13話
『うわぁぁぁ!!』
『またクロ!?!?』
『なんでそこ通せんだよ!!』
Re:Burst杯。
現在四戦目。
そして。
『暫定順位はこちら!』
画面へ順位表が映る。
1位 クロ
2位 鬼灯ガク
3位 黒羽ノア
4位 天狼シュウ
コメント欄が荒れていた。
『いや待て待て待て』
『なんでクロ1位なんだよw』
『外部ゲストだよな!?』
『強すぎて草』
『ソロ勢怖ぇ……』
俺はコントローラーを握ったまま、小さく息を吐く。
「……なんでこんな本気なんですか皆」
『それこっちのセリフ!!』
ガクが叫ぶ。
『お前普通って言ったよな!?』
「普通ですよ」
『信用出来るかぁぁ!!』
通話が爆笑に包まれる。
でも実際そこまでガチでやってるわけじゃない。
ただ、昔からマリカはかなりやっていた。
配信者って待機時間多いし。
通話しながら延々やる時期とかある。
「伊織さん」
ノアが呆れた声を出す。
『さっきのショートカット何です?』
「感覚」
『またそれ!?』
『説明しろ!!』
「なんとなく行ける気したんで」
『天才系が一番嫌い!!』
シュウが悲鳴を上げていた。
コメント欄も盛り上がっている。
『クロ、思ったよりゲーマーだ』
『FPS強そう』
『ソロ勢ってゲーム上手いイメージある』
『いやこのレベルは普通じゃねぇ』
『なんで今まで大会出なかったんだ』
……面倒だからです。
とは言わないでおく。
『というかクロさん』
別のRe:Burstメンバーが聞いてくる。
『こういう大会慣れてない?』
「昔ちょっと」
『出てたんです?』
「いや、身内で」
学生時代ら深夜。
延々ゲームしていた頃。
あの頃は普通に大会系も見ていた。
少し懐かしい。
『いやでも上手すぎるって!』
『マジで優勝あるぞ!?』
『外部に取られんの嫌なんだけど!?』
ガクが騒ぐ。
その時。
『ちなみに』
シュウがニヤついた声を出した。
『クロさん、LIVENTO側に言ってるんすか?』
「マネージャーには」
『だけ!?』
『絶対他メンバー知らねぇだろ!』
「多分今見てますね」
『うわぁ……』
コメント欄が笑いで埋まる。
『アリス絶対騒いでる』
『分かる』
『ルナ辺り笑ってそう』
……かなり正解だった。
一方その頃、LIVENTO休憩スペース。
「いや強ぉぉぉ!!」
アリスが叫んでいた。
「なんであんな上手いの!?」
「思ったよりガチでしたね……」
ミオも驚いている。
モニターには、普通にトップ争いしているクロ。
そして。
『そこ赤投げる!?』
『通ると思ったんで』
『性格悪っ!!』
通話越しの笑い声。
LIVENTO側は微妙に複雑な空気だった。
「……なんかさ」
ルナがぽつりと言う。
「普通に馴染んでるよね」
「ですね」
真琴が頷く。
クロは基本ソロ。
でも、人付き合いが苦手なわけじゃない。
むしろ会話は上手い。
ただ、自分から輪へ入らないだけ。
だからこうして自然に混ざっているのは少し珍しかった。
「伊織、昔は結構ああいう感じでしたよ」
真琴が小さく言う。
「デビュー前とか」
「え?」
アリスが振り向く。
「もっと普通に通話してました」
「そうなの!?」
「ゲーム好きなので」
新人時代。
まだ今ほど数字も無く。
配信も不安定だった頃。
夜中に少人数でゲームしていた事もあった。
でも有名になるにつれ、自然と減っていった。
コラボ、交流、大会。
全部避けるようになって。
「……なんか」
ルナが少し笑う。
「今のクロ、ちょっと昔に戻ってる感じする」
真琴はその言葉に、静かに頷いた。
『最終レースいくぞぉぉ!!』
通話が盛り上がる。
現在総合1位、クロ。
コメント欄の熱量も凄かった。
『外部優勝ある!?』
『クロ頑張れ!!』
『Re:Burst負けんな!!』
『なんでこんな盛り上がってんだw』
俺はコントローラーを握り直す。
少しだけ笑ってしまった。
こういう空気嫌いじゃない。
『クロさん』
ノアが通話で言う。
『楽しそうですね』
一瞬だけ止まる。
でも。
「……まあ、ちょっと」
否定しなかった。
その瞬間。
『うわ珍しい!!』
『クロが認めた!?』
『スクショした!!』
『保存した!!』
「お前らなぁ……」
笑い声が広がる。
そして最終レースのカウントダウンが始まった。
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