第一章: 霧の中の少女。
最初の朝、それは玄関先にあった。
小さな編み籠。中には、笹の葉に包まれたおにぎりが二つと、沢庵の切れ端が一つ。置き手紙はない。物音もない。ただ霧だけが木製の縁側のまわりをぐるぐると這っていた――居ようかどうか迷っている猫のように。
小道を見下ろす。誰もいない。
おにぎりを食べた。まだ温かかった。
二日目の朝、籠には小さな四角い蒸しケーキとひと握りの野イチゴが入っていた。今度はその下に、紙の切れ端が一枚。文字はとても小さく、とても丁寧で、一文字一文字が、鉛筆をどれだけ強く押せばいいかまだ習っている者の注意深さで紙に刻まれていた。
*「ちゃんと食べてないなって気づいたから、持ってきた。邪魔したくなかったから、外に置いておくね」*
名前はない。ただその言葉だけ。一度折りたたまれて。
必要以上に長く、その紙を持っていた。ケーキは甘かった。イチゴは小さく、少し潰れていた――子どもの手のひらで大事に運ばれたように。
三日目の朝、夜明け前に起きた。窓辺に座り、カーテンの隙間から玄関先を見ていた。霧は濃い。村は静まり返っている。
そして彼女を見た。
小さな人影。寝間着の浴衣が木の床を引きずっている。両手で籠を抱え、まるで供え物のように胸に押し当てている。しゃがみ込む。籠を置く。取っ手が戸のほうを向くように調整する。それから手を合わせて、素早く声なき祈りを捧げ、立ち去ろうとする。
四日目の朝、彼女が霧に消える前に、私は戸を開けた。
彼女は凍りついた。目を見開く。まるで広野で捕まった兎のようだった。
「ありがとう」と私は言った。
「おにぎりも、ケーキも、イチゴも、全部食べたよ」
彼女の口が開く。閉じる。それから微笑んだ。小さく、恥ずかしそうに、ほとんど気まずそうに。
「見えてたんだ」
「見えてたよ」
彼女は自分の足元を見た。「起こしたくなかったの」
「起こされなかったよ。でも、名前を教えてほしい」
彼女は教えてくれた。ヒナタ。
それから、もっと静かに言った。「お母さんが言ってた。新しい人は寂しくなるって。それに、ちゃんと食べてないって。私にもわかる」 彼女は袖の下に見える私の手首を指さした。「痩せすぎ」
私は笑った。何か月ぶりに笑った。喉の奥で変な音がした。
「あなたのお母さんの言う通りだ」
「うん」と彼女はまた言った。
それから彼女は空の籠を拾い上げた。私はもう中身は家に取り込んでいた。
「また明日持ってくる」
私が「いいよ」と言う前に、彼女は歩き去った。
次の朝、また籠があった。
そしてもう一枚のメモ: *「今日は作りすぎちゃった。ママが、おすそ分けしていいって」*
彼女の字は、決して大きくならなかった。
日が過ぎた。そして週が過ぎた。
籠は来続けた。おにぎりの日もあれば、密閉瓶に入ったスープの日もあった。一度、小さな袋の干し柿――噛みしめるほどに甘い。どのメモも同じことを、違う言葉で言っていた: *「あなたのことに気づいています。邪魔したくありません。食べてください。」*
私も何かをお返しに置くようになった。飴玉一枚。庭の絵。ノートのページを折った小さな折り鶴。
次の日、その鶴が彼女の髪の毛に挟まっているのを見つけた。彼女はそれを飾りにして、耳の後ろに差していた。
彼女が小道から手を振った。
私も振り返した。
後で知ったのだが、ヒナタは私の家主の娘だった。ずっと隣に住んでいたのだ。
なぜ彼女が私に食べ物を届け続けるのか、私には理解できなかった。なぜか、尋ねることは受け取ることより難しく感じられた。
一度、彼女の草履に灰がついているのに気づいた。多くはない。木の底にうっすらと灰色の粉がついていただけだ。どこにいたのか尋ねた。彼女は首をかしげ、不思議そうにした。「どこにも」と彼女は言った。「ずっと家にいたよ。それ、払ったんだけど。子どもって、変なところで遊ぶからね」
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ある午後、雨が降った。
村の市場から歩いて戻っていると、空が開けた。突然の激しい雨で、避難場所を探す間に服がびしょ濡れになるような雨だった。
ヒナタは閉まった店の軒先に立って、震えていた。彼女の籠は空で、胸に抱えられている。
「おいで」と私が言うと、彼女はためらわずに走ってきた。
私は傘を二人の上に降ろし、それから上着を脱いで彼女の小さな肩にかけた。彼女はそれにすっぽりと包まれた。
「これで冷えを防がないと」
「寒くなんかない」と彼女は機械的に言ったが、歯がかすかにカチカチと鳴っていた。
私たちは家へ続く石段を下り始めた。雨は規則的な波になって傘を打った。ヒナタは私の体に軽く寄りかかり、信頼して怖がらず、片手を私の袖の布地に巻きつけていた。
「雨、好き」と彼女は言った。
「なぜ?」
「だって、世界が静かになるから」 彼女は降る水に顔を向けた。「そうすると、いつもは隠れてるものが聞こえるの」
私がそれがどんなもののことか尋ねることはなかった。
しばらく、黙って歩いた。周囲の村は霧と影にぼやけ、屋根は雨で柔らかくなり、灯りの明かりが障子の奥で淡く輝いていた。
それからヒナタがまた話しかけた。
「私、大きくなったら、お医者さんになるの」
「お医者さん?」
彼女は真剣にうなずいた。「病気の人を助けられるように」
「立派だね」
「あなたみたいに」
私は彼女を見下ろした。「私は病気じゃないよ」
ヒナタは半歩だけ立ち止まった。それだけで十分だった。しっかりと、揺るがない目で私を見上げて。
「寝てないもん」と彼女は言った。「それに、食べるの忘れてる。それも病気の一種だよ」
雨がそのあとの静けさを満たした。
私にはその答えがなかった。
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私は朝霧のリズムを覚えた。陽が東の尾根に当たる正確な時刻を。はしごの上の女たちが話すときに決して下を見ない仕草を。石段を掃いた。薪を積んだ。玄関先に残されたものを食べた。質問はしなかった。村は答えを差し出さなかった。
私たちは静かな並行する生を生きていた。
――三十夜目までは。
二十七で数えるのをやめた。
真夜中を過ぎたころ、風の向きが変わった。
小道を歩く足音で目が覚めた。小さい足音。不揃い。裸足の子供たちが湿った砂利を走るような。
じっとしている。耳を澄ます。
そして声が聞こえた。
かすか。重なり合う。数え切れないほど多く、遠くにあるには近すぎる。泣いているのではない。笑っているのでもない。ただ……話している。ほとんど見覚えのあるようなリズムで、しかし言葉は両手で掬った水のようにガラスをすり抜けていく。
壁に耳を押し当てる。息を止める。一音節でも、名前でも、捕まえようとする。
何もとらえられない。
ただリズムだけ。上がり下がり。風が尾根のほうへ戻ったとき、それが突然ぷつりと切れる様子。
窓から灰色の夜明けが差し込むまで、私はもう眠れなかった。
バス停の老人のところへ行った。彼はいつも朝そこにいて、農具の刃を研いだり、ロープを繕ったりしている。決して顔を上げない。決して急がない。
彼のそばに立つ。金属は油と冷たい鉄の匂いがした。
「子供たちの声を聞きました」と私は言った。「昨夜、石段のほうで。何を言っていたんですか?」
砥石が止まった。彼は振り向かない。
「あなたは子供の声を聞いたのではない」
「私は自分の聞こえたものがわかります」
「あなたは枯れ草に吹く風を聞いたのです。落ち着く葉を聞いたのです。自分の眠りを聞いたのです」
彼の声は平坦だった。否定ではない。事実を述べている。天気を言うように。
「声に聞こえました」
彼はようやく私を見た。その目は川石の色だった。疲れている。確信に満ちている。
「日が暮れたら外に出ないでください、ヒカルさん」
提案ではない。脅しでもない。
境界線だ。
「暗くなってからのあの道は安全ではありません」
「何かがいるのですか?」
彼は刃を鞘に収め、立ち上がった。膝の埃をはらった。
「家の中にいること。戸に鍵をかけること。夜をやり過ごすこと」
彼はそれ以上何も言わずに私を通り過ぎて歩いていった。圃場へ。決して待ってくれない仕事へ。
私はバス停にひとり立っていた。朝の空気が急に薄くなった気がした。
家へ続く石段を見下ろす。
昨日とまったく同じに見えた。
しかし私は知っていた。肋骨の奥に沈む静かな確信として――二度と、日が暮れた後にこの道を歩くことはないだろうと。
村が隠す秘密とは...
どうぞお楽しみに。
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