言い訳の夜
お読みいただきありがとうございます。
恋をしたいのに仕方が分からない、どこか不器用な主人公が、深夜の思わぬ出会いをきっかけに動き出す第1話です。
ここから彼女がどんな「軌跡」を描いていくのか、見守っていただけると嬉しいです。
それでは、はじまりのページをどうぞ。
――「本当の好きってなんだろう」
結局はその場だけの関係。冷え切った居室の中で荒い息遣いが聞こえる。
あんなことを言ってみたはいいものの、やっぱり「本当の好き」を探せずにいた。やめたくてもやめられない月一くらいで行く合コン、イケメンを探し求めるマッチングアプリ。結局自分の存在価値を見出すには人から求められることしかないのだろうか。お酒が入っているからか、それとも変な考え事をしながらなのかわからないが、いつもの夜より少しばかり刺激が強かった気がした。
そのあとは、いつものようにSNSを交換して帰り道につく。あんな調子のいいことを思っていたけど、結局は変わらないままだ。
吐き出す息はいつも以上に冷たく、そして白く疲れている。
よく考えれば、子供のころからずっとそうだ。機嫌がいい時や、調子がいい時には勝手に越えられもしないような高い壁を作っては乗り越えられることもなく、自分を取り巻く環境のせいにしてしまう。自分でも原因はそんなことになる自分だと思うのになぜかそれを直せない。いや、直そうとしていない。別に自分はこの生き方でも生きていけるから、今までで困ったことはないから。そんな自分に調子よくとらえた、歪んだような成功体験たちが私を取り巻くからなのだろう。いつもなら「まあいっか」で済むはずなのに、この前あんな「奇跡」なんて思ってしまったからなのかどうしても忘れられない。いつもと違うこのヒリヒリとした痛みが私を襲う。
それから何分経ったのか、見覚えのない駅前は、夜の帳に包まれて不気味なほど静まり返っていた。
携帯電話を見ると"午前1時"の表示がある。
吐き出す息は白く濁り、薄手のコートを通り越して、冷気が容赦なく骨の髄まで染み込んでくる。タクシーを拾おうにも、財布の中身を確認すれば、昨日までの遊興費で残っているのは数千円だけ。とても家まで帰り切る額ではない。
「最悪だ…」
もちろん自業自得なのはわかっている。だけどなんでいつもこうなるんだろう、そんな思いを抱えながら温まるために駅前を歩き始めた。
街灯は、星みたいにまばらで、なぜかその時は光り輝いているようにみえた。
都会の喧騒とは程遠い、静寂と孤独が襲いかかる。
足元から襲いかかるような寒さに震えながら、舗装が少し傷んだアスファルトを歩く。
誰の話し声も聞こえない。聞こえるのは、自分の不規則な足音と、凍てつく夜風が電線を通る音だけだ。
逃げるように生きてきた。面倒なことから、自分の弱さから、そして「本当の愛」なんていう目に見えないものから目を背けて、都合のいいぬくもりだけを拾い集めてきた。
その結果が、終電をなくして見知らぬ街を一人で歩いているこの深夜1時なのだと思うと、情けなくて涙が出そうになる。
涙を垂らさないように空を見上げる。空にはいつもと違う、見て欲しいと言わんばかりに主張する星たちがいる。それは、見慣れた東京の夜空よりも綺麗で、儚いようなそんな感じがした。
キラキラした都会の光に慣れ切った私には、この真っ暗な空がかえって眩しすぎる。
瞬く星の光を直視していると、自分がどれだけちっぽけな世界で縮こまっていたのかを思い知らされるようだった。
他人の目を気にして、誰かに選ばれることでしか自分の価値を確かめられなくて。そのくせ、深く踏み込まれるのが怖くて自分から逃げ出してばかりいた。
このままじゃいけない、なんて焦るくせに、どこかで「明日になればいつもの日常がまた元通りにしてくれる」と甘えていた。
だけど、足元の冷たさが、容赦なく私に「今、ここに生きている現実」を突きつけてくる。
ポケットの中で、ギュッと硬く拳を握りしめた。
爪が手のひらに食い込んで、鈍い痛みが走る。それでも、その痛みが妙に心地よかった。
独りで悩むのはもう辛い、とりあえず学生時代の思い出を思い出しながら進もう。
辛かった、でも楽しかった学生時代を回想しながら歩く、その時なにか見覚えのある顔とすれ違った。
振り返ると向こうも振り返って足が止まる
「え?まじで?…」
そこには、想定外の人物が立っていた。
最後までお読みいただき、ありがとうございました
深夜の冷たい空気の中、自嘲と決意が入り交じった主人公の前に突如現れた「見覚えのある顔」。
一いったい誰と出会ってしまったのか、そしてここからどんな物語が動き出すのか楽しみですね。
ep.3は近日公開するので、ぜひ楽しみに待っていてください




