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Vtuberになったのに裏方をしてます  作者: 東海林


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12/29

12話

午後九時十二分。

LIVENTO事務所。


休憩スペース。


「――はぁぁぁ!?」


星宮アリスの叫び声が響いた。

周囲のスタッフが一瞬振り向くレベルで大きい。


「ちょ、アリスさん声……!」


白雪ミオが慌てる。

だがアリスは止まらない。


「なんでクロがRe:Burst杯出てんの!?!?」


机を叩きながら、モニターを指差す。

そこには。


『うわ赤甲羅!?』


『クロそれ避けんの!?』


『今の反応やば』


『ガチ勢じゃん』


Re:Burst杯の配信画面。

そして普通に走っているクロ。


「いや待って待って!」


アリスが混乱したまま振り返る。


「クロってコラボしない人じゃん!」


「してますね……」


ルナが苦笑していた。

ソファでスマホを見ながら配信視聴中。

ちなみにLIVENTO所属Vの大半が、今この配信を見ていた。


理由?

そりゃ気になるからだ。


登録者百万人、ソロ特化。

箱企画すら避ける男。

そのクロが他箱大会へ普通に出ている。


事件である。


「しかも馴染んでる……」


ミオが呆然としていた。

配信内では。


『クロお前ライン取りおかしくね!?』


『なんでそんな速いんだよ!』


「感覚です」


『一番信用ならねぇ!』


通話が笑いに包まれている。

……普通に楽しそうだった。


「なんで言わなかったのあいつ!」


アリスが騒ぐ。


「絶対面白いやつじゃん!」


「まあ、伊織ですし」


そう言ったのは七瀬真琴だった。

騒ぐ周囲と違って、かなり落ち着いている。


「真琴知ってたの!?」


「聞いてました」


「なんで教えてくれないの!?」


「面白そうだったので」


「うわこのマネージャー楽しんでる!!」


半分くらいは否定出来ない。

真琴は静かにコーヒーを飲みながら、モニターを見る。


そこには。


『クロさんマジで強くない!?』


『いや普通に上位だぞ!?』


『ソロ勢ってなんでゲーム強いんだよ』


「普通ですよ」


『信用出来ねぇぇぇ!!』


珍しく、本当に珍しく。

クロがかなり楽しそうに笑っていた。


それを見て真琴は少しだけ目を細める。


「……珍しいですね」


「え?」


ミオが振り向く。


「伊織、あんな感じで長時間通話するの」


「確かに……」


LIVENTO内でも少ない。

クロは雑談力こそ高いが、複数人通話へ積極的に入るタイプではない。

だから今の空気感は、かなり珍しかった。


「なんか」


ルナが小さく笑う。


「他箱だとちょっと違うね、クロ」


「違います?」


「いつもより自然体というか」


普段のクロは、配信者だ。

空気を作る。

コメントを拾う。


間を考える。

でも今はもっと普通にゲームしていた。


『うわ落ちたぁぁ!!』


『ざまぁ!!』


『笑うな!』


『クロさん煽ります?』


「いや別に」


『でも今笑ってたよな!?』


「まあちょっと」


通話がまた騒がしくなる。

アリスが机へ突っ伏した。


「なんか悔しい……」


「何がです?」


「LIVENTOだとあんまり見れないクロじゃんこれ!」


それは確かにそうだった。

すると真琴のスマホが震える。


画面を見る。

送信者は――クロ。


『そっち騒いでます?』


真琴が少し吹き出した。


「……見えてるんですかね」


「絶対想像してるでしょ」


ルナが笑う。

真琴は短く返信した。


『かなり』


数秒後。


『でしょうね』


即レスだった。

休憩スペースに笑いが広がる。


そして配信内では。


『おいクロぉ!!』


『なんでそこでバナナ置くんだよ!!』


「そこ通ると思ったんで」


『性格悪っ!!』


『クロってこんな笑うんだ……』


コメント欄がそんな言葉で埋まり始めていた。

たぶん今まで知られていなかっただけだ。


ソロ配信では見えない部分。

他人とゲームしてる時のクロ。

それをLIVENTOのメンバー達も、少し新鮮な気持ちで見ていた

もし「面白かった」「続き読みたい」と思ってもらえたら、ブックマークや評価(☆☆☆☆☆→★★★★★)してもらえるとめちゃくちゃ嬉しいです!次の更新のやる気になります。

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