33話
深夜。
Discord通話。
『やばい』
鬼灯ガクの第一声だった。
「どうしました」
『一人飛んだ』
「……はい?」
Re:Burst主催大会。
開催数日前。
ここに来て。
『体調不良で欠員』
通話の空気が少し重い。
『どうする?』
『今から人探す?』
『でも大会近いぞ』
シュウ達も少し困っている様子だった。
俺は椅子へ座りながら考える。
「代打探すしかないですよね」
『誰か居る?』
『クロ、交友広いだろ最近』
「言い方」
でも少しだけ考える。
FPS、配信慣れ、空気読める。
大会でも緊張しすぎない。
そして最近かなり懐いてる。
「……しずくとか」
一瞬、通話停止。
『あー』
『あり』
『めっちゃあり』
『空気合いそう』
反応が早い。
『実力どう?』
「普通に上手いですよ」
『なら決まりじゃん』
「いや本人確認を」
『呼べ呼べ』
『クロの知り合いなら安心感ある』
完全に任せる流れになっていた。
「……分かりました」
俺は小さくため息を吐く。
そして雨音しずくへDM。
『急なんですけど』
『大会出ません?』
数秒、既読。
そして。
『……はい?』
そりゃそう。
十分後、通話追加。
『こんばんは!?』
しずくの声。
かなり混乱している。
『えっえっ待ってください!?』
『Re:Burstさん!?』
『本物!?』
『こんばんはー』
『いつもクロがお世話になってます』
「親か?」
通話が笑いに包まれる。
しずく、完全にテンパっていた。
『いや待ってくださいほんとに大会って!?』
『欠員出ちゃってさ』
ガクが説明する。
『クロがお前どう?って』
『……クロさん?』
「いや人居なくて」
『でもでもでも!』
しずくが慌てる。
『私、個人勢ですよ!?』
『問題ある?』
『えっ』
ノアが普通に言った。
『大会なんて楽しければいいじゃん』
『クロも居るし』
『いやクロさん企業勢トップですよ!?』
「関係ないでしょ」
『あるんですよ普通は!?』
必死である。
でもRe:Burst側はかなり歓迎ムードだった。
『しずくちゃん配信慣れてるし』
『クロと相性良さそうだし』
『声かわいいし』
『最後やめろ』
俺が止めるとしずくが小さく笑った。
少し緊張が解けたらしい。
『……ほんとにいいんですか?』
『もちろん』
『むしろ助かる』
『クロの知り合いって時点で安心』
その言葉でしずくが少し静かになる。
「嫌なら断って大丈夫ですよ」
俺が普通に言う。
「急ですし」
数秒、沈黙。
そして。
『……出たいです』
小さな声。
でもかなり嬉しそうだった。
『よっしゃ!!』
『決まりー!』
『新メンバー歓迎!』
通話が一気に明るくなる。
しずくはまだ少し混乱していた。
『えっほんとに私、あの大会出るんですか……?』
「そうなりますね」
『うわぁぁぁ……』
嬉しさと緊張が混ざってる声。
分かりやすい。
『クロさん』
「はい?」
『責任取ってくださいね』
「何の」
『緊張で死にそうなんですけど!』
通話が爆笑に包まれる。
その時、別窓通知。
七瀬真琴。
『しずくさん、大会出るんですね』
情報早いな。
俺は短く返す。
『欠員です』
数秒後。
『伊織、最近かなり人増えましたね』
「……」
少しだけ返事に困った。
でも通話越しに楽しそうな声が響いていてそれが、少し悪くないと思ってしまった。
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