秀頼を救ったいちゃという少女
「あ、秀頼様…また、鯉を採ってくれませんか」
「千姫…うん…また、今度ね」
秀頼は千姫の悲しそうな顔に気づきましたが、気づかないふりをしました。千姫と別れ、そのまま庭に出ました。ほんの少し前まで、完子や千姫と楽しく遊んで笑いあっていたのに…と思い出していました。
その時、秀頼はめまいに襲われ、そのまま倒れてしまいました。一人でいたため、誰にも気づかれないと思われましたが、一匹の猫が通りかかりました。猫は秀頼に気づくと一目散に走り、一人の方少女を連れてきました。
『大変!誰が!誰か来て。来てください』
少女の大きな声に皆が集まってきました。
「秀頼様!」
皆が口々に秀頼の名を呼んでます。
「え?秀頼様、あの方が」
少女はびっくりして呟きました。
気づくと秀頼は自分の部屋で寝かされてました。
「あ…伯父上、わ…私は…」
「倒れたと聞いてとんできた。少し、疲れているようだ」
「そうですか、意識を失う前に誰かがいたような…それに猫の鳴き声もしました」
「ああ、皆を呼んでくれた少女がいたようだ。この城に仕えている侍女だろうか」
「そうですか?その者に、礼をいいたいのですが」
「そうか、誰かに聞けば分かるであろう」
連れてこられた少女はとても恐縮してました。
「そう、固くならずともいい。そなたが気づいてくれなければ、私はどうなっていたか」
「いえ、そんな…私は何も…」
「いや、そなたが気づいてくれてよかった。危ういところであった」
「伯父上、私は何かの病気なのですか」
「いや、そうではない。おそらく、今年に入ってから右大臣の任命に伴う御所への参内などがあって疲れたのだろう」
「ふっ…右大臣ですか…何の力もないのに」
「秀頼…もう少し、眠れ、お前は疲れているんだ」
「そうですね」
秀頼は目を閉じました。
少女と共に万吉は秀頼の部屋を出ました。
「そなたには世話をかけたな」
「いえ…ただ、秀頼様はなんで、あんなに寂しそうなのですか。秀頼様は、とても偉い人なのでしょう」
「偉い人か…確かに秀頼は偉いよ。だから、悩みも深くなるんだ。ところで、そなたの名を聞いてなかったな」
「はい。私、いちゃと申します。台所で賄い方のお手伝いをしています。本当は、あの様な奥まった庭にまで入ることはできないのですが、猫が騒ぐものですから」
「そうであったか。そういえば、秀頼も猫の鳴き声を聞いたと申していたな。猫を飼っているのか」
「申しわけありません。餌をやっていたら、居ついてしまって」
「うん、そうか、なら、最後まで責任を持って、飼ってやれ」
「はい、ありがとうございます」
その後、猫は何度も秀頼のもとにやってきました。
「よしよし」
秀頼は猫の喉を撫でました。
「お前はいいな。自由で」
「にゃ~」




