15話
Re:Burst杯終了後。
時刻は深夜一時を回っていた。
『お疲れ様でしたー!』
『楽しかったー!』
『次こそ勝つ!!』
通話内ではまだ騒がしい声が飛び交っている。
大会は終わった、だが誰もすぐには抜けない。
大型コラボ後特有の空気だった。
俺は自宅の椅子へ深く座りながら、小さく息を吐く。
「疲れた……」
『優勝した奴のセリフじゃねぇ』
ガクが笑う。
『しかも初参加』
『いやマジで強かったっす』
シュウも悔しそうだ。
『クロさん絶対また呼びます』
ノアが即答する。
「いやもう十分でしょ」
『ダメです』
『却下』
『次はFPS』
『逃がさねぇ』
「圧が強いなぁ……」
コメント欄もまだ盛り上がっていた。
『二次会助かる』
『クロまだ居る!』
『思ったより長く喋るな』
『他箱なの忘れる』
……それは俺も少し思っていた。
妙に馴染むのだ。
Re:Burstの空気。
騒がしいけど気楽。
変に気を遣わない。
『というかさ』
ガクが急に言った。
『クロ』
「はい」
『お前もうRe:Burst来いよ』
一瞬、通話が静かになる。
そして。
『あー』
『分かる』
『馴染みすぎなんだよな』
『今日だけで所属感ある』
好き勝手言われ始めた。
「いやいや」
俺は苦笑する。
「普通にLIVENTOなんで」
『でもお前箱企画来ないじゃん』
「否定出来ない……」
『Re:Burstだとめっちゃ参加してる』
「今日だけです」
『また来るだろ?』
「……まあ、機会あれば」
『ほらな!!』
ガクが爆笑していた。
その時、Discord通知。
個人メッセージ。
送信者――七瀬真琴。
『楽しそうですね』
少し笑ってしまう。
たぶん配信見てたなこれ。
俺は短く返信する。
『まあそこそこ』
数秒後。
『珍しい』
それだけだった。
でも妙に安心する返事だった。
『クロさんってさ』
ノアが少し興味深そうに聞いてくる。
『なんで今まで外部コラボしなかったんです?』
「面倒だからです」
『言った!!』
『本音出た!!』
『潔すぎるw』
通話が笑いに包まれる。
でも本当にそうだ。
スケジュール、調整、空気読み。
色々考えると面倒になる。
だから避けていた。
『でも今日は来たじゃん』
シュウが聞く。
「ガクに借りあるんで」
『義理堅ぇなぁ』
『あとちょっと楽しそうだった』
「……まあ」
否定しなかった。
ゲームそのものも楽しかった。
通話の空気も悪くない。
久々だったのだ。
こういうただ遊ぶだけみたいな配信。
『クロってさ』
ガクが急に言う。
『もっと人と遊んだ方が良くね?』
「余計なお世話では?」
『いやマジで』
『今日のお前かなり良かったぞ』
少しだけ言葉に詰まる。
褒められ慣れていない。
数字の話なら別だ。
でも配信そのものを言われると、少し困る。
『なんか』
ノアも続ける。
『ソロの時より力抜けてましたよね』
『分かる』
『自然体感あった』
コメント欄も同意していた。
『クロ今日かなり好き』
『空気柔らかかった』
『また見たい』
『定期開催しろ』
「勝手に決めないでください」
『じゃあ次回も呼ぶ』
「決定なんだ……」
ガク達が笑う。
深夜、騒がしい通話。
ゲーム終わりの雑談。
なんだか昔に戻ったみたいだった。
まだ数字も少なく。
配信がただ楽しかった頃。
そんな感覚を少しだけ思い出して。
「……まあ」
俺は小さく笑った。
「たまには悪くないですね」
『うおまた言った!!』
『録音!!』
『保存版だ!!』
「お前ら本当にさぁ……」
笑い声が広がる。
その空気が、不思議と心地良かった。
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