17話
午後十時。
配信終了後、自宅。
「……疲れた」
俺――クロこと久瀬伊織は、椅子へ深く沈み込んだ。
今日の配信はソロ雑談。
なのにコメント欄は終始。
『Re:Burstまた出ないの?』
『ガクさんと仲良いんだね』
『クロさん楽しそうだった』
こんなのばっかりだった。
「お前ら大会好きすぎだろ……」
小さく呟きながら、Discordを開く。
通知数が酷い。
Re:Burstサーバー。
個人DM、メンション。
なんかもう増えてる。
「……なんで俺ここ入ってるんだ」
自分でも分からない。
数日前まではほぼ交流無かったのに。
すると通知。
鬼灯ガク。
『今暇?』
嫌な予感。
だがなんとなく断る気にもならなかった。
通話へ入る。
「はい」
『クローー!!』
うるさい。
『配信お疲れー!』
「お疲れ様です」
『雑談見てたぞ』
「監視?」
『リスナーだが?』
「怖……」
笑い声。
すると別の声。
『あ、来た』
天狼シュウ。
『クロさんちーっす』
「どうも」
『今日の配信コメント欄Re:Burstだらけで草だった』
「お前らのせいですよ」
『人気者じゃん』
その時、更に通話参加音。
『こんばんは』
黒羽ノア。
普通に増えていく。
「なんで集まってるんです?」
『なんとなく?』
『居たから』
『雑談』
軽い、距離感が軽い。
他箱とは思えない。
『というかクロさん』
シュウが笑いながら言う。
『今日ソロ配信なのにめっちゃ楽しそうでしたね』
「そんな変わりました?」
『分かりやすかった』
『声ちょっと柔らかかったよな』
ノアまで頷く。
……そんなにか?
『LIVENTOだともっと落ち着いてるイメージ』
『なんか今日テンション高めだった』
「お前らがコメント欄居たからでは?」
『嬉しかった?』
「黙れ」
通話が笑いに包まれる。
『で』
ガクが急に言った。
『今からゲームするけど来る?』
「急だなぁ」
『VALO』
「……」
『あ、迷ってる』
『クロさんFPSもやるんだ』
「まあ多少」
『多少で強そうなのやめて』
シュウが呆れた声を出す。
正直、少し悩む。
明日も仕事。
配信、編集。
普通なら断る。
でも。
「……少しだけなら」
『うお来た!!』
『やったー』
『確保成功』
「お前らさぁ」
なんだこの空気。
でも嫌じゃない。
気楽だった。
変に気を遣わなくていい。
ただゲームするだけ。
昔みたいに。
数十分後。
『クロさん後ろ!』
「見えてます」
『うわ今のカバー上手』
『何で撃ち勝つ!?』
『絶対多少じゃない!!』
通話が騒がしい。
そして普通に楽しい。
『クロさんって』
ノアがぽつりと言った。
『思ったより人付き合い悪くないですよね』
「失礼だな」
『いやもっと一匹狼タイプかと』
『分かる』
シュウも笑う。
『実際は普通に喋るし』
『ノリも良いし』
『なんで今までコラボしなかったんだ?』
「面倒だからです」
『そこだけは一貫してるなぁ』
ガクが笑った。
その時スマホが震える。
画面を見る。
七瀬真琴。
『まだ起きてるんですね』
少し笑う。
たぶん配信終わったの見てたな。
俺は短く返す。
『ゲームしてます』
数秒後。
『珍しい』
それだけ。
でもその返事が妙に落ち着いた。
『クロさん?』
「はい?」
『今ちょっと笑いました?』
シュウが聞いてくる。
「気のせいです」
『絶対違う』
『今日なんか機嫌良いよな』
『分かる』
……そんなに分かりやすいか俺。
少しだけ困りながら。
でも結局、俺はそのまま深夜まで通話へ残っていた。
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