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Vtuberになったのに裏方をしてます  作者: 東海林


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21/29

21話

「えっ、事務所行っていいんですか!?」


カフェを出た直後。

雨音しずくが目を輝かせていた。


「別に隠すほどでもないですし」


「いやでも企業勢の事務所ですよ!?」


「まあそうですね」


「すご……」


本当に嬉しそうだった。

理由は単純。


しずくが機材相談を続けた結果。


「実際見た方が早いかなって」


そうなった。

LIVENTOには収録ブースもある。

機材も多い。


参考にはなるだろう。


「やったぁ……」


しずくが隣で小さくガッツポーズしている。

なんだろうな犬っぽい。

懐き方が。



数十分後。

LIVENTO事務所。

エントランス。


「うわぁ……」


しずくが完全にキョロキョロしていた。


「企業勢って感じする……」


「企業勢ですからね」


「当たり前だけど!」


受付スタッフがこちらを見る。


「あ、久瀬さんお疲れ様です」


「お疲れ様です」


普通に通る。

しずくがその横で小声になった。


「……クロさん普通に社員みたい」


「やめてください」


否定しづらいから。

実際、裏方にも居る時間長いし。


そのまま廊下を進む。

すると。


「……あれ?」


向こう側から声。

星宮アリスだった。

そして。


「えっ」


止まる。

しずくを見る。

俺を見る。


「……誰!?」


声がでかい。


「個人勢の知り合いです」


「知り合い!?」


しずくが慌てて頭を下げた。


「あっ、雨音しずくです!」


「知ってる!」


アリスが即答する。


「歌上手い子じゃん!」


「えっほんとですか!?」


「配信見た事ある!」


しずくの顔が一気に明るくなる。

ちょろい。

すると。


「どうしたの?」


ルナ、その後ろからミオ。

全員集まってきた。


「クロが女連れてる!!」


「語弊があるだろ」


「違うんです!?」


しずくが何故か焦っていた。

なんで。


「個人勢の雨音しずくさんです」


「どうも……!」


ぺこり。

LIVENTO側も普通に挨拶を返す。

だが。


数秒後。


「……え?」


ルナが少し不思議そうに言った。


「クロ、普通に他人連れてくるんだ」


「そこ?」


ミオも頷く。


「確かにちょっと珍しいですね」

 

……まあそうか。

俺は基本、一人で居る。

だから余計珍しいのかもしれない。


「機材見たいらしくて」


「なるほどね」


ルナが納得した。

するとしずくが小さく俺へ近付いてくる。


「……クロさん」


「はい?」


「なんか緊張してきました」


「今更?」


「だって有名人いっぱい居る!」


「お前も配信者だろ」


「企業勢は別です!」


その反応に、アリス達が笑っていた。

その時。


「伊織」


後ろから声。

七瀬真琴。


「あ、お疲れ様です」


「お疲れ様です」


そして真琴はしずくを見る。

一瞬だけ少し観察するみたいに。


「あ」


しずくが慌てて頭を下げた。


「は、初めまして! 雨音しずくです!」


「七瀬です」


落ち着いた声。

しずく、ちょっと緊張してる。


「……この子ですか」


真琴がぽつりと言う。


「何がです?」


「伊織に懐いてる個人勢」


「言い方」


どこ情報だ。

いや多分切り抜きだなこれ。


「うぅ……」


しずくが妙に恥ずかしそうにしていた。


「なんか全部知られてる……」


「まあまあ」


ルナが笑う。


「クロ周り、最近切り抜き多いから」


「人気者ですねぇ」


アリスがニヤニヤしていた。


「……」


その横で真琴は静かにしずくを見ていた。

別に怖いわけじゃない。

でもなんというか。


少しだけ確認してるみたいな視線だった。

そして。


「伊織」


「はい?」


「機材室使うなら申請だけお願いします」


「了解です」


「あと」


真琴が少しだけ間を置く。


「帰り遅くしすぎないでくださいね」


「子供扱いされてる……」


「されてますね」


しずくが素直に頷いた。


「否定して」


周囲が笑いに包まれる。

そんな中、しずくは少しだけ楽しそうに周囲を見回していた。


企業勢の事務所。

人気V達。

そしてその輪の中に普通に居るクロ。

たぶん、彼女にはそれが少し新鮮だった。


もし「面白かった」「続き読みたい」と思ってもらえたら、ブックマークや評価(☆☆☆☆☆→★★★★★)してもらえるとめちゃくちゃ嬉しいです!次の更新のやる気になります。

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