27話
撮影終了後。
午後九時半。
「お疲れ様でしたー!」
「編集よろしくー!」
「任せてください……」
LIVENTO事務所を出る頃には、普通に疲れていた。
撮影、確認進行、機材対応。
ほぼ裏方である。
「クロさんって本当に何でもしますよね……」
隣で歩く雨音しずくが呆れたように言った。
「人足りないんですよ」
「それでトップVが裏方やるの普通なんです?」
「うちは割と」
「怖い会社だ……」
失礼だなでも少し分かる。
普通、登録者100万Vが公式チャンネル編集担当とかやらない。
「じゃあ私はこっちなので!」
「はい」
「また遊び行きます!」
「機材相談なら」
「もうそれ建前ですよね?」
しずくが笑いながら去っていく。
元気だな本当に。
その後、自宅。
「……疲れた」
椅子へ座る。
PC起動、Discord通知大量。
「嫌な予感」
そして案の定鬼灯ガク。
『お前次も出るから』
「確定なんだ……」
俺は小さく呟いた。
通話へ入る。
「はい」
『クローー!!』
うるさい。
『お疲れー』
『LIVENTO撮影終わった?』
「なんで知ってるんです?」
『真琴さん』
「情報源が近いなぁ……」
普通に繋がってるんだよな最近。
怖い。
『で』
ガクが笑いながら言う。
『次の大会決まった』
「早くないです?」
『FPS』
『箱内カスタム大型戦』
『Re:Burst主催』
嫌な予感しかしない。
「それで?」
『参加メンバー発表するぞー』
ガクが読み上げ始める。
『俺』
『シュウ』
『ノア』
『レン』
『カイ』
その後もRe:Burstメンバーの名前が上がっていく。
そして。
『クロ』
「……」
「なんで確定なんです?」
『もう運営通した』
「早ぇよ!!」
通話が爆笑に包まれる。
『いやだって来るだろ?』
「確認しろ」
『断る?』
「……」
一瞬黙る。
『ほらな』
『肯定じゃん』
『もうRe:Burst所属でいいよ』
「嫌です」
即答。
でも断る気があまり無いのも事実だった。
前回、普通に楽しかった。
それが問題だった。
『しかも今回』
ノアが笑いながら言う。
『クロさん用にちゃんと枠あるんですよ』
「嫌な言い方だなぁ……」
『ゲスト枠』
『実質固定メンバー』
『準Re:Burst』
「言い方ァ」
好き放題である。
『ちなみに』
シュウが聞いてくる。
『LIVENTO側には言った?』
「まだです」
『絶対騒ぐじゃん』
「騒ぎますね」
特にアリス。
面倒な未来が見える。
『真琴さんは?』
「知ってます」
『でしょうね』
全員納得していた。
その時、部屋のインターホン。
「……あ?」
こんな時間に?
玄関を開ける。
「こんばんは」
七瀬真琴。
「なんで居るんです?」
「近く通ったので」
「絶対嘘」
「本当です」
そのまま普通に部屋へ入ってくる。
もう慣れた。
『来た?』
『マネージャーさん?』
『タイミング良』
「聞こえてますよ」
真琴が普通に通話へ返事する。
『こんばんはー』
『お疲れ様です』
自然すぎる。
他箱なのに。
「で」
真琴が俺を見る。
「次の大会ですか?」
「なんで分かったんです?」
「顔」
「便利ですねそれ」
『真琴さんクロの扱い慣れすぎなんだよな』
ガクが笑う。
真琴は少しだけ肩を竦めた。
「昔からなので」
またそれだ。
でも最近、この言葉が少し増えてる気がする。
『というわけで』
ガクが楽しそうに言った。
『クロ、次回もよろしくな!』
「……はいはい」
小さくため息を吐きながら。
でも少しだけ笑ってしまった。
たぶんもう断る気は無かった。
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