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Vtuberになったのに裏方をしてます  作者: 東海林


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16/29

16話

翌日。

午後一時。


LIVENTO事務所。


「……帰りたい」


エレベーター前で、俺は小さく呟いた。


「まだ来たばっかりですよ」


隣で真琴が苦笑している。


「絶対騒がれてますって」


「でしょうね」


他人事みたいに言うなこのマネージャー。

昨日のRe:Burst杯。


結果、優勝。

そしてかなり盛り上がった。


SNS、切り抜き、トレンド。

全部騒がしかった。


特に。


『クロ、思ったより楽しそう』


この感想がやたら多かった。

……なんか複雑である。


「まあ」


真琴がカードキーを通しながら言う。


「諦めましょう」


「嫌だなぁ……」


扉が開く。

事務所へ入る。

そして。


「クロぉぉぉぉ!!!」


「うわっ」


突撃。

星宮アリスだった。


勢いがすごい。


「なんで言わなかったの!?」


「いや聞かれてないですし……」


「マリカ大会出るなら言えよぉ!!」


完全に騒いでいた。

その後ろでは、ルナとミオも居る。


全員ニヤニヤしてる。

嫌な予感しかしない。


「いやぁ」


ルナが笑いながら近付いてくる。


「まさか外部大会で優勝するとは」


「運です」


「まだ言う?」


「言います」


すると。


「クロさん」


ミオが少し目を輝かせていた。


「思ったよりめちゃくちゃ喋るんですね」


「普段も喋ってますよ?」


「でも昨日なんか違いました!」


……それは否定しづらい。

昨日は確かに、かなり気楽だった。


「というか!」


アリスがまた騒ぐ。


「なんでRe:Burstであんな馴染んでんの!?」


「友達いるの初めて知った!」


「失礼だな!?」


「でもガクさんとの距離感すごかったよね」


ルナが笑う。


「昔からの友達感あった」


「まあ昔からなんで」


「えっマジで?」


「デビュー前から知り合いです」


一瞬、全員止まる。


「……へぇ」


ルナが少し驚いた顔をした。


「なんか意外」


「業界入る前からゲーム仲間みたいな感じです」


「クロにゲーム友達居たんだ……」


「お前ら俺を何だと思ってる?」


最近ひどくないか。


「で?」


アリスが机へ身を乗り出してくる。


「次いつ出るの?」


「出ません」


「即答ぁ!」


「いやもう十分でしょ」


「Re:Burst側めっちゃ呼ぶ気だったじゃん!」


それはそう。

大会後の二次会でも言われた。


『次も呼ぶ』


完全に固定枠扱いされていた。


「伊織」


その時、真琴がスマホ画面を見ながら言う。


「もう切り抜き出てます」


「早……」


画面を覗く。


【クロ、外部大会で無双】


【クロ、思ったより陽キャ】


【Re:Burstに馴染みすぎる男】


「やめてくれ……」


頭を抱える。

すると。


「でも」


ルナが少しだけ笑った。


「良かったんじゃない?」


「何がです?」


「楽しそうだった」


その言葉に、少しだけ止まる。


「……まあ」


否定はしなかった。

昨日は普通に楽しかった。

久々だったのだ。

ただゲームして、騒いで、笑う配信。


「なんかさ」


ルナが続ける。


「クロって、普段ちょっと仕事モード強いじゃん」


「そんなつもり無いんですけどね」


「でも昨日は違った」


アリスも頷く。


「なんか普通のゲーム好きな兄ちゃんって感じ!」


「語彙」


「うるさい!」


でも言いたい事は分かる。

昨日は数字とか、空気とか、そういうのをあまり考えていなかった。


ただ遊んでいただけだった。


「……まあでも」


俺は少し考えて。


「たまにはああいうのも悪くないですね」


一瞬、周囲が静かになる。


「……」


「……」


「……」


「なんですか」


「いや」


ルナがニヤついた。


「昨日から素直じゃない?」


「気のせいです」


「絶対違う」


アリスが爆笑していた。

その後、休憩スペース。


俺はコーヒーを飲みながらスマホを見る。

通知が多い、Re:Burst勢からの連絡。


切り抜き、SNS。

そしてDiscord通知。


鬼灯ガク。


『次FPS大会な』


「早いんだよなぁ……」


思わず呟く。

すると後ろから真琴。


「また呼ばれてます?」


「なんで分かるんです?」


「顔」


「そんな分かりやすいです?」


「かなり」


真琴が小さく笑う。


「で、出るんです?」


「……どうでしょうね」


否定しなかった。

その瞬間、真琴が少しだけ目を細めた。

たぶんそれだけで十分伝わった。


もし「面白かった」「続き読みたい」と思ってもらえたら、ブックマークや評価(☆☆☆☆☆→★★★★★)してもらえるとめちゃくちゃ嬉しいです!次の更新のやる気になります。

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