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Vtuberになったのに裏方をしてます  作者: 東海林


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23/29

23話

「……え?」


雨音しずくが止まった。


「クロさんの家、行っていいんですか?」


「機材見るならその方が早いので」


「いやでも」


かなり困惑している。

まあ普通そうだ。


配信者の家。

しかも企業勢トップ層。

普通はかなり警戒する。


「真琴さんも来ますし」


「えっ」


後ろ。

七瀬真琴が小さく会釈した。


「私も行きます」


「あ、はい!」


しずくが急に安心した顔になる。

分かりやすいな。


俺は少し苦笑した。



数十分後。

久瀬伊織宅。


「お邪魔します……!」


しずくがかなり緊張しながら入ってくる。

その後ろから真琴。


「適当に座ってください」


「は、はい……」


しずくが部屋を見回す。

そして。


「……思ったより普通」


「何だと思ってたんです?」


「もっと真っ暗な部屋かと」


「偏見がひどい」


でも少し分かる。

クロのイメージって、そういう感じらしい。

実際はかなり普通の部屋だった。


配信デスク、PC、モニター、棚、ゲーム機。

多少散らかってはいるが、生活感のある部屋。


「へぇぇ……」


しずくが興味深そうに配信環境を見る。


「これ全部自分で組んだんです?」


「まあ」


「やっぱり……」


納得されてしまった。

真琴はその横で自然に冷蔵庫を開けていた。


「伊織」


「はい?」


「また飲み物コーヒーしかないですね」


「買い忘れました」


「知ってます」


しずくがゆっくり振り返る。


「……」


「……」


「なんです?」


「いや」


しずくが真顔だった。


「ほんとに自然ですね」


「何がです?」


「真琴さんが」


確かに真琴は普通に部屋へ馴染んでいた。

勝手知ったるという感じで。


「昔からなんで」


真琴が普通に答える。


「へぇぇ……」


しずくが妙に感心していた。


「で」


俺は配信デスクへ座る。


「どこ気になってました?」


「あっ、えっと!」


しずくが慌てて近付いてくる。


「音です!」


「なるほど」


俺はPCを起動。

OBS、ミキサー、音声設定。


「しずくさん、多分ノイズ処理強すぎです」


「えっ」


「だから声潰れてる」


「うわマジだ……」


設定を見せながら説明する。

しずくは真剣に聞いていた。


「クロさんってほんと説明上手いですね」


「配信者なんで」


「いやそれだけじゃないですよ!」


鋭い。

その横で真琴が静かにソファへ座る。

完全にいつもの位置。


「……」


しずくがまたそっちを見る。


「真琴さんって、いつもこんな感じなんですか?」


「どんな感じです?」


「なんかもう住んでる人みたいな」


「違います」


俺と真琴の声が被った。

一瞬静かになる。


しずくが吹き出した。


「息ぴったりじゃないですか!」


「長い付き合いなんで」


また同じ答え。

でも実際それしかない。


新人時代からずっと一緒。

だから今更距離感とか無い。


「……いいなぁ」


しずくがぽつりと言った。


「ん?」


「なんか信頼感ある感じ」


真琴が少しだけこちらを見る。

俺は視線を逸らした。

そういう事を改めて言われると、妙に恥ずかしい。


「ちなみに」


しずくが部屋を見回しながら聞いてくる。


「クロさんって家だと何してるんです?」


「寝てます」


「嘘だ」


「いや本当に」


「ゲームか編集じゃないです?」


「……まあ」


否定しきれない。

すると。


「基本そうですね」


真琴が普通に頷いた。


「放置すると永遠にPC前居ます」


「やめてください」


「最近はRe:Burstの人達ともゲームしてますし」


「うわ情報出る」


「別に隠してないですよね?」


「まあ」


しずくがニヤニヤし始めた。


「へぇぇぇ……」


「なんですか」


「最近楽しそうだなーって」


「皆それ言う」


そんなに分かりやすいのか俺。

少しだけ困りながら。

でも部屋の空気は、不思議と居心地が悪くなかった。


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