奇跡に繋げる軌跡
お読みいただきありがとうございます。
恋をしたいのに仕方が分からない、どこか不器用な主人公のプロローグです。
ここから彼女がどんな「軌跡」を描いていくのか、見守っていただけると嬉しいです。
それでは、はじまりのページをどうぞ。
——「ねえ、こうやって出会えるのって奇跡じゃない?」
いつの頃だったか、そう言ってくれた男の子の顔を、私はもう思い出せなくなっている。
お互いに違う高校に進み、自然と接点が無くなり、成人式で顔を合わせるのさえ忘れていたくらいだ。
そのまま深く考えずに進学し、また同じように深く考えずに就職をした。思い描いていたようなキラキラしたOL生活とはほど遠いけれど、特段不満があるわけでもない。
恋愛なんてもう何年していないのだろう。
毎月のように合コンに行ったり、マッチングアプリを試してみたりしたけれど、やっぱり「この人だ」と思える相手には出会えない。出会うのはどれも、その場の寂しさを埋めるための、ただの欲求を満たし合う関係ばかりだった。
本当の恋愛ってなんだろう。そんな疑問に蓋をするように、ただ夜を重ねていく。
ふとした拍子に、涙が頬を伝う。「本当に好きな人と付き合いたい」
それは、声にもならないような小さなつぶやきだった。
でも、今の私に本当に好きな人なんているのだろうか。そもそも、こんな私が誰かを心から愛せる日が来るのだろうか。
ある日、友人に誘われて入った喫茶店で、私は彼女の左指に小さな光を見つけた。
「ねえ、もしかしてそれって……」
「あー、気づいた? 実はね、結婚することになったんだ」
友人は、中学の同級生と結婚するという。あの頃のことはもう曖昧だけど、たしかにいい奴だった気はする。
その事実を突きつけられた瞬間、取り残されたような残酷な現実が胸を刺した。
「彼氏くらい早く作りなよ」と親や友人は簡単に言うけれど、どうしてもうまくいかない。そもそも「好き」ってどういう感情なのだろう。出会いなんて本当に転がっているのだろうか。そんな焦りが、ぐるぐると頭の中を回り続ける。
考えながらボケっと街を歩いていると、ふと、ぼんやりとした未来が形を帯びてくる。
相手の顔は分からない。それでも、誰かと並んで歩く未来。
頬を赤らめ、火照った身体を突き刺すような冬の北風。それでも、その寒さに負けない「愛」という温もり。
そんな空想をしているうちに、悲しさなのか、それとも情けない自分への怒りなのか、また自然と涙がこぼれてきた。
「人は人、自分は自分」
そう言い聞かせて生きてきたけれど、その生き方は本当に正しかったのだろうか。自分で納得できているかと問われれば、胸を張って頷くことなど到底できない。
このちっぽけな世界で、それでも「頑張ってみよう」と思える何かを探すために。そして、どこかで彷徨っているかもしれない「君」にいつか届けるために。
これからの日々を歩んでいこうと決意し、私は涙で曇った目を乱暴に拭った。それは、世界を歪めて見せていた悲劇のフィルターを剥ぎ取る行為だった。
フィルターの取れた世界は、意地悪なほど華やかに、そして現実という名の厳しさをもって私を映し出す。
「奇跡」をただ待つのではなく、自分から掴みに行く。
「奇跡」に繋ぐ「軌跡」、それが私の生き様だ。
——まだ見ぬ「奇跡」へと出会う私の、そしてまだ見ぬあなたへのプロローグ。
プロローグ最後までお読みいただき、ありがとうございました!
「本当の恋ってなんだっけ」「奇跡ってなんだろう」と、ふと立ち止まってしまう夜の空気感を描いてみました。
主人公の等身大の葛藤や、ここからの物語に少しでもワクワクしていただけたら幸いです。




