若気の至り(最強)を持つ男
出来れば、もう一話更新したいところですが、ワンチャン明日かも……!
「ああ……今日もギルドにランキング報酬を受け取りに行けなかった……」
俺は酒場で出された最安の飲料――ミルクの水割りを飲みながら、ギルドに入っていく冒険者を見て一人落ち込んでいた。
酒場の魔法映像受信機からは、酒のお共になるような活劇作品のほか、首都で作成されている報道映像が流れている。聞こえるのは若いアナウンサーたちの声で、
「本日の冒険者ランキング1位は――†邪ナル雷光†さんです! これで、18年連続1位となります!」
「今週の集計だと、森に潜んだ特殊個体魔物や、竜の討伐まで行っているそうで。いやはや素晴らしいご活躍ぶりですな」
「しかも、ですよ。邪ナル雷光さんは、こんなにも貢献されているのに報酬を、受け取らないそうです!」
「受け取られなかった報奨金は数年間プールされますが、その期間後に孤児院などの寄付に回されます。報道部の噂では名前を出して寄付するのを好まない性格だから、だそうですが。なんともノブレスオブリージュを実行している人ですな!」
なんて話が聞こえてくる。
それに酒場の連中が、やっぱちげえなあ†邪ナル雷光†は!、という歓声を上げている声も。思わずミルクが口の端からこぼれそうになる。
……違うんだ。そんな高尚な事ではないんだ……。
俺は手元にある冒険者証を見る。そこには、確かに自分の使用している名前が刻まれている。†邪ナル雷光†と。
冒険者ランキングとは。この冒険者の国『エルドラド』への貢献度を示すもの
魔物という脅威になる存在を追い払う、ダンジョンを踏破し、壊滅させる。貢献の仕方は様々だが、こなした数、難易度に総じてランキングが上がる。
高ランクには、相応に良い待遇が受けられる。
冒険者の登録は12歳から可能で、その時登録した名前は変えることは出来ない。
それは、なりすましを防ぎ、なおかつその名を信用あるものとして使うための仕組みとのことだ。
12歳の時、若気の至りで名前を登録した俺は、消えない咎を背負うことになった。
……ただただ、恥ずかしい。
この名前で呼ばれること、もそうだが。それ以上のことがある。それは、
『ランキング29位、レジン様。報酬の準備が整いましたので、どうぞ受け取りカウンターへ!』
拡声器で大きくなっているであろう受付嬢の声が聞こえる。
ギルドの中はもちろん、町の中央通り全体に聞こえるほどの音だ。
――そう、これだ。
この大声の呼び出しは、報酬を受け取りに行く場合、誰であろうと確定で呼ばれる。
それはギルドが不正などしておらず、きちんと渡すものを渡していると、公明正大な事をしていると証明するための仕組みだ。
確かに大きな声で周りを巻き込めば、もしも何かしら間違いがあったら周囲から指摘されやすい。ミスは起きるものだから、減らす為の仕組みの一つなのだ。
また、周りからもランキングがどれだけの人がいるのか分かるのは、その後の仕事の頼みやすさにもつながるし、メリットが多い。
この仕組みの意味は理解出来る。そう、出来るのだが、
……俺は報酬受け取り場で、大声で、名前を呼ばれることに耐えきれる心の自信がない。
恥ずかしすぎて勇気が出ないの一言である。
登録当初の2年くらいは全然誇り高く思っていたくらいだが、それを過ぎると、アレ?と思い始めて、あっという間に羞恥心まみれだ。
何年も報酬受け取りを迷っているうちに、変な噂も出来上がってしまって尚更だ。
それに褒章受け取りの際――というか、ギルドに入る際、被り物は厳禁だ。絶対に顔をさらさないといけない。
今更、どういう面で受け取りにいけばいいのやら。そう思いつつ、自分の懐にある財布に目をやる。
見るからに大分薄くなっている。かなりの金欠だ。
最初の二年、1位を取り続けたことで、それこそ今の今まで食うに困らないくらいの褒章は出たのだが、それも今年までだ。
飯を買うためには働かねばならない。褒章を新たに受け取りに行けば済むが、恥ずか死しかねない。
なら別の労働――どこぞのチームや、職場に所属して働く際には、必ず冒険者証を出す必要がある。
ありません、と言ったら、今すぐ登録だけでもしてきなさい、と言われて、詰みである。
別に冒険者として戦わなくても、登録するだけで個人の証明書になるものなのだから。当然のことであるが、それがまた苦しい。
……当時の俺がいたら、10数年後どれだけ恥ずかしがっているか、一か月は語り続けられるぜ……。
ただ、救いはある。
それは20年間1位を取り続けたら、法とモラルに反しない限り、一つお願いを聞いて貰える、という特別ランク報酬があること。
……そこまで1位を取り続けることで、俺は名前を変える!
という野望と共にここまでどうにかやってきたわけだが、やはり財布の薄みには勝てない。
何と情けないことか、という悔みと共に、コップの中の薄い飲み物を飲み干していた、その時だ。
「あの……カナタさん、ですよね?」
声を掛けられた。
見ればそこには、しばらく前に見た顔があり、
「君は……勇者の娘のティリアさん……?」
そう。先日、竜を倒すことになったのだが、そこで、結果的に助ける事になった娘だ。
病院の前まで送り届けるとき、俺の登録名を内緒にしてもらうために、少し会話したのだが
「はい!!」
元気がいいの返事が来た。
「体はもういいのかい?」
「私の方は軽傷でしたので、こうしてカナタさんを探せるくらいにはピンピンしています。母も、先日退院してリハビリ中です」
「それは良かった。というか、探すって?」
「その……カナタさんにお願いがありまして」
ティリアはもじもじとしたあと、こちらの手をがっしりと掴んで、いった。
「どうか「勇者の家庭教師」業を引き受けては頂けませんか?」
「はい?」
それは、新たな職へのお誘いであった。
【お読み頂いた御礼とお願い】
本作品をここまでお読み頂き、有り難うございます。
「この先が気になる!」
「†雷光†(略)の続きが読みたい!」
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