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89,出来れば確保したいよねぇ

 コリンの弓と、ギーネの御者。そのどちらも、そこそこいいスタートを切ったのではないだろうか。

 そんなことを思いつつ、チグサは馬車の屋根の上で次に行くべき場所を考えていた。

 メモしてある珍しいものの出現予想を引っ張り出してきて、それらを見比べてどこへ行って何をしようか、と考える。


 この時間は中々に楽しく、鼻歌でも歌いそうなくらいには気分がいい。

 そうしてあれこれ考えていると、アンドレイが屋根の上にやってきた。

 何か言われる前にアンドレイに出現予想のメモを渡して、持ってきていた地図を広げる。


「次なんだけれどね、第四大陸に行こうかな」

「どれが目的で?」

「チュササ。出来れば確保したいよねぇ」

「あぁ、なるほど……となると、その前にネパグオレンジの確保か」

「うん。ネパグオレンジの方はダャの村で売ってないか確認しよう」


 屋根の上でだらけていたことについて小言を言われるのを無事に回避して、ついでにそのまま詳しい予定を決める。

 事前にやっておくべき準備のことも考えて予定を組み、ある程度決まったところで下でなにやら工作に励んでいるレウコスとセダムに声をかける。


「おーい、次の予定が決まったよ!」

「お、どこ行くんだ?」

「第四大陸、チュササの確保に行くよ」

「チュササか……たくさん確保出来たら羽根使ってもいい?」

「いいよー」


 今回の目的であるチュササは鳥型の魔獣だ。

 魔力の籠った羽根は装飾として人気で、皮は細かい鱗状になっており装備品の強化に使われる。ついでに肉はそこそこ美味い。

 それから鋭い爪は微弱ながらに毒があり、嘴と合わせて薬の材料になる。


 ということで全身もれなく使える非常に優秀な獲物なのだ。

 目撃されることが少なく狙って狩るのは難しいとされている魔獣だが、第四大陸の一部で取れるネパグオレンジという果実が大好物で、それが実る時期になると第四大陸に集まって来る。


 今回はそれを狙っていく訳である。ついでにネパグオレンジを買い取って誘導する予定だ。

 普段の狩りにくさから考えれば乱獲に見えるかもしれないが、これで種の存続に関わる程数を減らせるかと言われると全くそんなことはない。


 なにせチュササの主な繁殖地は第一大陸の端にある、魔力が渦巻き人の近寄らない土地なので。

 全ての個体がネパグオレンジを狙って第四大陸まで来るわけでもなく、第一大陸にはまだまだ多くのチュササが残っているのだ。なので、特に遠慮はせずに狩る予定である。ギルドから許可出てるし。


「爪と嘴はアオイちゃんのところに持って行ってからギルドに卸そうか」

「確保出来たら、な」


 取らぬ狸のなんとやら、だ。全く確保できない可能性も0ではないんだぞ、と釘を刺したアンドレイだが、正直アンドレイも全く取れないとは思っていない。

 アジサシが始まった頃ならともかく、今となってはチュササの行動パターンもある程度把握出来ている。なにも取れないようなミスはしないだろう。


 そんな話をしてたら、カタリナとギーネが戻ってきた。

 二人はルムとニムを連れて御者練習がてらの散歩に行っていたのだが、現在練習用に改造されているチャリオットには何やら行きには乗っていなかったはずの草花が乗せられている。


「おかえり。それなんだい?」

「薬草とか。みて、シナハ」

「おや、本当だ。群生地でもあったのかい?」

「群生地というほどではなかったですけど、色々と咲いてましたよ。何か通った後なのかも」


 採取するものはギーネが選んだらしく、かごの中には珍しい花から実用性の高いものまで、様々な草花が入っていた。

 処理が必要な物は早めにやってしまおう、とギーネに声をかけて、チグサは立ち上がる。


 屋根から降りてギーネと共に作業を始めつつ、次の目的地についても知らせておいた。

 道中どこによってどう動くかはギーネも大体分かっているので、そこで売れそうなものを取り出しやすい位置に置いておいてもらうのだ。


「チュササを確保したら、その次はリコリスかな。そろそろポーションの在庫も減ってきているだろう?」

「はい。あとかゆみ止めの軟膏も」

「その辺はまたしっかり確認しておかないとね」


 話しながら作業を進めて、食用になる草花はサシャのところに持っていく。そうして下処理を全て終えたところで、少し離れたところからコリンの叫び声が聞こえてきた。

 おそらく事件性はないが、他にすることもないので一応確認しに向かう。


「どうしたんだい」

「最後の一本が外れただけだ、気にすんな」

「これが当たれば初の全弾命中だったのに……!」

「そうやって妙なところに力入れるから外れんだよ」


 今日も今日とて弓の練習に励んでいたコリンは、しっかり実力を上げてきている。しかしまだまだ始めたてなので、全ての矢を的に当てきるのは難しいらしい。

 それが出来そうだった、と。案の定事件性は全くなかったので、笑いながらチグサはエリオットの隣に腰を下ろした。せっかくなので、少し見ていくことにしたのだ。


「まぁ、コリンは素直だからねぇ。すぐに出来るようになるだろうさ」

「そうだな。弓の確保も考えておくか……」


 的から矢を引き抜いて回収しているコリンを眺めつつそんな話をして、チグサはコリンに頑張れ~と緩く声をかけた。

 見られていると張り切りすぎて失敗するのがコリンなので、まぁ半分くらい当たればいい方だろうか。

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