。


おい。


「黒崎蓮司ぃ……」


「フルネーム出てますよ」


真琴が冷静に突っ込んできた。

配信内では。


『いや意味分からんくね?』


蓮が笑いながら続ける。


『俺さっき普通に配線直してるクロ見たんだけど』


『草』


『何してんのw』


『演者だろw』


『見たい見たい見たい』


『映せ!!』


当然コメントは大荒れ。

だがスタッフ席は配信画面に映らない。

カメラ導線も完全に分かれている。


だから視聴者には見えない。


『いや映んねーよ』


蓮が笑う。


『スタッフ側だから』


『なんでスタッフなんだよ』


『クロ何者???』


『伝説増えてて草』


ルナが吹き出した。


「完全にバレましたね」


「いや仕事内容まではバレてないです」


「時間の問題では?」


「否定出来ない……」


ミオなんてまだ混乱している。


「登録者百万人の人って、配線するんですね……」


「人によります」


「クロだけだと思います……」


たぶん俺もそう思う。

その後も配信は順調に続いた。


運動会企画、借り物競走、障害物レース。

Vtuber達が騒ぎながら走り回る。


その裏で、スタッフ陣は淡々と動いていた。


「三番カメラ切り替えます」


「了解」


「ルナさんマイク少し音割れ気味です」


「調整します」


俺も普通にその中へ混ざる。

そして。


「……伊織」


「はい?」


隣の真琴が、小さく笑った。


「なんだかんだ楽しそうですね」


「まあ、嫌いじゃないんで」


「配信が?」


「こういうの全部です」


スタジオ、配信前の空気。

スタッフの慌ただしさ。


Vtuber達の騒ぎ、コメント欄。

全部。


たぶん俺は、この業界そのものが好きなのだと思う。

だから配信者になった今でも。普通にスタッフ席に座っている。

もし「面白かった」「続き読みたい」と思ってもらえたら、ブックマークや評価(☆☆☆☆☆→★★★★★)してもらえるとめちゃくちゃ嬉しいです!次の更新のやる気になります。

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