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Vtuberになったのに裏方をしてます  作者: 東海林


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37/56

37話

朝、午前八時。


「……」


目を開ける。

眠い、重い。

そして。


「……近」


視界が七瀬真琴。

かなり近い抱きつかれていた。

完全に、腕、肩身体ごと絡みつくような状態。


「……」


俺は数秒、無言になる。

まあいつもの事だ。

昔から。


でも第三者に見られたら終わる距離感なのも事実だった。


「真琴」


「……ん」


「起きてください」


「……むりです」


「起きてるだろ」


少しだけ笑う声。

やっぱり半分起きていた。


「離れてください」


「寒いです」


「五月ですよ」


「気分です」


意味が分からない。

でも抱きつく力は全く弱まらない。


「……」


真琴はかなり寝起きに弱い。

そして寝ぼけると距離感が終わる。


「伊織」


「はい?」


「今日も忙しいですか」


「大会前ですし」


「寝てくださいね」


「説得力ゼロだなぁ……」


抱きついたまま言われても。

その時、スマホ通知。


Discord、鬼灯ガク。



『起きてるかー』


無視しよう。

でも追撃。


『練習今日昼からな』


『しずくちゃんガチガチで草』


少し笑ってしまう。


「……緊張してるみたいですよ」


「しずくさん?」


「はい」


「可愛いですね」


「犬みたいですよね」


「分かります」


真琴が普通に頷いた。


「懐いてますし」


「ですね」


その時、真琴が少しだけこちらを見上げる。


「伊織」


「はい?」


「最近、ほんと先輩してますね」


「なんですかそれ」


「前はもっと他人に興味無かったので」


……否定出来ない。

昔の俺は本当に自分の事しかやってなかった。


配信、編集、仕事、終わり。

でも今は違う。

Re:Burst。

しずく。

LIVENTO。


人が増えた。


「……まあ」


俺は小さく息を吐く。


「悪くないですよ」


すると真琴が少しだけ嬉しそうに笑った。


「はい」


静かな返事。

そしてまた肩へ顔を埋めてくる。


「……」


「……真琴」


「……あと五分」


「完全に寝る気だな?」


でも俺もそこまで急いでいるわけじゃない。

だから結局そのまま朝の静かな時間を、二人でだらだら過ごしていた。


かなり距離感のおかしい状態で。


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