獣と出会う
「イチ! ニ!」
シレネとティリアと共に、中庭に出るなり、そんな気合の入った声が聞こえてきた。
金属製の剣が、木人に叩きつけられる鈍い音と、共にだ。
「サン! ヨン!!」
一心不乱に、勢いよく剣を振るっているのは、18かそこらのティリアと同じくらいに見える年齢の少女である。
手にしているのは反りのある東洋系の剣だ。髪の毛の色合い的にも、そちら側の出身だろうか。
そう思っている間に、ティリアが手を振って声を掛けた。
「レンちゃーん! 新しい先生が来ましたよ!」
その声が響いた瞬間、レンと呼ばれた少女の動きがピタリと止まった。
そして、こちらにツカツカと歩いてきて、
「初めまして」
一言だけの挨拶と共に、顔をじろりと見てきた。
強い目力と、ともにである。
「あ、ああ。初めまして」
同じように返事を返すと、レンはティリアの方を向き、
「ティリア。この方が、貴女が薦めていたという人なの?」
「はい、そうなんですよ。有難くも、家庭教師を引き受けてくれるそうで。……レンちゃんのお眼鏡には、まだ叶ってない……みたいですね」
「分かってるじゃない。……失礼ながら、貴方の強さが分からないので、冒険者ランキングの順位をお聞きしても?」
急に問いかけがこちらに来た。ここに来る前にも予想されていたが、強さを気にする子なのだろう。
そして、俺は、その問いかけ方をされると、
「あー……まあ、そこそこ高い、と思うよ」
としか答える事が出来ない。そりゃもう1位さ!と言えれば良いんだが、イコール己の名前がバレるわけで。
だからそう言ったのだが、レンの目つきが厳しくなった。
「では……模擬試合をさせてもらいたいわ」
「れ、レンちゃん。やっぱり、そうなる?」
「ええ。そこだけは譲れないから」
まあ、挨拶の時の目でも分かっていたが、あらかじめ予想していた通りと言うべきか。大分、気の強い子のようだ。
ティリアの方を見ると、もうやるしかなさそうな雰囲気だし。そして、ここまで黙って見ていたシレネも、
「すまないね。こういう子なんだ」
と、苦笑している。であればもう仕方ない。
「分かりました。じゃあ、ちょっとだけやろうか。場所はここでやれるのかな?」
「はい。あ、カナタさん、武具は何を使われます? 模擬用の武器は、奥の倉庫にあるので、取ってきますけど……」
ティリアは、そんなふうに言ってくるが。そこまで手間取らせるのは申し訳ない。だから、俺はふと周囲を見回し、木人の脇に立て掛けられていた木製の剣だ。
持ってみると、そこそこの重さがある。硬さもそれなりにありそうだ。であれば、
「俺はこの木剣でいいよ。金属だと危ないし」
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