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Vtuberになったのに裏方をしてます  作者: 東海林


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30/57

30話

公式配信終了後。

午後九時半。


「クローー!!」


「逃げるなー!!」


「うわ」


スタッフ席から撤収しようとした瞬間。

捕まった。

星宮アリス、水瀬ルナ、白雪ミオ…

完全包囲である。


「ちょっと話そうか?」


「嫌な空気だなぁ……」


俺は小さくため息を吐いた。

周囲ではスタッフが片付けを始めている。


真琴はその少し後ろで、完全にまた始まったみたいな顔をしていた。


「で?」


俺は諦めて聞く。


「何です?」


「クロさぁ」


アリスが腕を組む。


「そろそろ表出なよ」


「出てるじゃないですか」


「Re:Burstで」


「他箱なんだよなぁ……」


ルナが呆れたように笑った。


「なんで他箱ではあんな楽しそうなのに、自箱だと裏方なの?」


「仕事あるんで」


「仕事作ってるのクロじゃん」


否定出来ない。

実際、自分から裏へ回ってる部分もある。


「でもさ」


ミオが少し不思議そうに言った。


「クロさんって、私達とほぼコラボしてないですよね」


「……あ」


一瞬、全員止まる。


「……」


「……」


「……」


俺も少し考える。

そして。


「……してないですね」


普通に同じ箱なのにほぼ無かった。


大型企画では同じ空間に居る。

でも個人コラボ、ゲーム、雑談。

そういうのは本当に記憶に無い。


「えっ待って」


アリスが目を見開く。


「マジじゃん!?」


「ほんとだ……」


ルナまで驚いている。


「クロ、他箱とは遊ぶのに!?」


「言い方」


「Re:Burstとはめっちゃ遊んでるのに!?」


「最近ですよ」


「でもうちらとは無いよ!?」


それは……そう。

言われて初めて気付いた。


同じ箱なのに普通に喋る。

撮影もするら仕事もする。

でもVtuberとして一緒に配信した事がほぼ無い。


「なんで……?」


ミオが本気で不思議そうだった。


「いや別に嫌いとかじゃなくてですね」


「知ってる!」


「むしろ距離近い方だし」


「でも配信はしないよね」


その通りだった。

気付けば、仕事仲間として完成しすぎていたのかもしれない。


「……なんか」


ルナが笑い始める。


「クロって同僚なんだよね」


「分かる」


アリスも頷く。


「配信者ってより会社の人感ある」


「やめてくれません?」


普通にダメージ入る。

その時。


「伊織」


後ろから真琴。


「確かにコラボしてないですね」


「真琴さんまで?」


「意外でした」


お前も今気付いたのか。

いやでも確かに言われるまで自然すぎて気付かなかった。


「……」


少し考える。

なんでだ?嫌だったわけじゃない。


むしろ気楽だ、気を遣わないし距離も近い。

でも近すぎて逆にコラボするって発想が無かったのかもしれない。


「クロ」


アリスがニヤニヤし始めた。


「じゃあやろうよ」


「何を」


「コラボ!」


「今更?」


「今更!!」


元気だなぁ。


「でも絶対面白いよね」


ルナも笑っている。


「クロ、外だと結構喋るの分かったし」


「最近柔らかいし」


「Re:Burstで鍛えられた?」


「やめろ」


その時、ミオがぽつりと言った。


「……クロさんって、もしかして身内だと逆に照れるタイプです?」


一瞬静かになる。


「……」


「……」


「……」


アリスが吹き出した。


「うわ図星だ!!」


「違います」


「否定遅い!」


「クロそういうとこあるよね」


ルナが楽しそうに笑う。

その横で真琴だけが少し納得したように頷いていた。


「たしかに」


「なんでそっち側なんです?」


「昔からそうなので」


またその言葉だ。

でも真琴だけは、本当に昔から知っている。

俺が近い相手ほど雑に距離を取るタイプなのを。


「……まあ」


俺は少し考えて。


「機会あればやりますよ」


一瞬、空気が止まる。


「……」


「……」


「……え?」


「何です?」


「今クロがコラボするって言った」


「録音した!?」


「切り抜き確定」


「だからお前らさぁ!!」


スタジオに笑い声が響いていた。

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