31話
午後十一時。
クロ配信枠。
【深夜ゲー】なんか二人用ゲームやる【ゲスト有】
配信開始。
『うおおおおお』
『クロ配信!?』
『ゲスト!?』
『まさか』
『箱内コラボ!?』
待機人数が既におかしかった。
俺は少しため息を吐く。
「はいどうも」
いつもの声。
「クロです」
『きたーーー!!』
『待ってた』
『タイトル雑すぎる』
『ゲスト誰!?』
コメント欄の勢いが凄い。
「今日は」
俺はコントローラーを持ちながら続ける。
「二人ゲームなんで」
「ちょっと人呼んでます」
『まさか』
『ついに』
『LIVENTOコラボ!?』
数秒後、隣から静かな声。
「こんばんは」
一瞬、コメント欄停止。
そして爆発。
『!?!?!?!?』
『真琴さん!?!?』
『マネージャー!?』
『え!?!?!?』
画面にはいつものクロ立ち絵。
そして横へ簡易アイコン表示。
七瀬真琴
『マネージャー出てきた!?』
『初箱内コラボ相手マネージャーなの!?』
『意味分からんくて草』
「いや二人ゲームなんで」
「スタッフ捕まらなかったので」
『スタッフ扱いで草』
『距離感終わってる』
真琴は少し笑っていた。
「伊織に呼ばれました」
『伊織って言った!?』
『本名助かる』
『距離が近い』
『もう夫婦だろ』
「違います」
俺と真琴の声が被る。
一瞬静かになる。
『息ぴったりで草』
『否定早い』
『もう慣れてる』
「お前ら楽しそうだな……」
頭を抱える。
ゲーム開始、二人協力型。
パズル、アクション。
「そっち押してください」
「はい」
「いやそれ逆」
「……あ」
『真琴さんゲーム慣れてない?』
『普通に会話自然すぎる』
『空気が長年連れ添ったやつ』
「昔ちょっとやってました」
真琴が静かに答える。
『昔からなので』
『出た』
『万能ワード』
「擦られてるなぁ……」
俺は苦笑しながらギミックを進める。
すると。
「伊織」
「はい?」
「落ちますよ」
「えっ」
キャラが落下。
『草』
『クローーー!!!』
『下手!?』
「いや今話しかけたじゃないですか!」
「集中力弱いですね」
「酷い」
コメント欄大爆笑。
『クロこんな感じなんだ』
『Re:Burstと空気違う』
『なんか落ち着く』
『夫婦配信』
「だから違います」
また声が被る。
『もう狙ってるだろ』
『仲良すぎる』
その時、真琴が小さく笑った。
「コメント欄、楽しそうですね」
「皆好き勝手言うんですよ」
「伊織が楽しそうだからでは?」
一瞬コメント欄加速。
『!?!?』
『真琴さん!?』
『今の良』
『理解者ポジすぎる』
「やめてください」
普通に恥ずかしい。
なんでこの人、時々自然に変な事言うんだ。
配信開始から一時間後。
かなり空気は緩んでいた。
「クロさん」
コメント。
『LIVENTO内初コラボがマネージャーなの意味分からん』
「俺もそう思います」
「私も少し思ってます」
『自覚あった』
『でも違和感無いんだよな』
『自然すぎる』
すると真琴がぽつりと言った。
「でも」
「はい?」
「伊織、箱内の人とコラボするって少し嬉しそうでしたよ」
「……」
一瞬止まる。
『お?』
『おお?』
『真琴さん!?』
「いや別に」
「今日配信前、結構悩んでましたよね」
「言うな」
『草』
『照れてたんだ』
『ほんとに身内だと照れるタイプだ』
終わった。
完全にバレてる。
コメント欄が楽しそうすぎる。
「……ほんと面倒だな」
俺がため息を吐くと真琴は少しだけ楽しそうに笑っていた。
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